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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると9月の奈良県の百貨店・スーパー額(全店ベース、速報)は、前年同月比7.4%増加(近畿合計:13.7%増)と前年を上回った。

商品別内訳をみると、飲食料品は1.0%減少(同0.4%増)と前年を下回ったものの、身の回り品が36.8%増加(同36.6%増)、衣料品が14.2%増加(同22.9%増)と前年を上回った。

次に9月、10月の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、消費税引き上げに伴う駆け込みの動きは、9月中旬まではあまり目立たなかったが、酒類や化粧品、宝飾・美術品など高級品が終盤にかけて増加。ただ、前回(2014年)の増税前と比較して、その規模は小さいものとなった。多くの店舗が前年同月比で増加したが、「昨年は台風の影響で臨時休業や営業時間を短縮していたことや、消費マインドの冷え込みなどがあったため、その反動増もあるのではないか」と話す店舗もあった。10月の売上げは前年同月比減となった店舗が多かったが、想定内の範囲で収まった。キャッシュレス・消費者還元事業により、全体的にキャッシュレス決済の利用者は増加。中には、カード利用率を9%(8月)から45%(10月)に伸ばした店舗もあった。一方で、インバウンド消費は減少傾向。税関の取締り強化などにより「爆買い」がなくなったことや、韓国人を始めアジア系観光客の減少が影響している。

今後は、クリスマスや歳暮、年末年始グッズ、おせち、福袋などの商戦が続く。ある店舗では、「最近は消費者が求めるモノや価値観が多様化し、顧客ニーズをとらえ、他社との差別化を図る必要がある。従来のままの営業体制では生き残れない」と話す。食品ロスの現状や食品ロスを減らすための自社の取り組みを紹介するなど、消費者に学びの場を提供して、独自の特色を打ち出す店舗も出て来た。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、9月が前年同月比0.8ポイント上昇の71.8%、10月は同6.8ポイント低下の73.7%であった。宿泊人数は9月が前年同月比2.5%増の43,698人、10月は同6.2%減の48,774人となった。

9月は昨年の台風の影響で大きく落ち込んだために前年比ではやや増加したが、平年よりは少ない結果となった。10月は東日本を襲った台風による旅行者の減少により稼働率は前年同月比減少だった。他にも、韓国人旅行者の減少により大阪での価格競争が激化し宿泊者の流出という形で県内にも波及した。中国人旅行者を中心にインバウンドの増加は続く一方、奈良を始めとし大阪、京都でも開業ラッシュの状態となっていることから関西一円での競争激化の流れは続くと思われる。

奈良独自の特色を出して安値競争に巻き込まれない誘客戦略をとる施設もある一方で、冬季の閑散期は集客イベントが少なく厳しい状況となる。奈良市内ホテルでは12月に開催される奈良マラソンの宿泊効果に期待する声もあり、冬季集客のためのコンテンツ充実が期待される。

また、雇用情勢もタイトな中、2019年4月に創設された新たな在留資格「特定技能」について観光庁や業界団体が主催する外国人雇用のためのセミナーが開催されている。セミナー等を通じて外国人採用への対応を検討する動きもある。


木材関連産業(外材・集成材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2019年9月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比8.2%減少し、3か月連続の減少。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2020年第1四半期(1~3月)の需給は、輸入丸太及び構造用集成材は、前年同期に比べ減少する見通し。

県内集成材業界の業況は、年当初に期待されていた消費増税前の駆け込み需要は感じられず、ほぼ平年通りで推移。原材料であるラミナの現地価格の低下や、製品価格の基準となる欧州製品の価格が下落したことで製品価格への値下げ圧力が働き足元では売上高が低下。原材料価格の低下が仕入価格に反映されるまでに時間差があるため、一時的に採算が悪化し利益減少。ただ、しばらくすれば仕入価格も低下して改善に向かうとみられる。

県内外材業界の業況はやや低調。安価な国産材が供給される中、住宅用構造材としての外材使用量は減少傾向。米材の産地価格は値下がり傾向にあるものの、構造材では製品価格値下げの影響が波及しており価格低下圧力が高まっている。

近年、持続可能性について社会の関心が高まっている。木材業界においても、製品の機能価値向上に加え、市場や顧客のニーズ変化を踏まえた環境、社会価値の向上に取り組むことが、中長期的に企業価値を向上させると考えられる。


繊維関連産業(靴下・パンスト等)

経済産業省「生産動態統計」によると、2019年7月~9月の靴下(パンスト除く)生産数量は14,314千点と前年同期比3.1%減。パンスト生産数量は25,167千点と同7.9%減だった。

昨年の暖冬による冬物在庫のだぶつきのため今冬も荷動きは鈍い。とくにパンストは国産の安価な汎用商品は全国的に非常に厳しい状況。そうした中でも医療、健康・美容、スポーツなどに特化した機能性商品の荷動きは靴下・パンストとも堅調。ただし医療用は販路が特殊なので、販売パートナーの選定が重要となる。

様々なコストが上昇しているが、中でも物流費と最低賃金の上昇の影響は大きい。10月の消費増税については県内産地では「荷動きへの影響はあまり感じない」との声が多い。

9月末にジェトロ奈良主催の欧州市場視察ミッションがパリで実施。現地では県産靴下に興味を持つバイヤーも多く、来年2月にパリのバイヤーを奈良に招いて商談会を開催する予定。

9月に実施された第3回靴下ソムリエ資格認定試験は361人が受験し121人が合格。受験者はメーカー関係者だけでなく流通・小売関係者も増えてきており資格の裾野が広がっている。

日本一の靴下産地にも関わらず地元企業の商品を買える場所がこれまで県内にほとんどなかったが、一部メーカーで直営店開設の動きがある。


建設業

国土交通省の建築着工統計調査により2018年10月から2019年9月迄の1年間の県内の工事費予定額を見ると、全体の予定額は1,803億円で、民間工事は前年比5.4%の減少、公共工事も同23.6%の減少となった。なお、民間の建築物の棟数は前年比5.2%減、床面積は9.9%減となっている。

公共工事は京奈和自動車の大和御所道路(橿原高田IC以北)、大和北道路(郡山下ツ道JCT以北)、五條新宮道路(国道168号線)等の道路整備の他、国土強靭化計画に伴う防災関連の土木工事が継続して順次発注されている。一方、民間工事についてはインバウンドの増加に伴う大阪でのホテル建設需要が好調な半面、県内の建設需要は相対的に低調であり、県内建設事業者には他府県の建設工事を積極的に受託する動きが見られる。

建築資材価格については東京五輪などの内需だけでなく、新興国での建設需要など外需の影響もあり、現在は高水準で推移している。

県内建設業では大卒の技術者など若手人材の確保が大きな課題となっている他、左官業などの熟練工の高齢化も進んでいる。一方、絶対数は少ないが、技術者・職人共に女性の就労者が増加している。女性専用の更衣室やトイレを建設現場に整備する必要はあるが、整理整頓や身だしなみ等、現場の労働環境に対する従業者の意識が向上しているという。


機械関連産業

内閣府「機械受注統計」によると、全国の2019年9月の機械受注は、「工作機械」が前年同月比37.7%減少で13か月連続の減少。「電子・通信機械」は同2.6%減少で2か月ぶりの減少。「産業機械」は同11.2%減少で6か月連続の減少となった。

「奈良県鉱工業指数」(2015年=100:注)で奈良県の2019年9月の機械の生産指数(原指数)をみると、一般機械工業は前年同月比21.9%減の85.5、電気機械工業は同10.6%増の31.3、輸送機械工業は同9.2%減の96.3だった。

*注:抽出調査のため生産量全体の増減を示すものではない。

奈良県内の企業の動きをみると、米中貿易摩擦などの影響もあり海外取引が多い企業を中心に生産・出荷および売上が前年同期比で大きく減少になっている。底ばいの見通しを持つ企業が多く当面は回復の材料は乏しい。

製品価格は取引先からの値下げ要求により低下傾向は続くが、業務効率化や生産性向上、新製品開発などの取組みにより利益率の維持に努めている企業もある。

原材料価格は落ち着いた状態になっているが、仕入先から人件費の上昇圧力と思われる値上げ要請が散見される模様。

人材採用状況は県内でもタイトで、福利厚生面の充実は最低条件との声が聞かれる。