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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると5月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比1.1%減少(近畿合計:0.4%増)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、衣料品が1.9%減少(同0.8%減)、身の回り品が0.4%増加(同1.1%減)、飲食料品が0.7%減少(同0.1%増)であった。

次に5月、6月の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、5月初旬は気温上昇に伴う夏物需要の押し上げが一部あったが、以降は例年より気温が上がらず、夏物衣料や身の回り品(帽子や日傘、UV用手袋など)の販売が落ち込んでいる。
「改元による祝賀ムードや10連休といった長期休暇が消費意欲を喚起し、やや高級な雑貨の販売が伸びるなど全体的に好調だったが、その後の日常生活で節約志向に切り替えたのではないか」という声もあった。

都市部の百貨店ではインバウンドによる免税品売上高が増加しているようだが、県内の一部の店舗では前年を下回る結果となった。「爆買い」は収束しつつあることからも、インバウンド消費だけに頼らない新たな魅力づくりで集客力を高める取り組みが求められている。

ネット通販が台頭するなか、各店舗はリアル店舗としての価値を高める工夫をしている。ある店舗では地域共創型を目指し、「奈良にはまだ知られていない“名品”がたくさんある。地元企業として、奈良で頑張っている企業を応援し、奈良県のよいものを一緒に発信していきたい」と話す。また、高齢者などの買い物困難者を支援するため移動スーパー事業を展開している店舗もある。個人宅に訪問販売することで、商品を実際に見て買う買い物本来の楽しみや、ドライバーや近所の人と会話する機会の創出として喜ばれている。地域の見守り役として貢献し、行政からも注目されているようだ。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、5月が前年同月比0.5ポイント低下の79.6%、6月は同6.2ポイント上昇の76.4%であった。宿泊人数は5月が前年同月比0.6%減の57,150人、6月は同14.0%増の51,137人となった。6月は前年の大阪北部地震からの回復とみられる。

4月から5月にかけての宿泊動向は10連休期間への集中でトータル宿泊者数は前年比大きく変わらない結果であった。また、ホテルの宴会需要においては例年連休前後でも一定の法人・団体関連の会合などが開催されるが、本年は10連休の影響を避けてか会合そのものの数が少なかった。

インバウンド関連では引き続き中国の割合が高く宿泊需要は根強い。上海など沿岸地域から徐々に内陸部にも国外旅行の習慣が広がっているようで今後も中国人観光客の動向は注目である。

観光庁による2019年度観光白書では、訪日外国人旅行者による地方での四季体験(花見、紅葉等)や自然・景観地観光などの「コト消費」への関心が高まっており、消費額も増加している。奈良県は日本人も含めた旅行者に占める訪日外国人の割合が16.8%と全国で8番目の高さとなった。また、レンタカー関連の雇用増加率が全国で最も高く前年比89%増となっており、県内の神社仏閣などを巡るのにレンタカーを利用するスタイルが増えていると考えられる。


乗用車販売店

奈良運輸支局及び奈良県軽自動車協会によると、奈良県内の2019年6月の乗用車新車販売台数(普通+小型+軽)は3,934台(前年同月比0.5%増)で、3か月連続で前年を上回った。

内訳を見ると、普通車+小型車が2,448台(同2.3%減)で3か月ぶりの減少。軽自動車が1,486台(同5.6%増)で3か月連続の増加となった。19年1~6月の累計では、普通車+小型車が15,146台(前年同期比0.3%増)で、軽自動車が9,255台(同0.2%増)であった。

2019年の県内新車販売はほぼ前年並みで推移しており、今年10月の消費増税前の駆け込み需要は現時点ではほとんど発生していない模様だが、8月以降に若干の駆け込みを予想する声も一部にある。なお今回の消費増税では同時に自動車税制の変更も実施されるため、各社では顧客向けの説明資料を作成するなど、丁寧な対応を行っている。

今年6月に(株)ホンダネットナラが京都府南部を地盤とする(株)ホンダプリモピットインと県境をまたいで経営統合し、(株)ホンダネット京奈に社名変更。同じく6月にトヨタ自動車が2022~25年頃を目途としていた「全販売店全車種併売化」を2020年5月に前倒しすることを発表するなど、自動車産業を取り巻く環境変化は激しい。各社はそれぞれ地域や顧客との関係を強化し、地域に必要とされる企業になることを目指している。


家電大型専門店

経済産業省「商業動態統計月報(5月確報)」によれば、2019年5月の奈良県の家電大型専門店販売額は前年同月比9.5%増の3,612百万円。店舗数は前年より1か店減少し、36か店(前月同様)となった。

10連休の大型連休の影響を受けて、祝日1日当たりの来店客数は前年より増加した。5月後半には35度を超える猛暑日を記録し、エアコン、冷蔵庫などの季節商品の需要が伸びた。しかし、その後は気温が低下し雨天が多かったことから、売上げは低迷している。

一方で、AV家電については大型テレビが好調。有機EL、4K対応等の高機能商品の価格が下落したことが消費者の購買意欲を後押ししている。2011年の地上デジタル放送への完全移行から10年近くが経過し、買い替え時期を迎えることに加え、10月に控える消費増税の駆け込み購買や東京オリンピック開催に向けた需要が見込まれる。

カメラ類についてはデジタルカメラが横ばいであるのに対し、ウェアラブルビデオが人気。奈良県の売上げは全国平均を上回った。

家電市場の成長期待が薄れているとの声もあるなか、「今後は、家電製品を売るだけのビジネスモデルではなく、家電製品の魅力を感じてもらえるよう売り方や店舗構成を工夫していく」とする店舗もあった。


プラスチック製品製造業

米中貿易摩擦の影響により国内景気に減速感が漂うものの、県内プラスチック業界は全般的に堅調な業況を維持している。今後、家計における消費マインドの低下が日用品等の買い控えに波及すれば、業況が悪化する懸念はあるが、むしろ東京オリンピック関連の建設需要の落ち込みを懸念する声も聞かれる。

一方、国産化粧品の海外需要が高まる中、化粧品の容器メーカーでは引き続き受注が旺盛となっており、自社で生産が追いつかない分を協力会社への外注により対応している状況。

合成樹脂の原材料である国産ナフサ価格は、年末から年初にかけて一旦下落したものの、中東リスクの高まり等を受け、再び上昇基調にある。

同業界では人手不足が最重要課題であり、取引拡充に向けた自社PRだけでなく、人材確保の観点からも企業イメージの向上が重要と考え、社屋の改築・美装化を行う企業もある。

脱プラスチック問題については、生分解性プラスチックやバイオプラスチックが依然として高コストであり、当面は普及する見込みがないことから、喫緊の課題としては捉えられていない。他方、金属などの工業材料の代替素材として期待される軽量・高強度の新素材、セルロースナノファイバーの研究開発に、大学や他社と連携して取り組んでいる企業もある。


建設業

国土交通省の建築着工統計調査により2018年6月から2019年5月迄の1年間の県内の工事費予定額を見ると、全体の予定額は1,804億円で、民間工事は前年比11.9%の減少。公共工事は同88.7%の増加となった。なお、民間の建築物の棟数は前年比2.3%減、床面積は7.2%減となっている。

建設資材の価格上昇は概ね落ち着きつつあるが、鉄骨造の建設で使用するハイテンションボルト(高力ボルト)の調達難が続いており、賃貸マンションやテナントビルの工期遅延、建設受注の可否の判断が難しくなるなどの影響が出ている。

人材面では建設現場において若手職人が定着せず高齢化が進む中、県内でも外国人材の存在感が徐々に高まっている。

県内公共工事は、京奈和自動車道関連(橿原市、大和郡山市)の発注が当面続く見通し。公共施設の耐震補強・建替え関連では、県立高等学校については概ね終了したが、代わって県内自治体の庁舎建替え事業が本格化しているほか、小・中学校等の義務教育一貫化に伴う新校舎の建設案件も複数自治体で進められている。

民間工事については、大和西大寺駅周辺等でマンション建設が複数案件進行している。大規模ニュータウンの戸建て住宅等に住む高齢者の一部で、駅に近く利便性の高いマンションへの転居ニーズが広がっていることなども建設需要の背景にあるとみられる。