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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると9月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比2.0%減少(近畿合計:2.0%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、飲食料品は1.2%増加(同1.7%増)と前年を上回ったものの、身の回り品が11.3%減少(同5.7%減)、衣料品が11.2%減少(同8.3%減)と前年を下回った。

次に9月、10月の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、9月上旬に相次いで発生した台風20号・21号の影響により臨時休業や営業時間の短縮を余儀なくされた店舗では、9月の売上げが落ち込んだ。台風や西日本集中豪雨、北海道地震により多くの契約農家が被害を受けたため、一時商品が品薄状態になった店舗があった。野菜の価格高騰が持ち直したようにも見られたが、天候不順により再び高騰するのではないかとの声があった。肉類についても全体的に市場相場が上昇傾向にあり、販売価格がやや高くなっている。

また、関西国際空港が一時閉鎖されたことによるインバウンド消費の落ち込みが心配されたが、10月中旬には回復し、前年同期より大きく売上げを伸ばした店舗もあった。依然として高級化粧品の売れ行きが好調。バイヤーと思われる客がいる一方で、催事などイベント開催時には近隣ホテルの宿泊客の姿も目立った。

今後は、クリスマスや歳暮、年末年始グッズ、おせち、福袋などの商戦が続く。おせちはホテルや高級旅館など高価格で数量限定の商品が売れ筋。ある店舗では、「福袋は各社が趣向を凝らすので、顧客ニーズをとらえ、他社との差別化を図る必要がある。従来の中身がわからない商品をお得感だけで消費喚起できない」と話す。ほとんどの店舗において、LINEを利用したweb広告やメンバー限定の特典・イベント情報の発信による来店誘致に力を入れている。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、9月が前年同月比4.4ポイント低下の71.4%[最も高いホテルは約81%]、10月は同0.1ポイント上昇の80.6%[同約90%]。宿泊人数は9月が前年同月比2.9%減の46,175人、10月は同0.8%増の56,467人であった。9月は台風の影響を受け稼働率、宿泊人数とも大きく前年を下回ったが、10月は11か月ぶりに前年を上回った。

10月、11月は興福寺中金堂の一般拝観や秋の奈良の風物詩である正倉院展により客室稼働率、宿泊人数とも前年比増との声が多い。

奈良県は、昨年1年間の県内宿泊者数の推計が延べ2,802,060人であると発表した。前年比2.8%(75,770人)増で、平城遷都1300年祭があった2010年に次いで多かった。ホテルの新規開業や外国人宿泊者数の増加が影響したとみられる。

ホテルの宿泊者数は前年比7.7%(107,160人)増で、直近5年間で24.0%の増加となった。また外国人宿泊者数は前年比5.4%(17,282人)増で、直近5年間で3.3倍の増加となった。一方で、外国人観光客数は前年比26.4%(2,090,200人)の大幅増となっている。奈良県のインバウンド・宿泊戦略室は「外国人観光客数の伸び率に比べ、外国人宿泊者数の伸び率は小さい。今後は宿泊施設の質の向上や奈良県に宿泊してもらう仕組みを考えたい」としている。


木材関連産業(集成材・外材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2018年9月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比0.04%と微増し、2か月連続の増加。2019年10月に予定されている消費税の8%から10%への増税を控え、今後駆け込み需要が顕在化すると見込まれる。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2019年第1四半期(1~3月)の需給は、輸入製材品は前年同期と同程度で、輸入丸太及び構造用集成材は、前年同期に比べ減少する見通し。

県内集成材業界の業況は全般に低調。原材料である欧州産ラミナの価格上昇やフレート(船賃)高によるコスト高が続いているが、価格転嫁は一部にとどまる。大手ビルダー系列のプレカット工場で在庫がだぶついたため、他社においても減産等のマイナス影響が見られるが、だぶつきは年末に向け次第に解消に向かうとみられる。

本年9月に発生した台風災害では、納入先の倉庫の屋根が飛ばされ物流機能に支障が出たため、ピッキング機能を備えた別の業者から購入するといった商流への影響が一部で見られた。

県内外材業界の業況についても同様に低調。集成材の値上げが限定的である中、国内挽き米材の値上げも難しい。アメリカの新設住宅や中国市場が減速する中、米材価格の下落が期待されるが、下がりすぎると供給面での不安が残る。


繊維関連産業(靴下)

経済産業省「生産動態統計」によると、2018年9月の靴下(パンスト除く)生産数量は4,774千点と、前年同月(4,733千点)比0.9%増加。

7~8月は猛暑の影響で荷動きが悪化。9月末の冷え込みで秋冬物の荷動きが若干あったが、10月の気温上昇と冷え込みの遅れで秋冬物の前はけが悪い。ウールや化学繊維など原材料価格が高止まりしているが、気候の関係で荷動きが悪く価格転嫁は難しい状況。円安傾向もコスト要因となり利益率は引き続き厳しい。

設備投資の動きは相変わらず鈍いが、県内業界でのものづくり補助金の採択は例年になく多く、更新投資等に前向きな動きはあるものと見られる。

県内業界に多いOEM生産を取り巻く環境は厳しさを増しており、自主企画製品(自社ブランド)を志向する動きも徐々に増えてきている。

9月に実施された第2回靴下ソムリエ資格認定試験は384人が受験し165人が合格。

奈良県靴下工業協同組合が立ち上げた産地共同ブランド「The(ザ) Pair(ペア)」は実売開始から丸2年が経過。関西の百貨店での催事販売を中心に確実に固定客を増やしているが、顧客管理による販促等を行おうとするとやはり常設直販店の設置が望ましい。県などの協力を得て関東・関西に何らかの形で常設拠点を設けられないか、組合としても引き続き検討を進めている。


プラスチック製品製造業

県内プラスチック業界は夏以降、業況の増勢に一服感がみられ、家電製品の部品を成形する企業等では、生産設備の稼働状況がやや低下している。一方、国内化粧品メーカーが相次いで増産に向け設備を増強する中、ボトル容器を成形する企業でも引き合いは依然旺盛で、成形機を増設する企業もある。背景には、帰国後も日本製の化粧品をネットで継続的に購入する訪日外国人の増加がある。

また、訪日外国人が国内小売店で自社製の日用雑貨品を気に入り、帰国後に口コミ等で広まったことがきっかけとなり、東南アジア向けの輸出が伸びている企業もある。

他方、ホームセンター等、実店舗を持つ小売業の売上が前年割れとなる中、同業態に日用品を卸す県内プラスチック製造業でも業況は横ばいかやや低下傾向。ネット販売の台頭が要因とみられ、自社製品をネットで直接販売している企業では、ネットの売上シェアが徐々に拡大している。

原材料価格は、ナフサ価格の上昇に伴い前年比15~20%上昇。段ボール等の資材も値上がりしており、原材料、人件費の上昇が業界共通の悩みとなっている。省人化の設備投資を検討する動きもみられるが、中小企業の多くは多品種少量生産を前提としており、大量生産に比べ解決すべき技術的な課題が多く、その分コスト負担も大きくなることから、人件費削減効果の見極めが難しい。


製薬業

最近の県内企業の状況は、総じて低調に推移している模様であるが、個別企業の動きをみると、一部で廃業に至るケースがある中、OEM(相手先ブランド)による一般医薬品の製造が好調なため増収を続ける企業もみられる。

健康食品の販売はあまり伸びず、ネット販売も売上全体に占める割合はごく僅かにとどまっている。

食品・化粧品メーカーなど、医薬品メーカー以外の企業から、医薬品の製造案件が継続的に来ている模様。また、自ら商品化の提案を働きかける動きもみられる。

販売価格が据え置かれているなか、原材料価格の上昇傾向が続いており、利益は減少傾向。特に配置薬関連は厳しい状況が続いている。紙の箱や医薬品用PTP包装材も値上げ要請が来ているとのこと。

設備投資に関して、ある企業が新工場建設に着手しているほか、ほかにも複数企業で工場拡張の計画がある模様。

耕作放棄地を活用して生薬の原料となる植物の試験栽培に取り組んでいる企業もあり、薬草の一部を販売したり、健康食品の一部商品化も行ったりしている。

ある企業では、将来の薬剤師の確保を目指して、県内の高校と薬剤師育成の奨学生制度の連携協定を締結した。

【ご参考:現時点での最新データ】

「薬事工業生産動態統計」(厚生労働省)により奈良県の医薬品生産状況をみると、2017年8月から2018年1月迄の半年間の生産金額は197億円で、前年同期比6億4千万円減(同3.2%減)となった(全国:同4.9%減)。内訳をみると、自社製造(98億円)は同0.8%減(全国:同5.7%減)、委託製造(98億円)は同5.4%減(全国:同3.5%減)となっており、委託製造のウエイトが50.0%と全国(39.7%)より高くなっている。