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人口推計から未来を予測する(2013年12月)
副主任研究員 吉村 謙一
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政府の政策や企業の経営戦略を中長期的な視点で立案する場合、不可欠なのが未来の予測だ。未来予測に関する書物や記事、レポート等は、いつの時代も人々の大きな関心を集めている。では未来予測の最も基本となるデータは何だろうか。それは「人口推計」である。戦争や疾病などよほど大きな不安定要因が生起しない限り、人口推計にはあまりブレが発生しないため、未来を見通す最も基本的で確度の高いデータだとされている。

下図は日本の人口推移等をまとめたものだが、世界でも稀に見る速さで進行する少子高齢化に伴い、15~64歳の生産年齢人口の割合は、2012年の62.9%から2060年には50.9%と12.0ポイントも低下する。こうした中、国民一人当たりGDP(国内総生産)の水準を今後もできるだけ維持するには、女性や高齢者等の活用を進め働き手の割合を増やし、また同時に生産性向上により付加価値を高めていくしかない。アベノミクスで打ち出された女性活躍促進策は、こうした予測から導かれる必然的な政策である。

また国連によると、世界の人口は2050年までに96億人に達すると予想されており、インドが2028年ごろに中国を抜いて約15億人の世界最大の人口を抱えるようになるという。このことから予想できるのは、インドが現在の中国のように台頭し工業力を高めるとすれば、限りある資源の世界的な需給逼迫や価格上昇が起こり、工業原料から食料、水に至るまで、現在と同じようには容易に入手できなくなる事態も考えられるということだ。しかし同時に、インドを含むアジアの市場がさらに拡大するということも意味しており、企業の経営戦略立案においては、上記のプラスマイナス両面の意味で見逃すことのできない重要な変化である。

このように、人口推計を通じて未来予測をすることは、現在を見直し将来に向けて戦略的な布石を打つための重要な手段であるといえる。 (吉村謙一)

図1