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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると7月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比4.9%減少(近畿合計:3.4%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、飲食料品は3.6%減少(同3.7%減)、身の回り品が6.2%減少(同4.0%減)、衣料品が8.5%減少(同5.6%減)とすべての商品が前年を下回る結果となった。

次に当研究所のヒアリングによる7月、8月の県内百貨店・スーパーにおける状況は、7月は気温の低さや天候不良により飲食料品、衣料品ともに夏物商品が伸び悩み、全体的に苦戦。また、日照時間や朝晩と日中の温度差など気象条件に左右される青果物は、仕入れの際に品質を見極めるのが難しかったという。8月は気温の上昇に伴い、例年ならば緩やかになる夏物需要が増加。クリアランスセールの実施や、店頭に並べていた秋物衣料を夏物に切り替えるなどして売上げを伸ばし、7月の不調を補った店舗が多かった。一方、衣料品の最大の競合先はネット販売とし、特に婦人服はデザインやサイズ感など消費者の嗜好が多岐に亘るため、全てのニーズに応える商品をリアル店舗で販売するのは困難で、リアル店舗としての良さを打ち出さないと、ネット販売との差が広がると考える店舗もあった。食料品は肉・鮮魚ともに好調。ある店舗では、調理人が魚をさばく様子をライブで見られるのが楽しいと顧客から評判である。

お盆は「ハレの日」としてやや高級な商品が好まれ売上げは増加するが、仏事などは年々簡素化されており売上は減少傾向にある。日本の生活文化が若い世代に伝承されなければ、季節商品の需要が薄れていくのでは、との声が多い。

消費増税前の駆け込みは、生活用品や化粧品で徐々に現れている。布団、時計などの高額商品の催事により2014年(消費税5%から8%に増税)程度の増加を見込む店舗もある。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、7月が前年同月比5.6ポイント上昇の71.4%、8月は同2.2ポイント上昇の80.4%であった。宿泊人数は7月が前年同月比12.2%増の49,292人、8月は同6.7%増の60,916人となった。前年の天候不順の影響からの回復とみられる。

7~8月の宿泊者数は昨年比増加となった。猛暑や台風による天候不順の影響で大きな落ち込みとなった昨年の反動で前年比では増加したが、平年よりは少ない結果となった。7、8月は「なら燈花会」など、さまざまなイベントの集客効果により入込観光客数は多かったが、入込客数ほど宿泊需要は盛り上がらなかった。ホテルの参入も増え、インターネット予約の影響から宿泊日直前に安い値段を探して予約されるケースが増えてきており、業界としては厳しい競争状況にある。

インバウンド関連では引き続き中国からの割合が高く宿泊需要は根強い。団体旅行よりは個人旅行が増加してきており、今後も中国人観光客の動向は注目である。

夏季は奈良市内だけでもさまざまなイベントが催され、地域のメイン行事として認知されているものも多くある一方で、PRが十分でないものもある。さらに、宿泊需要の取り込みも十分とはいえない状況もあり、イベント開催を地域へ効果的に波及させるためもう一段の工夫が必要との見方もある。


木材関連産業(国産材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2019年1~6月の木造住宅の新設着工戸数は前年同期比1.2%増加。一方、7月は前年同月比1.3%減で、2か月ぶりの減少となった。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2019年第4四半期(10~12月)の需給は、国産材合板用丸太は前年同期比増加、国産材製材用丸太は前年同期と同程度の見通し。

九州等、台風や大雨の影響で出材が少ない地域では相場の上昇も見られるが、県内の原木価格は軟調。昨年11月に行われた全国銘木展示大会の反動もあり、原木市場の売上は低迷している。こうした中、顧客企業から板や柱製品の注文を受け、製材所に生産を指示し検品・納品まで行う商社的業務を担う市場もある。

10月の消費税増税を控え、関西圏のプレカット工場では引き合い増加の声が聞かれる一方、注文住宅やリノベーション住宅向けに資材を提供する県内の製材メーカーからは、駆け込み需要を感じないとの声もある。

奈良県では、中川政七商店の協力のもと、同社のショップ「日本市」(東京・日本橋)にて、「旅する日本市・奈良」を開催。木工作家らがテーブルウェアや照明、玩具、アクセサリーなど、「奈良の木」を使った生活雑貨を期間限定で展示・販売し、県産材の魅力をPRした。


繊維関連産業(靴下・パンスト等)

日本靴下工業組合連合会が5月末に発表した生産統計によると、奈良産地の2018年の生産量は靴下が7,499万点で前年比8.0%減(全国は6.1%減)、パンスト・タイツ等は1,982万点で同4.9%減(全国は0.5%減)だった。全国の輸入浸透率も83.8%と4年連続で増加しており、国内製レッグウェアの生産環境は依然として厳しい。

昨年の暖冬の影響で靴下、パンストとも冬物の在庫がだぶついており、今冬の発注は弱含み。原材料価格、輸送代など様々なコストが上昇する中、10月からの最低賃金引き上げの影響も大きく、利益率確保は引き続き難しい。

県内業界に多いOEM生産を取り巻く環境は厳しさを増しているが、OEM生産に比べ付加価値を確保しやすい自社ブランドの推進や機能性レッグウェア(医療用、補正用、スポーツ用など)製造への積極的な取組も増えてきている。

9/29~10/1にジェトロ奈良が欧州市場視察ミッションをパリで実施。県内企業も数社参加し、最終日には奈良産地共同ブランド「The Pair(ザ ペア)」を中心とした展示販売会を現地で開催する。欧州市場に限らず、中国やアジアも含めた海外市場に目を向けている県内企業は増加傾向にある。

奈良県靴下工業協同組合は5月末の総会で堀田和彦氏(三ツ星靴下(株)社長)が新理事長に就任。これまでの組合の取組をさらに推進する方針。


プラスチック製品製造業

プラスチック製品製造業は、全般に工場の稼動率、出荷状況がやや力強さを欠いており、米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速が影響しているとの声も聞かれた。一方、中国に生産拠点を持つ企業では、中国経済の減速により同国から東南アジア諸国等への生産シフトが進めば、同国の賃金水準、生産コスト上昇が抑えられ、自社にとっては逆にメリットになるとの意見もある。

先行き見通しは、日用品、工業材料等の分野を問わず成形の引き合いが旺盛なことから、業況の回復が見込まれる。なお、10月の消費増税に向けた駆け込み需要の影響は特に見られない。

原材料の仕入価格の基準である国産ナフサ価格は、前年より水準が若干低下している。

東南アジア諸国でPP(ポリプロピレン)等の汎用樹脂のプラントが増えたことから、国内樹脂メーカーが一部の樹脂の生産を打ち切っており、県内企業ではいずれ樹脂の調達先を海外樹脂メーカーにシフトすることになるとの声も聞かれる。

今年の盆休みは、9日間を前半と後半に分けて従業員に休暇を取得させる企業があった一方、働き方改革を進めるうえで所定の休暇日数を取得させる必要があることから、9連休とする企業もあった。今後、ゴールデンウィークや盆、年末年始等についても、同様の運用が広がると予想する見方もある。


製薬業

最近の県内企業の売上状況は総じてやや減少傾向となっているものの、個別企業の動きとしては、OEM(相手先ブランドによる受注生産)による一般医薬品で生産が増加していたり、新規受注の事案が増えている企業もみられる。奈良県下企業における製造の受託は、2014年から2018年までの5年間で年平均8.2%の増加となっており全国伸び率の年平均3.3%と比較すると増加傾向が大きい(厚生労働省「薬事工業生産動態統計」)。

受注好調な企業の中には、大型設備投資で製造工程や倉庫管理にロボットが多数導入されるケースもあり、当業界でも工場自動化の流れは広がっている。これら設備投資の背景には、製造部門の人員不足が続いていることも一因と言える。また、人員確保のために福利厚生制度の充実にも力を入れる傾向が見える。

自社ブランドによる販売では、国内向け、海外向けとも健康食品分野の展開を図る企業は多いが、売上規模では主力となるほど大型の商品は育っていない。その中で売れ筋商品のテーマとしては以前の「滋養強壮」から「美容」、「安眠」などへ移ってきている。

海外への展開は、現地の商社と提携し自社ブランドでの展開を図る動きがあり、東アジアから東南アジアへ広がりをみせつつある。

事業承継は徐々に進んでおり、比較的若い間に社長へ就任し前社長である親が会長へ退くというケースが見受けられるようになってきた。

 

【ご参考:製造データについて】

「薬事工業生産動態統計」(厚生労働省)は2019年1月から統計方法が変更となり前年同期比の比較ができなくなったため、今回は掲載しません。