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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると11月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比4.0%減少(近畿合計:2.4%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、衣料品が7.1%減少(同6.5%減)、身の回り品が12.0%減少(同1.1%増)、飲食料品が2.7%減少(同1.8%減)とすべての商品で前年を下回った。

当研究所のヒアリングによる11月、12月の県内百貨店・スーパーの状況は、平年より気温の高い日が続き冬物商品の伸びは低調だった。食料品は、高騰が続いていた野菜価格が落ち着いて客単価が下がったことに加え、気温が高く鍋物需要が振るわなかった影響で水産・畜産ともに不振となった。衣料品は、ニットなどの軽衣料は売れたものの、コートを中心とした単価の高い防寒衣料が苦戦した。

クリスマスケーキやおせち料理などの季節商品については、ネットによる事前申込みが主流となっている。「店頭の華やかさは若干控えめになるが、売れ残りなどによる廃棄ロスの軽減に繋がる」と話す店舗もある。

インバウンド(訪日外国人)による免税売上高は、化粧品や高級ブランド雑貨を中心に堅調。一方で、中国当局の免税品への規制強化を受け客単価は下がっている。バイヤーらしき客が大量に商品を購入するケースは減少傾向にあり、今後は個人消費へのアプローチが必要となる。
各店舗では、今年10月から導入される消費税の軽減税率に向け準備を進めている。イートインやテイクアウトによる違いだけでなく、飲料品や調味料でも成分が異なれば税率が変わるなど、細かな対応が求められる。また、クレジットカードの利用促進やPayPay(ペイペイ)・LINEペイなどのスマートフォン決済機能の導入、セルフレジの設置などキャッシュレス化への新たな仕組みづくりも検討されている。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、11月が前年同月比3.2ポイント低下の86.7%、12月は同0.6ポイント上昇の65.6%であった。宿泊人数は11月が前年同月比3.5%減の57,348人、12月は同1.8%増の45,764人となった。

9社の2018年4月~12月期の宿泊人数は466,760人となり前年同期(487,284人)と比較して4.2%の減少となった。

2017年度末の奈良県のホテルと旅館の客室数は計9,197室となり、前年度末に比べ507室増加したが、全国最下位であった(厚生労働省調査)。

同省によると奈良県内のホテル数は66で前年度末比3増加し、客室数も同549室増加した。旅館数は同2減少し、客室数も同42減少したが、ゲストハウスなど簡易宿所の施設数は同27増加の328と大きく伸びた。近畿2府4県でみるとホテルと旅館を合わせた客室の伸びは大阪(8,729室増)、京都(539室増)、兵庫(515室増)に続き4番目の増加となったが、上位との差は広がっている。

一方、奈良県宿泊統計調査によると、2017年の宿泊者数は前年比2.8%増の280万2,000人となり2年ぶりに前年を上回った。また外国人宿泊者数は5.4%増の33万4,000人と過去最高となり、好調なインバウンドを裏付ける結果となった。引き続き観光客を増加させるために奈良の良さを感じてもらえる宿泊施設を整える努力が必要である。


乗用車販売店

奈良運輸支局及び奈良県軽自動車協会によると、奈良県内の2018年の乗用車新車販売台数(普通+小型+軽)は286台減・前年比0.6%減(全国は1.1%増)の45,685台で、2年ぶりに減少した。

内訳を見ると、普通車+小型車が同4.7%減(全国1.6%減)の28,663台で3年ぶりの減少。一方、軽自動車は同7.0%増(全国3.6%増)の17,022台と2年連続の増加で好調だったが、普通車+小型車の落ち込みを補いきれない形となった。

2019年度税制改正では、10月の消費税率引上げに伴う駆け込み需要対策として登録車(660cc超)の自動車税を減税する一方、軽自動車は据え置きとなった。税制改正の総合的な影響を見込むことは難しく各社様子見の状況。

SNS利活用には各社注力。LINEを介した入庫予約など省力化対策につなげる動きもある。

自動運転など高度化する自動車技術に対応した整備・車検制度の検討を国が進めている。それに対応するディーラー・整備工場の動きも2019年は活発化するだろう。

自動車産業を取り巻く環境変化が激しく中長期的な見通しを立てることが難しい中、各社、既存顧客との関係の深掘り、地域貢献取組の深耕など、足元を固める活動に注力している。


家電大型専門店

経済産業省「商業動態統計月報(11月確報)」によれば、2018年11月の奈良県の家電大型専門店販売額は前年比4.9%減の3,429百万円となった(店舗数は36か店と前年と同数)。前年割れとなった一つの要因に、前年同時期に発売されたiPhone X(アイフォーンテン)のような目玉商品に欠けたことが考えられる。また、例年よりも冷え込みが遅く、季節家電の動き出しが遅くなったことも挙げられる。

生活家電については、石油ファンヒーターが振るわなかったものの、エアコンは猛暑で連日工事待ちとなった昨夏以降も堅調に推移。その背景に、家屋の気密性の高まりで1部屋に1台エアコンを備える家庭が増えていることがある。また掃除機では、持ち運びやすいスティックタイプが人気で、キャニスター(車輪付き)タイプをメインで使う家庭の2台目需要を取り込んでいる。

情報家電については、eスポーツが注目される中、ゲーミングPCと呼ばれる高性能モデルのパソコンが人気を高めつつある。

AV家電については、BS(衛星)放送で4K・8K対応番組が放送開始されたこともあり、4K・8Kチューナーを内蔵した大画面テレビが売れ、購入単価を引き上げている。

家電大型専門店各社では、生活家電の即日配送や長期保証等の付加価値提供により、ネット専業店等との差別化を図っている。
※4Kはフルハイビジョンの4倍、8Kは16倍の解像度。


プラスチック製品製造業

県内プラスチック製品製造業は、既に今後2~3年分の受注の引き合いがあり、中にはボーナス支給額を増額する企業もあるなど、業況は概ね堅調とみられる。設備投資においても活発な動きがみられ、補助金を活用する企業もある。一方で、設備メーカーの人手不足により、発注から設置完了までに半年以上を要し、補助金申請の条件を満たせず設備投資を見送るケースもみられる。

11月以降、合成樹脂の原材料であるナフサ価格が下落しているが、国内合成樹脂メーカーの供給能力には限りがあり、また大阪万博の開催が決定し、東京五輪後も需給の逼迫が予想されることから、合成樹脂価格が追随して下落するか否か、引き続き動向を注視していく必要がある。

新卒者の人材確保は依然厳しい状況が続いており、技術者の育成を重視する企業では自社ホームページを刷新し、企業イメージの向上を図る動きもみられる。

また、先進的なモデルケースとして、IoTを導入し異なる成形設備のデータの連携・蓄積・活用に取り組む企業もある。今後はそのデータを自動化等に活用するためのAIの技術開発を担う高度人材が必要になると考えられるが、国内の高度人材不足が懸念される中、いずれは外国人に高度人材を求めることになるのではないか、との声もある。


建設業

国土交通省の建築着工統計調査により2017年12月から2018年11月迄の1年間の県内の工事費予定額を見ると、全体の予定額は1,945億円で、民間工事(全体の90.5%)は前年比1.2%の増加。公共工事は「(仮称)奈良県国際芸術家村」建設工事などの影響もあり同139.7%の増加となった。なお、民間の建築物の棟数は前年比1.3%減、床面積は0.6%増となっている。

原材料価格の変動について、鉄筋・鉄骨等鋼材は落ち着いているが、生コンとともにやや上昇傾向にある。合板パネルもやや上昇。

鉄骨関連の建設に不可欠なハイテンションボルト(高力ボルト)の納期が大幅に遅れており、補助金を活用する納期限定の民間工事や年度単位の公共工事への受注に支障を来している事業所も見受けられる。

人不足から民間工事の入札が不成立になるケースも散見される。また、公共工事でも工事現場に配置する有資格者の確保が困難なために、入札を見送らざるを得ない企業もある。

人材の確保および福利厚生の向上を目的に、2019年から5日連続の休暇取得制度の導入を予定している企業もある。

県内事業者は、2025年の大阪万博開催に向けて関西中心に建設需要が高まり、経済効果が奈良県にも波及してくることを期待している。一方、万博関連の工事が本格化すれば、原材料価格の上昇や、人手不足による労務単価の上昇も懸念される。