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観光入込客数4千万人の目標よりも、「観光消費額単価のアップ」を目指そう!(2014年6月)
主席研究員 島田 清彦
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■目標「観光入込客数4,000万人」からの離脱を

奈良県では観光振興の目標として「観光入込客数4,000万人」(延数)が以前から掲げられている。奈良県の「主な政策集」(2010年2月)でも「2012年迄に4,000万人」とされていたが、同年実績は3,429万人であった。1999年以降の14年間で、平城遷都1300年祭を開催した2010年を除くと、3,600万人の水準を一度も超えたことが無いのが現実だ。

「4,000万人」の根拠・妥当性等はわからないが、観光振興の本来の目的を再確認し、異なる道を模索することも必要ではないだろうか。

■極端に低い奈良県の「日帰り観光消費額単価」

観光庁の「共通基準による観光入込客統計」によると、2012年の奈良県の観光入込客(*1)数(実数:日本人・観光目的)は18,700千人回(*2)で、全国(40都道県)第18位の規模となっている。このうち日帰りが全体の91.0%(県外居住者11,210千人、県内居住者5,800千人)を占めている。

*1:「観光入込客」は、統計上の用語で観光客とほぼ同義。
  *2:「人回」は観光入込客の1回の来訪を1人回と数える。

日帰りの観光消費額単価は、県外居住者が4,732円/人回(40都道県中36位:平均の約6割)、県内居住者が1,555円/人回(同最下位:同約4割)と全国より大きく見劣りする。また、奈良県の観光消費額960億円(2011年は1,040億円)のうち、県民の消費額は全体の15.3%〔40都道県:34.5%〕と少ない。

■「観光消費額単価のアップ」を目指そう!

観光消費額は「観光入込客数(実数)×観光消費額単価」に分解できる。当研究所の試算では、観光入込客数の9割を占める日帰りの単価を現行より30%アップ〔県外居住者1,420円増、県内居住者467円増〕出来れば、観光消費額は1.19倍になる。

観光入込客数4,000万人は2012年実績3,429万人の1.17倍であるが、観光消費額単価の30%アップで1.17倍の人員増とほぼ同じ効果を達成できる。同単価が低い原因(品揃え、店舗数、営業時間等)を把握し、その改善・解消を図る必要がある。

単価30%アップの実現に向けた取組みを、産学官連携の優先課題にしてはどうか。(島田清彦)

図1

図2