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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると7月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比1.9%減少(近畿合計:0.1%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、飲食料品が0.9%減少(同0.6%減)、身の回り品が1.8%減少(同0.9%増)、衣料品が4.3%減少(同2.7%減)と全て前年を下回った。

次に7月以降の県内百貨店・スーパーにおける状況をみると、飲食料品は、野菜、肉の売上はほぼ前年並みだが、鮮魚の売上が依然低調な店舗が多かった。

原因として、鮮魚の売上が下がっている一方で、焼き魚や揚げ物等魚を使った惣菜の売上が増加していることから、「鮮魚を料理することに慣れておらず、惣菜を購入した方が手軽であると考える人が多くなっているのでは」と分析し、惣菜により力を入れる店舗も見受けられた。

また、お盆は年々仏事が簡素化され、親戚等が集まって食事をするという習慣もなくなりつつあり、果物やお菓子などの飲食料品の売上が予想以上に落ち込んだという店舗もあった。

衣料品は、バーゲンセールを例年より前倒しで始めた店舗もあったが、売上は伸びなかった様子。

しかし、8月後半から暑さが和らいだことから、「秋物」が売れ始め、9月に入り回復の兆しがみられるという店舗もあった。また、「40代以上では、価格に関係なく気に入った商品があれば購入する客と価格重視で購入する客との二極化が鮮明になってきている」という店舗もあった。

消防署と連携し、9月9日の「救急の日」に啓発イベントを行ったり、今後地元の警察、市町村とタイアップしてイベント等を企画することで、参加者に「地域の店舗」として親しみを持ってもらい、来店誘致に結び付けようとする店舗もあり、それぞれが独自性を出すことで顧客獲得、囲い込みに注力している。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、7月が前年同月比6.4ポイント低下の71.9%[最も高いホテルは約80%]、8月は同0.7ポイント低下の84.2%[同約90%]。宿泊人数は7月が前年同月比9.9%減の47,917人、8月は同0.5%減の61,533人であった。客室稼働率は低下しているものの、8月は85%近くの客室稼働率を保ち、宿泊需要は旺盛であった。また宿泊客の単価は前年並みの所が多いが、一部ホテルでは柔軟な価格設定により、単価の増加につなげている。

夏の風物詩である「第19回なら燈花会」は、台風の影響で1日中止になったにもかかわらず、過去最多の97万人以上が訪れた。一昨年から国民の祝日(山の日)が増えたことも追い風となったようである。「なら燈花会の会」事務局では「来年は20周年を迎え、記念事業も考えたい」としている。

文化活動に親しんでいる人が集まり、発表や交流する国内最大級の文化の祭典である「第32回国民文化祭なら2017」と、障害のある人が芸術作品を発表・展示し、障害者の社会参加促進を目的とする「第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」が、9月1日~11月30日まで一体で開催されている。奈良県下の市町村で音楽、美術、伝統芸能など地域の特色を生かしたイベントが実施されており、文化の力で奈良を盛り上げている。


木材関連産業(国産材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2017年7月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比2.1%減で、19か月ぶりの減少。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2017年第4四半期(10~12月)の需要は、国産材製材用丸太は前年同期比横ばい(300万㎥)、同合板用丸太は前年同期比増加(96万㎥)の見通し。

全国的に国産材需要が低調となる中、県内原木市場においても厳しい状況が続いている。本年3月に行われた「木材まつり」では、ヒノキの良材が競り落とされる等で銘木は価格・材積とも前年を上回ったものの、その後は低調。工法の変化や和室の減少により、大黒柱や床柱といった役物需要は減少の一途をたどっている。

こうした中、県内の中小製材業は、取引先の多品種・小ロット・短納期ニーズに応えることで信頼関係を構築し、生き残りを図っている。新築需要の減少に応じ中古住宅向けの別注材に対応するメーカーでは、新築向けよりも多い加工工数の削減が課題となっている。

家具や工芸品等、新たな分野への需要開拓を図るメーカーもある。特に年輪幅が狭く揃った柾目の美しさでブランド力をもつ吉野材は、桶やぐい呑み等、優れた工芸品の素材として人気が高い。これらを製造する職人等との連携により、吉野材のもつ魅力のさらなる発信が期待される。


繊維関連産業(パンスト・レッグウェア)

経済産業省が発表した「生産動態統計」によると、2017年1月~6月のパンティストッキングの生産数量は66,530千点と、前年同期(69,218千点)比3.9%減少。県内パンスト・レッグウェア業界全体の業況も低調気味だが、そうした中でも着圧ストッキングは機能面の付加価値が人気を集め好調を維持。季節的な需要変動が少なく年間を通じて安定需要があることも同商品の長所。

着圧等の機能のない通常のパンスト・レッグウェアは、需要減少や製品の細分化で品番ごとの最低発注量が減少しており、採算を確保しづらい状況。このままでは物理的に生産維持が困難であり、今後発注元の大手も含めて何らかの生産体制見直しの動きがあるものと見込まれる。

最低賃金引き上げなどコスト上昇の一方で製品価格への転嫁は進んでおらず、工場レイアウト最適化、職員の多能工化、電力会社変更など、各社様々な効率化・コスト削減に取り組んでいる。

人手不足は県内業界でも問題でパート・正社員ともに採用が難しい。最近、厚生労働省から「ユースエール認定企業」(若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況などが優良な中小企業)に県内製造業第1号として認定された企業も業界内にあるが、人員確保に向けて、時間面での融通など多様な働き方を受け入れ、働きやすい環境整備に積極的に取り組む動きが業界各社で見られる。


プラスチック製品製造業

県内プラスチック製品製造業では、各社が多様な製品を扱うことで季節変動による落込みを緩和する取組みが進んだこともあり、今夏は、閑散期と呼ばれる程の業況の落ち込みは見られなかった。特に除草剤の需要が高く、除草剤用の容器メーカーでは、通常5月頃で終わっていた受注が、今年は7月頃まで続いた。

復調しているインバウンド消費も、シャンプーや化粧品用ボトルメーカーには追い風となっている。最近は訪日客による購入だけでなく、新興国向けの輸出が伸びていることも、活況の要因とみられる。新興国では日本製の商品への信頼度が高く、同じブランドでも現地生産の商品はあまり売れないという。

原材料価格は、国産ナフサ価格がやや下落し、落ち着いた推移となっている。一方、PET樹脂は、安価な中国産に対し、政府がダンピングを認定。9月から反ダンピング関税が課せられ、品薄状態に拍車が掛かっている。

人手不足は益々深刻で、生産設備面では余力があるのに人手が足りず注文を断らざるを得ないケースもあるなど、一部の企業で業況に悪影響が出ている。各社では人材採用のための自社のPR強化や検品作業の機械化の検討、生産管理へのIoTの試験導入等、人手不足を補う動きが見られる。


製薬業

「薬事工業生産動態統計」(厚生労働省)により奈良県の医薬品生産状況をみると、2016年7月から12月までの半年間の生産金額は220億円で、前年同期比30億2千万円減(前年比12.1%減)となった(全国:同4.2%減)。内訳をみると、自社製造(102億円)は同7.7%減(全国:同5.2%減)、委託製造(118億円)は同15.5%減(全国:同2.7%減)となっており、委託製造のウエイトが53.7%と全国(40.4%)より高くなっている。

最近の県内企業の状況は、総じて低調に推移している模様だが、個別企業をみると、売上げが伸びず廃業に追い込まれた企業がある一方で、OEM(相手先ブランド)による一般医薬品の製造が好調なため増収・増益を続ける企業もみられる。

好業績企業では人材が不足しており、新卒者を確保するため就活情報サイトへの登録を積極的に進めている。また、ある企業が新たな工場建設を発表したほか、それ以外にも複数の企業が工場の新設を計画しているという。

各社では価格競争による体力の消耗を避けるため「付加価値製品」の開発に注力しているものの、現段階で売上の増加に結び付くようなものは生まれていない。また、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の製造を新たに手掛ける動きもみられない。

医薬品業界ではバイオ医薬品(遺伝子組換え技術や細胞培養技術を用いて製造されたタンパク質を有効成分とする医薬品)が、がんなどに有効な新薬として今後の需要増が見込まれるが、高額な研究開発費や高い技術力が必要であるうえ、クロスコンタミネーション(製造過程での汚染)を防止できる厳格な製造体制の構築や専業の社員も必要であること等の理由から、県内企業では今のところ参入への動きはない。