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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると3月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比0.0%減少(近畿合計:0.2%増)と前年並み。

商品別内訳をみると、飲食料品は1.5%増加(同0.5%増)と前年を上回ったものの、身の回り品が1.6%減少(同0.9%減)、衣料品が5.4%減少(同2.1%減)と前年を下回った。

3月、4月の県内百貨店・スーパーにおける状況は、全般的に売上げは低下。特に衣料品では気温が上がらずセーター、ブラウスなどの春物が前年割れとなった。食料品については、肉、鮮魚、野菜において各店舗の強みを活かし、産地直送品の紹介やPOPを利用した商品案内、こまめな店舗改装など消費者のニーズに応えるため様々な工夫を凝らしている。

「SDGs(持続可能な開発目標)」の一環として、食品廃棄ロスの問題に積極的に取り組んでいる店舗がある。恵方巻の廃棄でも話題になったが、季節商品だけでなく年間を通して「もったいない」の意識を消費者にも持ってもらえるよう呼びかけている。ある店舗では、仕入れ量を減らしたり、調理の頻度を抑えるなど廃棄ゼロを目指している。「営業時間内に完売してしまっても、顧客からのクレームはない。食料廃棄問題への関心は高まっているのではないか」という声もあった。また、プラスチックゴミの削減を強化している店舗もある。商品面・暮らし面の双方から取り組んでおり、店頭での回収サービスは定着しているという。

高齢化が進む地域では、①購入した商品を自宅まで配達する、②電話で注文し店舗側が買い物を代行する、③移動店舗などのサービスが人気。特に移動店舗は、地域の身近な交流の場として好評を得ている。しかし、運送スタッフや若い世代のアルバイトが不足しているなど、どの店舗でも人手不足は深刻な状況にある。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、3月が前年同月比3.4ポイント上昇の81.4%、4月は同2.6ポイント低下の83.6%であった。宿泊人数は3月が前年同月比4.0%増の56,065人、4月は同0.8%減の57,526人となった。

本年の大型連休は初の10連休となり、宿泊者数は連休半ばまでは好調であった。ただ、4月前半や連休終盤など連休前後の期間では出足が鈍くなり、10連休期間への集中傾向でトータル宿泊者数は前年と大きく変わらない結果だった。

平成30年通年の全国延べ宿泊者数は前年比横ばい(0.1%減)の中、奈良県の延べ宿泊者数は、前年に比べ13.7%減少の約229万人と全都道府県の中で最大の落ち込みとなった(観光庁「宿泊旅行統計調査平成30年・年間値(速報値)」。

奈良市ではここ数年客室の供給が増えており既存店と低価格のビジネスモデルで集客を図る新規開業店の競争が激しい。特にオンライン予約の広がりから宿泊単価は下落傾向にある。

県は4月26日に今年度の「奈良県観光キャンペーン」として東塔大修理落慶法要が来年に予定される「薬師寺」、最初の元号である「大化」誕生の地や令和にちなんだ「万葉集のふるさと」などのキャンペーンを発表した。各ホテルも集客のための個性的な企画を行い集客を図っているが、宿泊者数増加の取組みは引き続き課題となっている。


木材関連産業(集成材・外材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2019年3月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比4.3%増加し、2か月連続の増加。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2019年第3四半期(7~9月)の需給は、輸入丸太及び構造用集成材は、前年同期に比べ減少する見通し。

県内集成材業界の業況は全般に低調。欧州産ラミナの現地価格が下落し、EUとのEPA(経済連携協定)による輸入関税引き下げや円高ユーロ安も相まって、原材料コストは低下。しかし、プライスリーダーである大手メーカーが製品価格の値下げに踏み切った結果、各社がこれに追随して製品を値下げ。現時点ではまだ余力があるとはいえ、やがて来る原材料価格の上昇局面で、どの程度製品価格に転嫁できるかに各社は頭を悩ませている。

県内外材業界の業況も同様に低調。国産材の価格低下により、外材全般の輸入量は減少傾向。産地価格は値下がり傾向にある中、価格低下圧力が高まっている。

本年10月に消費税の10%への増税が予定されている割に、住宅の駆け込み需要を感じないとの声が聞かれる。政府の消費増税対策が奏功しているのか、単に住宅投資が低調であるのかは不明であり、引き続き注視が必要である。


繊維関連産業(靴下)

経済産業省「生産動態統計」によると、2019年2月の靴下(パンスト除く)生産数量は4,550千点と、前年同月(4,528千点)比0.5%増加。2018年暦年では57,735千点と前年比7.8%減少。

今冬は暖冬の影響で荷動きが悪化。原材料価格、輸送代、人件費など様々なコストが上昇しており、衣料品全体のデフレ圧力も相まって価格転嫁は難しい状況。利益率も引き続き厳しく、今年10月の消費増税時に価格引き上げが行えないとさらに厳しい状況が予想される。

県内業界に多いOEM生産を取り巻く環境は厳しさを増している。特にアパレル系企業のOEMは減少傾向にあり、スーパーや小売チェーンなど流通系企業のOEMにウエイトが移行。自社ブランドの推進や医療用靴下の開発など、付加価値向上に向けた積極的な取り組みも一部に見られる。奈良県が進める県内産品海外プロモ事業と連携し、今秋に欧州でのPRに取り組む県内企業もある。

今年9月実施予定の第3回靴下ソムリエ資格認定試験は、受験対策公開講座・認定試験のいずれも、前回までの奈良・東京会場に加え今回は大阪でも開催し、取り組みの拡大を図る。

奈良県靴下工業協同組合の産地共同ブランド「The Pair(ザ ペア)」は、百貨店での催事販売を中心に固定客を増やしているが、更なる売上拡大や認知度向上に向け都市部に販売拠点の設置を模索中。


プラスチック製品製造業

県内プラスチック業界は全般に堅調な業況を維持しており、工場の新設・増設を検討している企業も一部にみられる。

原材料の仕入価格は依然高水準にあり、人件費、輸送費、包装副資材など、諸経費の上昇も続いていることから、企業の利益を圧迫している。また、米国のトランプ政権によるイラン産原油の禁輸制裁により、原油価格の上昇やナフサ価格への波及が懸念されている。

運送事業者におけるドライバー不足の影響も顕在化している。製品を運送事業者の混載便で発送する際に、1台のトラックに積載しきれない場合、以前は運送事業者がトラックを増便することによりすべての荷物を引き取っていたが、最近は積載できる分しか引き取らないケースがある。

今年は例年よりゴールデンウイークが長く、生産が連休前後の一時期に集中したり、短期的に売上が減少したり、運送事業者の手配が難航したりするなどの影響もあったとみられる。

奈良県プラスチック成型協同組合では、今年4月に入国した外国人技能実習生、中国人6名、ベトナム人約20名の研修が行われた。実習期間が5年に延長されたため、同組合を通じて組合員企業が受け入れている技能実習生は、今年中に200名を超える見込み。また受入れ実績はないが、今後の受入れを検討している企業も一部でみられる。


製薬業

最近の県内企業の状況は、総じて横ばいに推移しているが、個別企業の動きをみると、廃業にいたるケースが散見される一方、OEM(相手先ブランド)による一般医薬品の製造が好調なため増収を続ける企業もみられる。春の花粉飛散量が多く花粉症関連では繁忙となった。また、食品・化粧品メーカーなど医薬品専業メーカー以外の企業から医薬品の製造委託案件の引合いが継続的にでてきている模様。

自社販売では健康食品分野の展開を図る企業は多いが、販売はあまり伸びず、ネット販売も売上全体に占める割合はごく僅かにとどまっている。
海外への展開を行う企業もあり、現地の商社と提携を行い独自ブランドでの展開を図っている。

販売価格は薬価見直しにより下落傾向にある中、原材料価格の上昇傾向が続いており、概ね利益は減少傾向。昨年度後半に販路拡大の取組みとして製薬業協同組合主催の展示販売が奈良まほろば館(東京)で2回行われた。

設備投資に関して、新工場建設など大型の投資案件がある他、複数企業で工場拡張の計画がある模様。
【ご参考:現時点での最新データ】
「薬事工業生産動態統計」(厚生労働省)により奈良県の医薬品生産状況をみると、2018年7月から2018年12月迄の半年間の生産金額は245億円で、前年同期比36億9千万円増(17.8%増)となった(全国:同13.3%増)。内訳をみると、自社製造(106億円)は同7.3%増(全国:同4.6%減)、委託製造(138億円)は同27.2%増(全国:同40.2%増)となっており、委託製造のウエイトが56.7%と全国(49.3%)より高くなっている。