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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると、1月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比2.4%減少(近畿合計:0.6%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、衣料品が9.3%減少(同2.2%減)、身の回り品が3.2%減少(同1.7%減)と前年を下回ったが、飲食料品は0.2%増加(同0.1%増)と前年を上回った。

次に、1月以降の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、衣料品は、2月から他店舗に先んじて「春物」の販売を開始した店舗もあるが、肌寒い日が続いたことから売上が低迷した。他店舗も「春物」の売上は現状伸びていない様子。

飲食料品では、鮮魚の売上は低調だが、野菜や肉の売上は前年並みか微増となった店舗が多かった。地元農家から朝に仕入れた野菜を店頭に並べ、食材の新鮮さをアピールしたり、他店舗では購入出来ないような目新しい魚を独自ルートで仕入れ、好きな魚を箱詰めし購入できるようにすることで、売上増に向け工夫している店舗もみられた。

2月からスタートした「プレミアムフライデー」については、目立った催しを行った店舗は少なく、イベントとしてはまだ定着していない様子。ただし、4月以降に本格化すると考えイベントを計画している店舗がみられた。

各店舗とも、いかに来店客を増やすかに注力している。「モノ」から「コト」消費に変化する中、母の日に造花等手作りのものを送るために「ワークショップ」を開催したり、「ウオーキング」等健康に関するイベントを企画する店舗も見受けられる。それぞれの店舗が独自性を出すことで、顧客獲得に努めている。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、1月が前年同月比3.1ポイント低下の59.1%、2月は同4.5ポイント低下の67.8%であった。宿泊人数は1月が同6.9%減の39,153人、2月は同11.6%減の39,711人であった。

1月・2月の客室稼働率の低下及び宿泊人数の減少要因は、昨年度、冬期の宿泊観光客誘客のため奈良県が実施した「奈良県宿泊者限定ネットワークキャンペーン」を、今年度は実施しなかった影響が大きいとの声もある。

観光庁の「宿泊旅行統計調査(速報値)」によると、平成28年の奈良県の延べ宿泊者数は2,442千人で、前年比4.3%減であった。

一方で、平成28年に奈良県内に宿泊した外国人延べ宿泊者数は295千人(同庁同統計調査)で前年比14.5%増となった。

近鉄南大阪線の大阪阿部野橋から吉野へ走る観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」が好調である。原則、毎週水曜日を除き1日2往復運行しているが「ほぼ毎日、満席に近い状態」が続いており、2016年9月の運行開始から3月6日までに延べ約4万人が利用しているという。

世界遺産に指定されている吉野山は、季節を問わず観光客で賑わうが、桜のシーズンを迎え、吉野方面に向かう観光特急「青の交響曲」がさらに快走しそうである。


木材関連産業(国産材)

林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2017年第2四半期(4~6月)の需要は、国産材製材用丸太は前年同期と同程度(310万㎥)、同合板用丸太は前年同期比で減少(90万㎥)との見通し。国土交通省「住宅着工統計」によると、2017年1月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比4.2%増で、13か月連続で増加。全国的に旺盛な住宅需要を受け、一部木材製品で価格上昇。

県内原木市場においては、深雪の影響で丸太の出材が少ないため高級木材で価格上昇しているが、供給が戻れば再び価格は下落すると見られる。

県内木材製品の出荷量は全体的に減少傾向にあるが、中には出荷量が前年を上回る企業もある。こうした企業は機械加工ノウハウを有し、または急な発注に備え原材料や半製品の適正在庫に努めている。資金力に乏しい企業では顧客ニーズの多様化に対応できず受注が困難化している。

奈良県は昨年11月、森林管理の分野での人材交流を目指し、スイス・ベルン州のリース林業教育センターとの間で「友好提携に関する覚書」を締結した。スイスでは高度の知識と権限を有する国家資格者「フォレスター」が、木材生産、防災、生物多様性維持、レクリエーション等、森林の有する多様な機能を総合的に高める森林管理を行っており、奈良県は国内でもそうした専門家を養成できないか検討を進める。


繊維関連産業(パンスト・レッグウェア)

経済産業省が発表した「生産動態統計」によると、2016年下半期(7月~12月)のパンティストッキングの生産数量は65,464千点と、前年同期(66,858千点)比2.1%減少。一部のレッグウェア大手メーカーからは、定番のストッキングが堅調に推移した一方、ファッション性の高い商品は不調との声が聞かれる。

海外の製造コスト上昇を背景に、一部で国内への生産回帰の動きが見られることもあり、県内レッグウェアメーカーの受注は概ね堅調と見られる。反面、時間外・休日出勤では対応が追い付かず、労働力の確保が喫緊の経営課題になっている企業もある。また、最低賃金の上昇を受け、人件費上昇が生産コストの増加につながっている企業もある。

消費者の「本物志向」が高まる中、日本製にこだわった品質認証制度「J ∞QUALITY(Jクオリティー)」が注目されている。2015年に始まった同制度は、従来のメイド・イン・ジャパンを超え、「織り・編み」「染色整理加工」「縫製」「企画・販売」すべてを国内で行った商品のみを認証する統一的なブランドである。ストッキングにおいては、昨年6月に大手メーカーの高級ブランド商品が認証を取得する動きもあったものの、取得コストとの兼ね合いから、中小企業が取り組む上では課題も多い。


プラスチック製品製造業

県内プラスチック製品製造業の業況は、全体としては生産・出荷とも底堅く推移しているが、年初以降、売上が前年比で微減となる企業もあり、個人消費で買い控え等の傾向を懸念する声も聞かれた。

昨年末からの原油価格の上昇を受け、原材料のナフサ価格が上昇しており、さらに米国の政策発表の度に急変する為替動向も懸念材料となっているが、OPECの原油減産合意以外に特段の要因もないことから、今後の原材料価格の上昇は限定的との見方が大勢を占めている。また、輸出関連企業の割合が低い県内プラスチック業界では、原材料価格低下に繋がる円高ドル安を望む声が多い。

一方、製品価格については、昨年のナフサ価格低下局面で値下げがほとんど行われなかったことから、現在、原材料価格が上昇しているが、まだ製品価格を値上げする状況には至っていない。

なお、国内では原材料メーカーが減少しており、国内供給力の低下や将来的な海外調達の必要性を懸念する企業もある。

採用面では、新卒採用における学生の質の低下を指摘し、ある程度の年齢、経験を積んだ中高年の中途採用を重視する企業もある。

また、奈良県プラスチック成型協同組合では今年も50名弱の外国人技能実習生を受入れ予定である。


製薬業

「薬事工業生産動態統計年報」(厚生労働省)により奈良県の医薬品生産状況をみると、2016年4月から2016年9月までの半年間の生産金額は234億円で、前年同期比1億4千万円減(前年比5.7%減)と小幅ながら減少となった(全国:同6.4%減)。

内訳をみると、自社製造(98億円)は同6.9%減(全国:同3.9%減)、委託製造(136億円)は同4.9%減(全国:同9.7%減)となっており、委託製造のウエイトが58.0%と全国(40.9%)より高くなっている。

県内企業の状況をみると、増収・増益を続ける好調な企業がある一方で、後継者不足や売り上げの低迷等から廃業を余儀なくされるところもみられるなど、業績は二極化している様相。業容拡大のため、付加価値商品の開発に注力する企業もあるが、費用や日数が多くかかるため、思うように進んでいないケースも少なくない。

2017年1月よりセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)がスタートした。同税制は、一定の条件のもと、あらかじめ決められた市販薬を対象とする医療費控除であり、市販薬をよく利用する消費者にとっては節税となる可能性が増える。しかしながら、セルフメディケーション税制の対象となる市販薬は限定されており、これを製造するメーカーは県内には少なく効果は限定的である。