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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると9月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比1.1%増加(近畿合計:3.4%増)と前年を上回った。

商品別内訳をみると、飲食料品が0.4%増加(同0.7%増)、身の回り品が8.7%増加(同6.6%増)、衣料品が3.6%増加(同4.1%増)と全て前年を上回った。

次に9月、10月の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、飲食料品は、肉の売上が好調、野菜は前年より単価が下がったことや直売所へのシフトもあり微減。鮮魚は前年より低調ではあるが回復しつつある店舗が多かった。

魚を使った惣菜、加工品の売上が伸び、鮮魚の売上が落ちていることから「鮮魚を料理することに慣れておらず、手間がかかると感じる人が多くなっている」と考え、店員が鮮魚を使ったメニューやおいしい食べ方を積極的にアピールすべく、その場で調理し、店頭客に調理方法を教えることで売上を伸ばす店舗も見受けられた。

衣料品は、9、10月と昨年に比べ肌寒かったことから「秋物」、「冬物」とも売上は全般的に好調。今後もバーゲンセール等による売上増が見込まれる。

時計等高級品やレストラン街の売上が伸びていることから「良いものには多少値段が高くてもお金を使う客が増えているのでは」と考える店舗もあったが、全般的には依然、「節約志向」が根強い様子。

地元小学校と連携しワークショップを開催したり、今後地元の警察、市町村等と連携しイベントを企画することで、地域の方々に親しみを持ってもらい来店誘致に結び付けようと考えたり、「パン・スイーツフェア」などの目新しいイベントやカード保有者を対象にした優待セールを企画する店舗もあり、それぞれが独自性を出すことで顧客獲得、囲い込みに注力している。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、9月が前年同月比5.0ポイント低下の75.7%[最も高いホテルは約86%]、10月は同6.0ポイント低下の80.5%[同約92%]。宿泊人数は9月が前年同月比6.9%減の47,508人、10月は同7.0%減の55,908人であった。10月は2度の台風接近の影響を受け、宿泊客のキャンセルが相次いだ結果、稼働率、客室人数とも大きく前年を下回った。

新設ホテルの増加により競争が激化しつつある奈良市周辺では、他のホテルと差別化を図りながら、奈良の豊富な観光資源の魅力アピールに力を入れている。また宿泊客に満足して帰ってもらい、再び奈良を選んでいただけるようなおもてなしを心掛けている。

奈良県は、昨年1年間の県内宿泊者数の推計が延べ272.6万人であると発表した。前年比1.6%(約4.4万人)減で2年ぶりに減少したが、調査を開始した2009年以降、3番目に多かった。ホテルやゲストハウスなどの簡易宿所は前年より増加したが、旅館は減少傾向であった。

外国人宿泊客は2013年から増加が続いており、昨年も前年比7.7%の増加(2.3万人増)となった。特にゲストハウスなどの簡易宿所への外国人の宿泊は65.6%と大幅に増加し、奈良市などの県北部に8割以上が集中した。


木材関連産業(集成材・外材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2017年9月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比2.7%減で、3か月連続の減少。林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2018年第1四半期(1~3月)の需要は、輸入丸太は85万㎥と前年同期比で増加する一方、輸入製材品は157万㎥、構造用集成材は56万㎥と同減少の見通し。

県内集成材業界においては、生産・出荷とも概ね前年比横ばいの動きで、一部では前年比増加の声も聞かれる。ただ欧州産ラミナの強気の現地価格に加え、円安やフレート(船賃)高等がコストアップ要因。一方、販売先からの値下げ圧力は根強く販売価格への転嫁は一部にとどまっている。

県内外材業界においては、生産・出荷とも概ね前年比横ばいの動き。山火事による伐採規制の影響等によりカナダ産材に品薄感が出て価格上昇。円安やフレート高等が重なっているが、競合する国産材の低価格化に押され、値上げしづらい。

住宅新築需要の減退を見据え、製材業界は環境変化への対応を迫られており、中には公共建築物の木質化に対応した資材の受注強化を目指す企業もある。

一方で、公共建築物への木材利用については日本農林規格(JAS)等の認定が求められることが多く、中小製材業にとっては登録料・手数料等のコストが導入に二の足を踏む要因となっている。


繊維関連産業(靴下)

経済産業省が発表した「生産動態統計」によると、2017年9月の靴下(パンティストッキングを除く)生産数量は4,732千点と、前年同月(5,228千点)比9.5%減少。

7~8月にかけて酷暑の影響で売上が落ち込んだが、9月頃からは残暑があまり厳しくなく秋口の受注が前倒しとなったため上向き。しかし落ち込み分のカバーまでは至らず売上は前年比減少。

製品価格は上がっていないがデフレ圧力は弱まっている。流通各社が客単価確保のため比較的高価格帯の商品に注力している影響もあり。しかし各種コストは下がっておらず利益率は芳しくない。

奈良県靴下工業協同組合が立ち上げた産地共同ブランド「The Pair」は、10月上旬に千里阪急で同店3回目の、また10月下旬にあべのハルカス近鉄本店で初の催事出店を実施。いずれも予想を大きく上回る売上を記録し、百貨店側担当者も驚くなど同業界へのインパクトはあった模様。

同組合が運営主体の「靴下ソムリエ資格認定制度」の第1回試験を今年10月に奈良県と東京都で実施。計455名が受験し292名が合格した。The Pairは高付加価値をアピールするために商品の魅力や価値を説明して接客販売する必要があり、その役割を靴下ソムリエが担う仕組みを検討する。また関東地区の百貨店へのThe Pair催事出店も今後検討を進める予定。


プラスチック製品製造業

業況は製品・分野にもよるが、概ね堅調で、受注も底堅く推移している。特に化粧品や薬品関連では、インバウンド消費だけでなく、新興国でのネット通販による販売増加の影響がみられる。

県外では人手不足を背景に、オートメーション化等により小ロット生産をやめ、大ロットの依頼のみ受注する方針に転換したプラスチック製品製造業者もあり、その影響から一部県内企業で小ロットの引き合いが旺盛となっている。ただし、県内企業も人手は不足しており、依頼はあっても生産能力が追い付かないため、受注を断らざるを得ないケースがみられる。また、外国為替が比較的円安水準であること、新興国の人件費が上昇していること等から、海外生産への依存度が低下し、国内生産に回帰していることも、引き合いが旺盛となっている要因と考えられる。

一方、原材料については、大手メーカーの生産ライン統廃合により、一部で品薄となっている樹脂もある。

人手不足の状況については、特に生産現場の作業者は夜勤もあるので、募集しても人が集まりにくい状況。就労ビザを持つ外国人労働者を雇う企業もあるが、賃金水準は奈良よりも大阪、大阪よりも名古屋が高く、外国人労働者もそうした情報をネットで入手できることから、自社の外国人が他社に引き抜かれる懸念は常にあるという。


建設業

国土交通省の建築動態統計により平成28年10月から平成29年9月までの1年間の県内の工事費予定額についてみると、民間工事は前年比2.4%の減少だった。これに対して公共工事も同17.8%の減少となった。

原材料価格の状況をみると、鉄筋、鉄骨などの鉄関連および生コンともに高めではあるが、安定して推移している。

今後については公共工事、民間工事とも大きな動きは少ないと思われるが、県内の多くの市町村で庁舎の老朽化が進んでおり、建て替え工事が進む模様。ただし、比較的規模の大きな工事となるため県内業者がどれだけ入り込めるかは不透明である。

建設業では就業者数の減少が進行しているうえに、高齢化も顕著となっている。また、年間実労働時間や年間出勤日数が他産業に比べ多いことから、国土交通省は「建設業における働き方改革」を進めており、建設業の長時間労働の是正に向けた取組みを強力に推進している。今後、適正な工期設定や適切な賃金水準の確保、週休2日制等が進むものと思われる。

また、産業の中でも特に建設業の労働災害による死亡事故が平成29年中に多発していることを受け、厚生労働省は年末年始にかけ墜落・転落災害防止対策強化キャンペーンを実施している。