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コロナ禍を経てさらに重要性が高まる企業におけるデジタルデータ活用 (2020年9月)
事務局長代理 上席研究員 吉村 謙一
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2020年8月に総務省が公表した『令和2年版 情報通信白書』は、その冒頭で、新型コロナウイルス感染症の流行を契機としてこれまでオンライン化があまり進まなかった領域にもデジタル化の波が押し寄せつつあり、我々の社会・経済はコロナ発生以前とはフェーズを異にする新たな社会・経済へと不可逆的な進化を遂げると指摘している。

そしてデジタル化・リモート化を前提とした活動が定着することで、個人、産業、社会といったあらゆるレベルにおいて変革が生まれ、新たな価値の創造へとつながっていくとして、今後は5G(第5世代移動通信システム)をはじめとするデジタル基盤や、IoT・ビッグデータ・AIといったデジタル技術の活用が今まで以上に重要となっていくとも指摘している。

ではそうしたデジタルデータを企業がどのように活用しているかを同白書で見ると、5年前の2015年と比較して、POSやEコマースによる販売記録を含む「自動取得データ」の活用が大きく伸びており、データ分析による企業経営の高度化がある程度進んできたといえる。中でもGPSデータやセンサーデータなどのIoTデバイス関連データは5年前に比べ約4~7倍の高い伸びを示している(図1)。一方それを企業規模別に見ると、大企業と比べて中小企業ではいずれのデータの活用も十分に進んでおらず、特にIoTデバイス関連データの活用の低調さが顕著である(図2)。


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データの活用が企業活動に良い影響をもたらすことは各種の先行研究で明らかになっており、データ活用やデータに基づく経営に向けた取組は中小企業においてもぜひ実践されることが望まれる。

デジタルデータ活用の課題として、データフォーマットのばらつきなどを原因としてデータ共有の仕組みが十分構築されていないという点はかねて指摘されている。しかし2020年7月に内容変更された政府の『世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画』において、「データ資源を横断的、継続的に活用できる環境を整備すること」が喫緊に取り組むべき事項として明記されており、コロナ禍でのデータ活用不足の反省も受けて、今後中小企業でのデータ活用を後押しする環境整備が国を挙げて進むと思われる。

こうしたチャンスを活かし、まずは何か一つでもデジタルデータの活用に取り組んでみてはいかがだろうか。