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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると1月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比4.2%減少(近畿合計:3.4%減)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、衣料品が7.4%減少(同6.5%減)、身の回り品が10.5%減少(同4.9%減)、飲食料品が2.2%減少(同1.9%減)とすべての商品で前年を下回った。

2月の県内百貨店・スーパーの状況は、全般的に売上げは例年並みとなったが、「売上げは例年並みだが利益はやや減少している」と話す店舗もあり、堅調に推移しているとは言い難い状況。一方で、「来店者数は減少したが、客単価が増加したことにより売上げ増につながった」ケースもあった。

食料品は、好調な店舗とそうでない店舗でばらつきが見られ、特に惣菜で差が大きかった。精肉、鮮魚、野菜等生鮮物に力を入れている店舗は、仕入時の目利き力を重要視している。特に生鮮物は品質や量が気象条件に左右されるため、各部門に熟練した担当者が直接市場に出向く。本当に美味しい高品質な商品を仕入れ、販売することで他店との差別化を図っている。惣菜が人気な店舗は、店長や担当者が独自でメニューを考え、手間暇をかけた商品を打ち出している。

衣料品の冬物セールは、売れ行きが低迷したところで早々に切り上げ、春物商品を売り出し始めた。現在は、「安いから買う」という時代ではなく、全世代で「高くてもよい物を買う」傾向が強くなっている。

キャッシュレス化の動きを受けて、QRコード決済を導入した店舗もあった。クレジットカード利用客は客単価が大きいため各店舗とも利用割合を増やしたい意向。「世間の流れに乗り遅れないようにスマホ決済等の多様な決済方法について勉強が必要」と感じている店舗も多い。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、1月が前年同月比2.9ポイント上昇の55.0%、2月は同2.5ポイント低下の61.1%であった。宿泊人数は1月が前年同月比11.5%増の37,148人、2月は同0.01%増の36,908人となった。

1月は大和路に春を告げる恒例行事として有名な若草山の山焼きが行われたが、同じ時期に行われた大立山まつり(今年で4回目)は、愛称を「奈良ちとせ祝ぐ(ほぐ)寿ぐ(ほぐ)まつり」と名付け、礼服の再現と古代の宮中行事「御斎会(ごさいえ)」の紹介など奈良の深みを楽しめるお祭りだったとの声が多い。

大阪府東部を走るおおさか東線が3月16日に全線開業し、新大阪と奈良を結ぶ直通快速が1日に上下線各4本走っている。これまでJRを利用する場合、大阪駅での乗り換えが必要であったが開業後、新幹線を使う旅行者には世界遺産の東大寺やシカの奈良公園など人気の観光スポットの多い奈良を訪れやすくなっている。開通に合わせ各地で観光キャンペーンが展開されている。法隆寺では3月~4月の土日に特別法話を拝聴し周辺を巡るツアーを開催している。また春日大社は本殿を見学し庭園を鑑賞するツアーを5月に開催する。

一方で、今回のアクセス向上により今まで以上に日帰りしやすくなるため、奈良県内の宿泊を促す夜の観光の充実や宿泊施設の魅力向上等が課題となる。


木材関連産業(国産材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2019年1月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比2.2%減と、2か月ぶりの減少。また、林野庁「主要木材の需給見通し」によると、2019年第2四半期(4~6月)の需給は、国産材合板用丸太は前年同期比増加、国産材製材用丸太は同減少の見通し。

県内原木市場においては、2018年11月に奈良県で開催された全銘展(全国銘木展示大会)に良材が多く出品された結果、スギ・ヒノキ材とも単価が大きく前年を上回った。ただ、全銘展前後の売上は芳しくなく、また足元では、ひと頃価格低下に歯止めがかかりつつあったスギ材で再び価格が低迷している。県内の製材メーカーからは、足元の受注は堅調も、消費増税が予定される本年10月以降の納期分は弱含みとの声が聞かれる。

2019年3月、吉野貯木場で「よしの木(ウッド)フェス」が開催された。吉野貯木場の製材所で働く木の専門家がアテンドする無料のまち歩きツアーの他、吉野の木を使った小物づくりを教える木工教室や、吉野の木に関わる食を集めたマルシェなど、各種有料イベントも開催され、多くの人出でにぎわった。こうした人の流れは木のまち・吉野への関心の高さをうかがわせるものであり、タウンプロモーションと吉野材のブランディングが相乗効果を発揮し、地域の活性化につながることが期待される。


繊維関連産業(パンスト・レッグウェア)

経済産業省「生産動態統計」によると、2018年7月~12月のパンストの生産数量は56,969千点と、前年同期(60,981千点)比6.6%減少。暦年では2013年以降6年連続の減少となった。

ファッション用途のアイテムは売上が気候や流行に左右されるうえ価格選考も強く、安価な輸入品に対抗するのは難しい。一方で着圧機能や医療用途など機能面を売りにした商品は、その付加価値によって売上は安定し利益率も確保しやすい。

原材料費や人件費が上昇しているがすぐに販売価格へ転嫁することは難しく、しばらくは各社でコストを吸収せざるをえない。10月予定の消費増税については、食料品のような生活必需品ではないため売上低下の可能性を指摘する声もある。

人手不足の影響は本業界でも問題で、就業環境の改善や従業員処遇の向上に地道に取り組み、公的認定を受けるなどしてそれを外部へ発信することで、働き手の確保や定着に各社努力している。

そうした人手不足や廃業等による産地のサプライチェーンの弱体化をカバーするため、企業間の横の連携を重視する動きも出てきている。繁忙期の業務の融通だけでなく、分業体制の構築や共同での商品開発等に取り組むなどの例も見られる。

自社ブランド立ち上げ模索の動きも引き続き散見され、各社それぞれに利益率向上に向けた努力を続けることで産地としての生き残りを図る。


プラスチック製品製造業

マスコミでは中国の景気失速の影響が国内経済に波及していると報道されているが、県内プラスチック製品製造業では、生産発注の引き合いが減少したとの声は特に聞かれず、業況は全般に堅調を維持している。また、1月に施行された中国の新EC法(中国電子商取引法)により、日本で購入した商品の中国国内での転売が規制され、訪日中国人による日本国内での消費が激減したと伝えられているが、洗剤やシャンプーなどの容器を成形している企業では、受注への影響は顕在化しておらず、もうしばらく様子を見る必要がある。

原材料については、昨年秋以降ナフサ価格が下落したことから、汎用性樹脂の仕入価格も低下しており、利益率は改善傾向にある。

来春卒業予定の学生を対象とした採用活動は、非常に厳しい状況となっており、毎年、新卒採用を確保できていた企業でも「インターンシップへのエントリーがない」などの声が聞かれる。

県内では人材を確保するため、外国人高度人材の受入れを検討する動きも一部で見られるが、待遇面等への不満から、採用に至っても1年足らずで転職してしまうケースも多いという。

また、4月施行の改正入国管理法では、プラスチック製品製造業は外国人材受入れの対象業種となっておらず、人材不足の打開策については、まだ先が見通せない状況にある。


機械関連産業

内閣府「機械受注統計」によると、全国の2019年1月の機械受注は、「工作機械」が5か月連続で前年同月比減少となり、1月は同23.8%減少。「電子・通信機械」も2か月連続で減少し、1月は同24.1%減少。「産業機械」は2か月ぶりに増加し、1月は同2.9%増加となった。

「奈良県鉱工業指数」(2010年=100:注)で奈良県の2019年1月の機械の生産指数(原指数)をみると、一般機械工業は前年同月比4.5%増の92.8、電気機械工業は同34.0%減の3.3、輸送機械工業は同7.7%減の100.6だった。

*注:抽出調査のため生産量全体の増減を示すものではない。

奈良県内の企業の動きをみると、米中貿易摩擦などの影響もあり海外取引が多い企業を中心に生産・出荷および売上が前年同期比やや減少になっている企業がある。一方、ある県内中堅企業では、中長期的な成長を見込み、新工場の建設に取り組んでいる。

原材料価格は昨年に値上がりした状態が継続中。製品価格は取引先からの値下げ要求により低下傾向にあるが、業務効率化や生産性向上などの取組みにより利益率の維持に努めている企業もある。

2019年4月より、全ての企業に「年5日の有給休暇の取得」が義務化されるが、人材不足等もあり、その達成に苦慮している企業も見受けられる。