一般財団法人 南都経済研究所地域経済に確かな情報を提供します
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主任研究員 奥 桂子
情熱の国スペインへ

昨年の9月、情熱の国スペインへ行ってきました。
関空からのチャーター便は途中のトランジットも無く、意気揚々とマドリードに到着。

マドリード市内観光は、太陽を受けて輝く絢爛豪華な「王宮」からスタート。「スペイン広場」には、ドン・キホーテとサンチョ・パンサの像を見下ろすように作者セルバンテスの像。続いて訪れたのは、スペイン屈指の美術館といわれる「プラド美術館」。現地ガイドの詳細な説明を受けながら鑑賞が始まる。ベラスケスの「ラス・メニーナス」の奥行ある表現を体感するために、十数メートル離れた場所からオペラグラスで絵画を見れば、まさに王女を中心に回りを取り巻く女官の位置関係がよく分かった。ゴヤもエル・グレコも教科書で見た絵画の本物をしっかり堪能。

マドリードから南に約70㎞スペインの中央に位置するトレドは「16世紀で歩みを止めた」と表現されるほど、かつての栄華を今に留めている。1561年に首都がマドリードに移るまで、スペインの首都として政治や経済の重要な拠点で、三方を川に囲まれた岩山の上にある特異な立地が自然の地形に守られた城塞都市として、今も古い街並みが残る。

南スペインの都市グラナダでは、世界遺産に登録されている「アルハンブラ宮殿」へ。イベリア半島におけるイスラム朝最後の砦として築かれた城は、イスラム建築の最高峰と呼ばれている。平日も混み合う宮殿では、このツアー貸し切りで夕方からの特別見学ができた。暮れ行く夕日に映える宮殿を眺め、アルハンブラを無血開城し、涙して落ち行く王の興亡の歴史に想いをはせた。

この旅で最も思い入れが強かったバルセロナ観光は、「サグラダファミリア聖堂」から。教会に一歩踏み入れた途端飛び込んできた景色は、思わず息を呑むものだった。ガウディは教会の厳格な雰囲気を和らげるために、聖堂部分を森のようにイメージして作ったといわれている。丸い高い天井を支える柱を、枝分かれした木々に見立てたので、まるで白い杉林さながらの情景を醸し出している。花形にくり抜いた窓にはめ込まれた色彩豊かなステンドグラスは、自然光を受けて万華鏡のように輝いていた。

ミハスやロンダも訪れた10日間のスペイン旅行は、観光だけでなくグルメもしっかり堪能。バルセロナでは、添乗員さんお薦めの「バル」でタパスやワインを楽しみ、パエリアもカフェでのスイーツも。でも、もう一度必ず行きたい国です。


サグラダファミリア聖堂とその内部
投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2018年6月

主任研究員 奥 桂子
ファーストレディの苦悩

突然の銃声、隣にいた彼女の夫が頭から血を流し倒れ掛かってきた。その時彼女は、脳が飛び出るのを抑えるため必死に頭を押さえていた。

衝撃的な情景から始まる映画「ジャッキー ファーストレディ最後の使命」を見てきました。


1963年11月22日 ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された。夫の名が後世まで語り継がれるかどうかは、葬儀までの4日間のファーストレディにかかっている。
―そのことを誰よりも理解していた
<世紀のファーストレディ>の物語。

このようなPR文の通り、ジャクリーン大統領夫人は悲しみに浸る暇もなく、様々な事柄への決断を迫られる。その中で苦悩し、揺れ動く無限の複雑さを持った女性を、感動的に描いた作品に魅了されました。

夫を人々の記憶に留めるためには、どうすれば良いのか。彼女は、暗殺の衝撃を国民の脳裏に焼き付けるために、血染めのスーツを着続けた。そして葬儀や墓地に関しては、閣僚やケネディ家の意向と相容れない、独自の提案をした。その結果、ジョン・F・ケネディがリンカーンやルーズベルトに続く人気大統領の地位を獲得できたと、この映画は主張していました。

翻って、最近のワイドショー"森友学園"がらみの報道では、安倍総理夫人の言動にスポットが当てられました。「夫が総理大臣になってから、いろいろな所から声がかかり大変忙しくなった」と。

立場が変われば、さまざまな人たちが近づいてくる。また、国を代表して各国を訪問する必要も出てくる。その人の一挙手一投足が、良くも悪くも日本の印象を作り上げる。「選良の夫と共にある夫人」の置かれた立ち位置は、自らが思う以上に、周りへの影響が大きいのではないでしょうか。

「お妃教育」は時間をかけて行われているのに、「ファーストレディ教育」は無いのでしょうか。

二人のファーストレディを比べるのは、少し乱暴な比較かもしれませんが・・・。

心なしかエンジェルもさみしそうに見える、春の日です。

投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2017年5月
主任研究員 奥 桂子
話題の絵画展へ行ってきました

風薫るとは言い難い日差しの強い5月中旬の東京で、日中屋外にて「3時間待ち」を体験して来ました。

東京都美術館で開催された「生誕300年記念 若冲展」は、 開催期間4月22日~5月24日までの31日間で、入場者数が約44万6千人を記録。1日当たりの入場者数は最も多い日で2万人を超え、同館の展覧会としては過去最高でした。
「ひと月限りの、この世の楽園」と副題が示すように、伊藤若冲が京都・相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵(さいえ)」30幅が東京で一堂に会するのは初めてです。

開催当初からテレビでもその混雑ぶりは伝えられていたので、覚悟をして出かけたもののその人の多さに圧倒されました。しかし、列に並ぶ人々は何一つ「グチ」を口にするでもなく黙々と列が少しずつ前に進むことをよしとして、幾人かは文庫本片手に平然と過ごしていました。

ようやく館内に入れたと思いきや、そこからがまた大いなる苦難の始まりです。大きな楕円形のホールの正面に「釈迦三尊像」が展示され、その左右に「動植綵絵」が広がっています。その前はどこもかしこも黒山の人だかりで一瞬足がすくみましたが、そんなことでめげていては、若冲が完成までに10年を費やした、日本美術史における花鳥画の最高傑作を目にすることができません。オペラグラスを握り締めいざ出陣です。

ご存知の方も多いと思いますが、「動植綵絵」は鶏、昆虫、魚介類、草花が目の覚めるような極彩色で描かれています。「群鶏図」の細かな羽の描写はとても人間技とは思えません。「群魚図」には同じ方向を向いて並ぶ魚たちの中に、親蛸の足に必死にしがみつく子蛸がユーモラスに描かれています。

その絵は、徹底的に描きこまれた超絶技巧とその精密さがありありとわかり、圧倒されてしまいます。前にいる人の頭や肩の隙間から、人波に揉まれながら必死にオペラグラスの焦点をあわせての鑑賞は"精も根も尽き果ててしまう"ような時間ではありましたが、何か得も言われぬ楽しい時間でもありました。思えば東日本大震災復興支援特別展「若冲と江戸絵画」を福島県立美術館で見て以来、若冲の展覧会をいくつも巡り、いつかは見てみたいと憧れていた「動植綵絵」との感極まる対面でした。

投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2016年9月
主任研究員 奥 桂子
空中の一歩を夢見て

今年の7月初旬、日本からスイスへ旅立ちました。うっとうしい梅雨空とは一転、青空のチューリッヒ空港に到着。すがすがしい空気に包まれた旅行の始まりと思いきや、チューリッヒは36度の蒸し暑さ。現地の添乗員さんは「過去に経験したことのない暑さで、一週間前までは25度くらいの爽やかな気候だった」とのこと。一抹の不安と共に中世の趣が残るルツェルン市内観光へ。綺麗な花で飾られた「カペル橋」を渡り川沿いの街を散策しても、周りの景色を眺めるよりも日陰を探すことに夢中だった。20分ほど歩いて「嘆きのライオン」に到着した私たち一行は「渇きのエトランゼ」と化し、ワインとほぼ同額の水を買い求め、水分補給にいそしむことに。

しかし、山岳地帯に入ればそこは標高1,000mを超える高地、一泊目のグリンデルワルトでは「アイガーを目前」にしたホテルに宿泊、もちろんクーラーはないが、窓を開け放せば心地良い自然の風。

翌日からは、スイスの名峰をめぐる旅へと出発。まずはアイガー・メンヒ・ユングフラウを一望できるスフィンクス展望台へ到着。晴天ではあるものの展望台のガラスの外は、強風吹きすさぶ気温5度の別世界、外へ出て飛ばされないよう柵に摑まって記念撮影。次に訪れたのは、魔の山マッターホルンを望むゴルナーグラート展望台。ここでも晴天に恵まれ、ローテンボーテンからのハイキングでは、リッフェル湖に写る逆さマッターホルンや高山植物もきれいにカメラに収めた。

最後は、今回の旅行で最も楽しみにしていたヨーロッパアルプス最高峰のモンブランに出会える場所。エギーユ・デュ・ミディ展望台の頂上テラスにある「スカイウォーク 空中への一歩」を体験するのがこの旅一番の目的。まずは腹ごしらえとして、麓の街シャモニーでラクレットに舌鼓を打つことに。テーブルにはじゃがいもや生ハム・野菜が盛り付けられた大きなお皿。そこへ直径30cmはある大きな半月型のチーズが温められて、熱々にとろけた状態で運ばれて来て、じゃがいもと一緒に食べれば、もう満足の一言。さあ次は目的の場所へ。

スカイウォークは、足元を含めた四方すべてがガラス張りで、まさに空中に浮かんでいるかのような気分になれるとのこと。展望台と麓の高低差約2,800mを二つのロープウェイを乗り継いで20分で登る。高山病が心配なため行動はゆっくりと、しかし気持ちは逸るばかり。やっと到着、いざ頂上テラスへ!!「エーッ」? 工事が遅れてまだ建設中。欧州ではよくあることのようだが、夢破れたり。

かくして初夏の日差しを跳ね返して、白く輝くモンブランを目の前にした「空中への一歩」は無残にも閉ざされてしまいました。

(>_<) 残念。


モンブラン

辿り着けなかったスカイウォーク(マル印)
投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2015年11月

主任研究員 奥 桂子
心に残る旅

昨年の初秋、憧れていた「イタリア旅行」へ行ってきました。

ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ナポリ、ローマ。今でも美しい景色や楽しい思い出が浮かんできます。

13時間ほどのフライトを経て到着したフランクフルト空港は、まぶしい日差しがあふれ、日本時間では真夜中であるにもかかわらず、興奮も手伝って眠気は全く感じないままミラノへの乗継便へ搭乗。

フランクフルト空港で、初めてツアーメンバーの方々と顔合わせをし、総勢14名というコンパクトな人数と、ほとんどが50代~60代という年齢で、話が合いそうだなという思いを持ちました。

何をするにもツアー全員の意見は同じ。三日目のフィレンツェでは、絶景ポイントのドゥオモのクーポラ(狭くて急な463段の階段)にもみんなで登りましたし、その後の自由行動でも、現地ガイドの方から最近できた美味しいジェラート屋さんを紹介されれば、全員参加で本場のジェラートに舌鼓を打つといった具合。

そして、世界遺産アマルフィ海岸も快晴の中を散策し、青い海と白い建物のコントラストに目を奪われ、いつかは長期のバカンスで滞在してみたいと淡い期待も…。

ここまでの6日間はお天気にも恵まれてきましたが、翌日はこの旅行で唯一、現地到着後しか観光の可否が分からないスポット「カプリ島の青の洞窟」です。今年の入洞率は低く30%ほどとか、添乗員さんの情報によれば前日のツアーも入れなかったとのことです。そんな不安に包まれた中でしたが、ツアーメンバーの中の自称「晴れ女」や「強運の主」からは観光可能のご神託(?)がありました。果たしてその通り、朝9時にナポリから高速船で着いたカプリ島は、波も静かで快晴。中型船に乗り換えて到着した「青の洞窟」は、順番待ちをすることなくすぐに入洞、神秘的な青の世界を堪能しました。

美術館ではすぐ目の前の手が届きそうなところで、「ビーナスの誕生」や「受胎告知」などを鑑賞しましたが、大聖堂などの天井画はさすがに目視では限界がありました。そこで威力を発揮したのが持参した双眼鏡です。システィーナ礼拝堂の祭壇や天井に描かれたキリストとマリア像の端正な美貌にうっとりとし、アダムとイブが禁断の実を食べた後と前の姿形の変化に驚きました。また、サンピエトロ寺院の「ピエタ像」のマリア様の胸元に残されたミケランジェロの署名まではっきりと見ることができました。

すべてが心に残る素晴らしい旅行でした。


アマルフィ海岸

ピエタ像
投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2015年1月

主任研究員 奥 桂子
気づかいが素敵な店員さん

アベノミクス効果が出ているのか、外食産業が新規出店を増やす計画を伝える記事を目にします。

少し前までは外食が減少しているような動きが伝えられていたように思うのですが、今は目新しい「パンケーキ」や「チョコレートの専門店」などに並ぶ人々の姿がテレビに映し出されています。

長く続いた節約ムードが和らぎ、家族や友人とカフェやレストランで楽しむ人たちが増えているようです。

その流れに釣られたわけではないのですが先日あるファストフード店を訪れたときのこと。 昼下がりの店内は多くの人で、ほとんど満席の状態でした。各テーブルともにケーキや飲み物を挟んで、楽しそうなおしゃべりが聞こえています。

私達はケーキセットを頼んで待っているあいだに、アイスクリームも欲しくなり追加で「アフォガード」を注文したところ、店員さんは「『アフォガード』はむこうのカウンターで販売しています」と答えました。そこで「わかりました、あちらで購入するのですね」と言って、コーヒーが出来上がるのを待っていました。

すると、先ほどの店員さんが「今のあいだに僕が買ってきますので、お金をお預かりします」と言って下さった。「ありがとうございます、構わないのですか」とお金を渡すと、素早い身のこなしですぐに商品を買ってきてくれました。

その機敏で押しつけがましくない行動に、一気に彼のファンになってしまいました。

こちらが不満を持ったのではなく、納得をしているのにもかかわらず、一応のルールを説明した後で、そのマニュアルを超えるような行動をしてくれたことで、感動さえ覚えました。

その後、ケーキと一緒に食べた「アフォガード」はことのほか美味しく、もちろん先ほど受けた「お・も・て・な・し」の余韻に浸りながら、店員さんの爽やかさや接遇教育のレベルの高さにまで、話題を広げながら午後の楽しいティータイムを過ごしました。

それからは、ファストフード店の近くに出かけるたびにこの店を訪れています。体重計の数字を気にしながら・・・・・。

投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2014年3月

主任研究員 奥 桂子
行列のできる店

最近のテレビ番組の中で、「行列のできる店」の紹介が数多く取り上げられている。行ってみたい気もするが、何もそこまでしなくてもという気持ちもあり、積極的には行動をしていなかった。 しかし、予想外というか情報不足というか、結果的に「行列のできる店」を体験してしまった。

ところは三重県の北部、日本でも有名な「料理の鉄人」のパティシエと、カリスマシェフがコラボしてオープンした西日本初出店の施設。 2月の三連休の最後の日に出かけた折の事。 11時のオープンに間に合うよう、施設には10時50分に到着したにもかかわらず、500台止められる駐車場はほぼ満車であった。

 手分けしてレストランの予約と、パティシエのケーキ購入の列に並んだ。レストランは12時40分から予約が取れたので、まだ1時間40分の余裕があると、ケーキ購入の列で待つこと1時間30分。そろそろレストランの予約時間が来てしまうのに、行列は遅々として進まない。オープン前の行列はおよそ100人であったと思う。1時間半経った後、外に並ぶ人が約20人、店内で足止めされてまだ買い物をしていない人も20人ほど。もう諦めるしかないと、渋々行列から離れた。

 地元食材を使ったイタリア料理は評判通りに美味しく、シンプルながら食材の持ち味が十分に引き出された、やさしいおいしさであった。 その後、渋々行列から離れてしまったケーキ店へ未練いっぱいで戻ってみた。スタッフの言うことには「ロールケーキ」は午後2時ごろには完売。シュークリームとプリン、ケーキも間もなく終了とのこと。インターネットで見たカリスマパティシエの美味しそうなケーキには近づくこともできず、ケースに並ぶ姿をガラス越しに遠目に見ることしか叶わなかった。

憧れが強くて恨みが大きくなったのかもしれないが、この施設は昨年10月にオープンして3カ月以上が経過している。その間に休日の人出がどれほどになるのかは、もう把握できていると思われる。 行列に並ぶ人へ後どれくらいで店内へ案内出来るのか、なぜこんなに時間がかかるのかの説明は全くない。みぞれ交じりの冷たい風が吹き抜ける回廊でじっと待つ人々への感謝などは、感じられない対応であった。

カリスマパティシエのケーキとは、かくも辛抱の伴う代物であったかと、釈然としない思いを抱いて家路についた。        

投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2013年3月
主任研究員 奥 桂子
美しさとは?

障子窓に佇み遠くを眺める後ろ姿、お酒を飲むときのしぐさ、着物の裾をさばく足づかい。どの瞬間を見ても美しく、流れるような動きにため息が出る。この人が男性であることを忘れてしまう。

先日、京都で「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の公演を見たときの衝撃です。

ここまで言えば多くの方は察しがつくと思いますが、・・・そうです。坂東玉三郎さんのことです。二時間有余の芝居の中で、ほとんど出ずっぱり。三味線を弾いたり、てんやわんやのドタバタを演じる中で、笑いを取りながらも常に女性としての振る舞いが、何の違和感もなく見る者に迫って来る。修行の賜物とは言え、その素晴らしさに圧倒されました。

帰り道、四条の交差点で信号待ちしているおばさま方からも、異口同音に「女性よりも女性らしい玉三郎さんの所作の美しさ」に感嘆の声が聞こえてきました。

電車やバスなどの公共機関の中で、すっピンをさらけ出し、キレイ(?)に化けて行く姿を、何のためらいもなく披露しているお嬢さん、湯呑を鷲づかみする女性など、日常生活の中には玉三郎さんがびっくりしそうな振る舞いが、ここかしこで見受けられます。

また一方、通信販売やインターネットの広告には、ダイエット食品や痩せる体操などの情報が溢れかえっています。日本の女性の「やせ願望」は欧米以上らしく、平成22年の国民健康・栄養調査によると、20代女性の29%がやせすぎという。妊婦のスリム化もあって、新生児の目方までが減り続けています。

他人の目を意識するのならば、スリムなボディーや“マイナス5歳に見える化粧”だけにこだわりすぎず、立ち姿や動作の美しさにも心を配りたい。

世界的ファッション誌「ヴォーグ」が、やせすぎたモデルは使わないと宣言したと聞きます。不健康なほどに痩せたモデルに憧れて、過激なダイエットに走る読者を止めるために、「女性の美しいボディーの理想イメージを、より健康的なものにする」と、モデル業界やデザイナーにも意識改革を呼びかけたとのこと。

我が意を得たり!!「痩せすぎは健康にも良くない。食べたいのに食べられない人もいる。程々に食し、所作・振る舞いもそれなりに」と、京都で買ってきた、和菓子にそっと手を伸ばす・・・・・。         (奥 桂子)

投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2012年7月
主任研究員 奥 桂子
言葉づかいは心遣い

私たちが日常かわす会話は、その場の雰囲気に沿って流れているように思う。ただそんな会話の中にも、相手の心遣いが伝わってきて思わず「そうだったのか」と、嬉しさや感謝の気持ちがこみ上げてくる時もある。

先日、京都でタクシーに乗った時のことである。 大方の場所はわかっているのだが、真夏の暑い日差しが照りつけていたこともあって、近くではあったがタクシーを利用した。

行き先を告げて、「今日も暑くなりそうですね」と言うと、運転手さんも「ちょっと外に出て、お客様を待っているだけでも汗が出てきます」と返してくれた。車は右に左に細い路地を通り進んでくれているようである。

もうそろそろ目的地が間近かだと思ったその時、路地の入り口に警備員が立っていて、「工事中です。迂回して下さい」と告げている。

仕方なく、タクシーは迂回した。その時運転手さんが「この道を抜けた方が近道で、目的のビルの前に横付けできると思ったのですが、申し訳ありません。少し遠回りになりますが、本通りに出ます」と言われた。

私も「はい、急な工事のようですね」と答えると、また運転手さんが「この通りに出ると、ビルとは反対側にしか着けられなくて、暑い中を陽の当たる交差点を渡ってもらわなくてはならないので、先ほどの道を選んだのですが申し訳ありません」と言ってくれた。

私は思わず「いいえ、そこまで考えてもらってうれしいです。運転手さんの親切な気持を聞かせてもらったことで、とても気分がすっきりしています」と答えた。何も言われずに「遠回りします」とだけ聞かされていたら、何となく不愉快な気分になっただろう。

自分が相手のために良かれと思ってする行動も、その理由を相手にあまり負担に感じさせることなく、さりげなくうまく伝えることは難しい。しかし、難しいからと言ってその説明を省いてしまうと、本人の真意が伝わるはずもなく、却ってお互いの間がぎくしゃくすることにもなりかねない。

「言葉づかい」はまさに「心遣い」であると思う。お互いに良い関係を作り出すためにも、心を込めて話す誠実さと、それを素直に受け止めるやわらかさを心がけたいと思った出来事である。

もちろん(?) 件(くだん)の運転手さんには、千円札を出して「おつりはいいです」と、少しためらいながら言って降りた。

投稿者:主任研究員 奥 桂子|投稿日:2011年10月