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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると、3月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比1.0%減少(近畿合計:1.4%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、飲食料品が0.1%増加(同1.1%減)、身の回り品が7.0%増加(同2.1%減)と前年を上回ったが、衣料品が7.3%減少(同4.9%減)と前年を下回った。

次に、3月以降の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、衣料品は、3月は例年に比べ肌寒い日が続いたこともあり、全般的に「春物」の販売が不調だった。多くの店舗が5月以降の「夏物」の販売で挽回しようと考えている様子。

飲食料品では、鮮魚の売上は低調だが、野菜や肉の売上は前年比微増となった店舗が多かった。

そんな中、地元生産農家の収穫した野菜を、即日店頭で販売することが顧客に浸透し、売上増につながった店舗もあった。

「プレミアムフライデー」は、自社ブランドカードに普段より多くポイントを付与している店舗があるが、「まだ世間での認知度はあまり高くないため、今の段階では目立った催しは行っていない」という店舗が多い。

GWは、天気もよく後半は休日の並びがよかったため、来店客は昨年比減少した店舗が多かった。

また、客単価が下がっており、節約志向が強くなっていると感じる店舗が多い。

最近、来店客が固定化されつつあることから、地元の商工会や県と連携し、「健康づくり」に関するイベント等を開催することで、近隣住民の来店誘致を図る店舗もあった。

また「LINE(ライン)」を使って新規顧客の獲得を図ったり、「ネットスーパー」や来店して購入した商品を家まで配送するサービスに力を入れる店舗も増加している。それぞれが独自性を出すことで顧客獲得、囲い込みに工夫をこらしている。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、3月が前年同月比5.8ポイント低下の81.0%、4月は同0.3ポイント低下の88.8%。宿泊人数は3月が前年同月比5.3%減の56,671人、4月は同0.4%減の60,381人であった。

3月、4月とも客室稼働率は低下したものの、依然80%を超えており、高水準を維持している。

また宿泊人数の減少は、中国人や韓国人等の旅行スタイルが団体客による買い物中心の爆買いツアーから、小グループによる体験型の「コト消費」に変わってきたことが一因である。

民間の調査会社が算出した2016年度の近畿2府4県を訪れた外国人観光客数(推計)は、前年度比22.8%増の1,061万人となり、過去最高を更新した。特に府県別では奈良県の伸び率(前年度比48.3%増、177万人)が最大で、大阪府、京都府に次ぐ外国人観光客数で、初めて兵庫県(151万人)を上回った。

奈良県は、世界遺産の法隆寺や、あまり知られていないものの地域にとって大切な史跡などの文化財をデータベース化したウェブサイト(奈良県歴史文化資源データベース「いかす・なら」)を3月に立ち上げた。

「記紀・万葉集」をはじめとする文献史料、歴史上の人物及びそれらに基づく伝承や旧跡など約100件の奈良の魅力を詳しく紹介している。


木材関連産業(集成材・外材)

林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2017年第3四半期(7~9月)の供給量は、構造用集成材は56万㎥と前年同期比減少、米材丸太は70万㎥と前年同期比増加の見通し。

県内集成材業界は、概ね生産・出荷とも前年比横ばい圏内の動き。主原料である欧州産ラミナ(小径木の挽き板)の仕入れ値が上昇しているため、コスト上昇分を全て価格に転嫁することの難しい県内中小企業では、利益率が低下傾向にある。

足元ではハウスビルダーの受注が減少傾向にあるとの声が聞かれ、建材発注減少が見込まれる。昨年多かった大型公共工事関係の案件も減少し、東京五輪関連の動きもあまり聞かれなくなる等、業界全体の先行きは不透明な状況にある。

こうした中、昨年7月に「防火木材利用推進協議会」(大阪市)が設立された。県内企業も参加し、他社と連携して品質管理の徹底による防火木材への信頼度向上、利用促進に取り組む方針。

県内外材業界においては、概ね生産・出荷とも横ばい圏内の動き。アメリカの好景気でカナダ産材がアメリカに流れたり、船賃の上昇等から原材料価格が上昇する一方、販売価格への転嫁は進まず利益率の低下が見られる。県内外材メーカーにおいては、外材輸入価格の高止まり、輸入量減少等を受けて、国産材取扱いへのシフトを進める事業者もある。


繊維関連産業(靴下)

経済産業省が発表した「生産動態統計」によると、2017年3月の靴下(パンティストッキングを除く)生産数量は5,315千点と、前年同月(5,601千点)比5.1%減少。

冬から春にかけての天候不順の影響もあり売上は前年比減少。特に春物の売れ行きが悪かった。製品価格は一部の大手小売で値下げの動きもあり全般的に下げ傾向。一方原材料価格や生産コストは高止まっており利益率は厳しい。円安の影響で製品輸入数量は減少している。

メーカーの業況は二極化してきており、健康・スポーツ・美容などの用途特化型の高付加価値製品を手掛けたり、ネット等の直販ルートを開拓するなどしている企業は比較的好調を維持している。

奈良県靴下工業協同組合が立ち上げ今年3月に販売開始した産地共同ブランド「The Pair」が、4月中旬に千里阪急(大阪府豊中市)で初の百貨店催事出店。県内各メーカーの社長などが毎日交代で接客・商品説明を行い、販売面でも手応えを得た。関東の百貨店からのオファーもあり前向きに検討中。また同組合では今年度中に認定資格試験「靴下ソムリエ制度」の立ち上げも目指す。店頭とメーカーをつなぐ販売人材を育成するとともに、一般人も受験対象とする。The Pairと合わせて「奈良といえば靴下」とイメージされるように、産地からの情報発信に注力する方針。


プラスチック製品製造業

プラスチック製品製造業の業況は、総じて大きな変動はないものの、ナフサ価格の動向や人手不足を懸念材料とする声もある。中には堅調な業況を背景に、工場や社屋の新築・増築等、大型の設備投資を行う企業もあり、外注に頼っていた工程の内製化による納期の短縮や、生産管理へのIoT導入による事業の効率化等、生産性を高める積極的な動きもみられる。反面、昨年までの好調の反動から、今年は業況がやや停滞気味の企業もある。

ナフサ価格は年初来、上昇に転じていたが、足元では落ち着いており、原材料価格への影響も限定的とみられる。

一方、同業界の人手不足は深刻で、時給1,000円でパートタイマーの求人広告を出しても応募がないという企業もある。

なお、奈良県プラスチック成型協同組合では、今年も新たに外国人技能実習生35名を受け入れ、5月から組合員企業で技能実習を開始している。7月にはさらに10名程度を受け入れる予定。

また、同組合によると、ここ数年、事業承継を行った組合員企業が増えており、そうした企業では従業員のモラル向上や活性化に繋がっているという。「時局の変化を的確に捉えた設備投資や事業承継等、積極的に行動を起こす企業が、今後も商機を掴み、活路を見出していくであろう」としている。


建設業

国土交通省の建築動態統計により平成28年4月から平成29年3月までの1年間の県内の工事費予定額についてみると、民間工事は前年同期比11.6%のプラスだった。これに対して公共工事は同20.5%の減少となった。

原材料価格の状況をみると、生コンは高めだが鉄筋、鉄骨など鉄関連は横ばいで、比較的安定して推移している。

今後についても公共工事、民間工事とも大きな動きはなさそうだが、橋梁の補修工事に少し動きが出てきており、これからの増加が予想される。

国が進める社会保険の適正加入については、猶予期間が終了し平成29年4月から「特段の理由」がない限り、社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金保険、国民年金)に未加入の労働者は現場入場を認めるべきでないとされた。さらに元受け業者も未加入業者を下請けに選定してはいけないとされている。違反にはペナルティが課せられることもあるため、各社とも選定には慎重さが求められる。建設業界は、他産業に比べ労働者の高齢化が進んでおり、若年労働者の割合が低い。そういった中、今後、「職人の頭数は揃っているが、社会保険未加入により下請事業者として採用できない」ことが懸念される。