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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると1月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比0.0%(近畿合計:0.6%増)と前年と変わらなかった。

商品別内訳をみると、飲食料品が0.6%増加(同0.7%増)、身の回り品が8.6%増加(同2.7%増)したが、衣料品が5.2%減少(同2.8%減)と前年を下回った。

次に1月以降の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、飲食料品は、肉の売上が好調、野菜は天候不順の影響で単価が高騰していたが、3月に入り単価は平年並みに戻りつつあることから、販売量は回復の見込み。鮮魚は売上が伸び悩んでいる店舗が多い。朝に市場で仕入れた魚を、顧客の注文通りにさばくサービスを提供する店舗も見られる。

衣料品は、1月は前年比マイナスとなったが、2月は例年に比べ寒い日が続いたことで、冬物の売上が好調な店舗が多かった。3月に入り寒さが和らいできたことから、今後、春物の売上の増加に期待する店舗もあった。

「衣料品、食料品とも、高所得者層だけでなく、最近では30代から40代のファミリー層をはじめ幅広い層で、良いものには多少値段が高くてもお金を使う傾向が出てきているように思われる。個人消費に明るさが見えつつあるのでは」と考えている店舗もあった。

地元の学校の各種イベントに場所を提供することで、地域の身近な店舗として親しみを持ってもらうことや、ポイントカードを保有している顧客に、より多くポイントを付与する特売日を設けることで、固定客の囲い込みを図る店舗もある。また、インターネットを使った情報発信を強化することで来店誘致を図る店舗など、どの店舗も様々な方法で売上増に努めている。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、1月が前年同月比6.5ポイント低下の52.0%、2月は同3.9ポイント低下の63.5%であった。宿泊人数は1月が同14.4%減の33,514人、2月は同6.7%減の36,897人であった。

1月・2月の客室稼働率の低下及び宿泊人数の減少要因は、JR奈良駅周辺にホテル開業が相次いだことが一因と考えられる。

観光庁の「宿泊旅行統計調査(平成29年・年間値(速報値)」によると、平成29年の奈良県の延べ宿泊者数は2,396千人泊で、前年比5.0%減であった。一方で、平成29年に奈良県内に宿泊した外国人延べ宿泊者数は309千人泊(同庁同統計調査)で前年比0.4%増となった。

今年で創建1300年を迎える奈良の国宝・世界文化遺産である元興寺は、4月から12月にかけて記念法要や展覧会等を実施する。また元興寺の前身・法興寺があった明日香村と近鉄奈良駅南の「ならまち」で記念イベントが開催され、観光振興に彩りを添える。

記念法要は5月に明日香村の石舞台古墳、9月には元興寺で開催され、さらに5月に飛鳥寺周辺で1回、10月には元興寺周辺で3回、ウォーキングイベントが実施される。


木材関連産業(国産材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2018年1月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比0.3%減で、7か月連続の減少。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2018年第2四半期(4~6月)の需給は、国産材合板用丸太は前年同期比増加する一方、国産材製材用丸太は同減少の見通し。

県内製材メーカーの業況は、新築住宅向け建材需要が弱含みとなる中、地場工務店向けを中心として生産は低調。県内原木市場では雪の影響で出材ができず一部で市の開催が見送られ、供給の弱さからヒノキの良材等で価格は強含み。ただし、製材メーカーは製品価格への転嫁を行える環境になく、一部メーカーは設備投資による省力化でコスト削減を目指す。人手不足を背景として運送コストが上昇する中、配送効率の向上とコスト低減に向け、今後は運送業者との連携強化が求められる。

県農林部奈良の木ブランド課は、2017年11月1日(水)〜11月19日(日)に東京都・代官山蔦屋書店で<『奈良の木』のある暮らし〜森からの贈り物〜>を開催。多目的スペース内に奈良の木の空間が設けられた他、木工DIYのワークショップ、異分野の職人同士がコラボしたトークイベント、「吉野杉のバイオリン」演奏会等を通じて県産材の魅力を発信した。


繊維関連産業(パンスト・レッグウェア)

経済産業省が発表した「生産動態統計」によると、2017年7月~12月のパンティストッキングの生産数量は60,981千点と、前年同期(65,631千点)比7.1%減少。県内パンスト・レッグウェア業界全体の業況も低調気味だが、今冬は寒さが長く冬物の引き合いは堅調だった。しかし商品単価の安さによる低利益率の問題は引き続いている。高付加価値商品として医療用弾性ストッキングへの参入の動きもあり今後の量販拡大が期待される。

県内で生き残っている企業は技術力、設備、品質いずれも十分に備えているが、ネックは販路開拓。とくに最近人気の着圧ストッキングは消費者がブランドイメージで購入するため、広告を多く出している大手メーカーの製造受託ができないと自社ブランドでの参入は事実上困難である。

奈良県靴下工業協同組合では「靴下ソムリエ」合格者向けの第1回「奈良靴下産地ツーリズム」を18年2月に開催。アパレル、流通関係者などがふだん見ることのない製造現場(パンストおよび靴下)を見学し、参加者から好評を得た。

活発化する組合の様々な取組を通して、組合員同士の横のつながりが生まれ、パンスト・靴下の業界を越えた連携の動きなども生まれつつある。また産地内では独自ブランド立ち上げ検討の動きも散見され、ネックである販路開拓に向けて組合内での連携強化が今後さらに重要になろう。


プラスチック製品製造業

県内プラスチック業界の業況は、受注が旺盛で高水準を維持しているものの、住宅関連の商材が振るわないという声も一部で聞かれるなど、やや陰りが見られる。また、原材料の国産ナフサ価格が、一昨年夏の水準から4割程度上昇しており、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁が難しい県内企業にとって、懸念材料となっている。

人手の確保も厳しい状況が続いており、「毎年継続的に高校生2名を新卒採用してきたが、今春の新入社員は確保できなかった」という企業もある。一方、パートタイマーを採用できたことで、今年度の外国人技能実習生の受入れを止めた企業もある。要因は工場新設に伴い企業の魅力度が高まったこと等が考えられる。

奈良県プラスチック成型協同組合の組合員企業では、今年度も約50名の外国人技能実習生を受け入れる。同制度の実習期間は今年度から5年に延長されたことで、各企業の技能実習生は、2020年度には2年分の受入人数が増加することとなる。

また、来年秋に設立60周年の節目を迎える同組合は、これまで事業承継の促進に力を入れてきたが、今後の課題は、事業承継により世代交代した若い経営者を支える幹部層の養成と考えており、「次の10年に向けて、県内プラスチック製品製造業界全体のさらなる活性化を図りたい」としている。


製薬業

「薬事工業生産動態統計」(厚生労働省)により奈良県の医薬品生産状況をみると、2017年3月から8月までの半年間の生産金額は186億円で、前年同期比40億2千万円減(前年比17.8%減)となった(全国:同6.0%減)。内訳をみると、自社製造(88億円)は同10.7%減(全国:同3.0%減)、委託製造(98億円)は同23.2%減(全国:同10.3%減)となっており、委託製造のウエイトが52.9%と全国(38.9%)より高くなっている。

最近の県内企業の状況に大きな変化はない模様だが、個別にみると、OEM(相手先ブランド)を中心に売上げを伸ばしている企業や将来を見越して工場拡張など設備投資を行うところもある。ただし、総じて価格競争が厳しく収益率は低い。

業績が好調な企業では売り上げ増を背景に社員等の採用を増加させているが、通勤に関する地理的ハンディなどから地元からの採用が中心で大阪等の大都市からの雇用は少ない。また、十分なスキルを備えていることが魅力で大手メーカーを定年などで退職した人を採用する動きもみられる。

特殊技能を持つ薬剤師については慢性的に不足している企業が多くみられる。調剤薬局や大手企業へ流れているとみられ、県内企業では薬剤師の確保に躍起となっている。奈良県には薬学系の大学がなく企業と大学のパイプがあまり強くないことも影響しているものと思われる。

医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制が2017年1月に導入された。本税制の対象となる薬はあらかじめ決められているが、県内で製造する企業は少ない。導入以降の生産動向をみても生産増には結び付いていない状況。