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満足度アンケート結果「良い」は本当?(2019年11月)
上席主任研究員 刀祢 善光
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満足度に関するアンケート調査を行い、回答集計で「(とても)良い」結果となった経験をお持ちの方は多いと思う。提供した商品が「概ね良いんだ」と安心する瞬間でもある。

以前、とあるアンケート調査を見た時に、「良い」結果について本当は異なるのではないかと違和感を持ったことがあった。

アンケート調査は通常の場合、顧客満足を図るため「(とても)良い」「普通」「(とても)悪い」を選択肢とし、回答者の声を数値的に拾いあげることができる。しかし、この時は自身が回答者になった場合と結果を見て評価する場合では同じ選択肢を見ても意味合いが異なるのかもしれないという感想をもった。

■NPS(ネット・プロモータ―・スコア)とは

この違和感を解消してくれた方法が「NPS(ネット・プロモーター・スコア)※」である。
 ※「ネット・プロモーター経営」フレッド=ライクヘルド、ロブ=マーキー共著 プレジデント社 2013年

提唱者のライクヘルド氏によるとNPSの質問は「当社を友人や同僚に勧める可能性は、0~10段階でどのくらいありますか」の1つだけである。この質問に対して、どの段階を回答するかで、回答者が次のいずれであるかを区分する。


【「推奨者」10~9】

再購入率が非常に高く、友人や同僚たちにも勧めてくれるので、クチコミを通じて好感が広がっていく。企業にも協力的で建設的なフィードバックや提言を与えてくれる。

【「中立者」8~7】

再購入率は推奨者よりも低い。自分が支払った分の見返りは得てそれなりに満足しているが、あくまで受け身で他人には勧めない。

【「批判者」6以下】

再購入率はとても低い。不満を持ち批判や否定的態度により他の人が購入するのを妨げることもある。否定的なクチコミの種となり、SNSで拡散することもありえる怖い存在。
(真ん中の6点で「批判者」は厳しいとの見方もあるが、6点以下になると批判クチコミが増えていくとされている。厳しいと思われる評価がこの方法の要と考える。)

■NPSの評価 (図表1参照)

その上で、次の式でNPSのスコアを計算する。

NPS=推奨者の割合-批判者の割合

推奨者の割合が批判者の割合を上回る「NPSがプラス」という評価も重要だが、同業他社との比較、以前の自社評価との比較や自社商品間などの比較において特に効果が高い。同業他社より優位な数値であれば、多くの有名企業で市場シェアも高まり収益をもたらしたという実績がある。

この方法を用い顧客満足度を知り、実際に改善効果を上げるのは簡単ではないが、分かりやすく有効性はかなり高いと考えている(図表2参照)。

冒頭の「良い」結果は、本当はどのような姿だっただろうか。


図