一般財団法人 南都経済研究所地域経済に確かな情報を提供します
文字サイズ

「日本の将来推計人口」結果から考える日本の課題(2017年6月)
事務局長・主席研究員 島田 清彦
PDF版はこちらからご覧いただけます。

■「日本の将来推計人口」結果のポイント

本年4月、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、2015年の国勢調査結果を基に予測した「日本の将来推計人口(2017年推計)」を公表した。推計結果の主なポイントは次のとおり。

・外国人を含む総人口1億2,709万人(2015年国勢調査)は、53年に1億人を割り、65年には3割減の8,808万人になると推計(最も可能性が高いケース「出生中位・死亡中位推計」:以下同様)。

・人口推計の前提となる合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)が足元で改善し〔前回1.35→今回1.44〕、5年前の試算に比べて1億人割れになる時期が5年遅くなった。

・2065年の出生数は56万人で15年からほぼ半減、同死亡数は156万人で15年の約1.2倍に増加。総人口は2020年で約50万人減り、40年頃には毎年100万人近く減っていく。

・働き手である生産年齢人口(15~64歳)は、足元の7,728万人から30年に6,875万人へと1割減少、 5年後の20年にかけても320万人減少する。40年時点で5,978万人と今より2割以上減り、65年に4,529万人へと4割減少。総人口に占める同割合は15年の60.8%から65年には51.4%に低下。

・65歳以上の高齢者人口は、15年の3,387万人から65年に3,381万人と横ばい〔ピークは42年の3,935万人〕。総人口に占める割合は同26.6%から65年に38.4%に上昇〔5人に2人が高齢者〕。

・平均寿命は、2015年の男性80.75年、女性86.98年から、2065年に84.95年、91.35年に伸長する。

・現在の日本は、20歳~64歳の人が2.1人で1人の高齢者を支える構造となっているが、少子高齢化の進展に伴い30年には1.7人で、65年には1.2人で高齢者1人を支える「肩車型」時代を迎える。


■同推計結果から考える日本の課題

内閣府の2014年の試算によると、人口減少が継続し、生産性が停滞した場合は、2040年代以降マイナス成長が見込まれる。一方、人口規模が1億人程度で安定化し、生産性が向上した場合は、実質GDPの1.5%以上の成長が期待できるとしている。

社人研は、今回の結果公表時に前提条件を変えた仮定の値として、(1)「合計特殊出生率が65年に1.80を維持している」又は(2)「外国人が毎年25万人増え続ける」と、65年でも1億人を割らないとの推計を公表。政府も「一億総活躍」に向けて希望出生率1.80の実現を掲げているが、具体策に欠け、実現の見込みは殆どない。また、移民政策が採用されていないため外国人の大幅増も期待できず、1億人の維持は困難と言える。

今回の推計では、総人口が1億人割れとなる時期が5年遅くなったが、人口減少と超高齢化の悪影響は不可避であり、少子化対策や社会保障制度改革、生産性向上策など抜本的な対策が求められる。

女性の労働参加の拡大に向け、保育や幼児教育の無償化、待機児童の解消などを推進するとともに、配偶者控除の見直しも必要だ。また高齢者の就労を増やすには、定年引き上げは避けて通れない。

企業は人手不足の深刻化に備え、生産性向上の為の投資を積極的に行い、事業の選択と集中を加速する必要がある。他社との業務連携による業務の効率化・コスト削減努力も有効だ。特に人工知能やビッグデータ、ロボット等の技術革新を加速し、その有効活用も積極的に図るべきである。

国連の「世界幸福度報告書2017」によると、155か国中、最も幸せな国はノルウェーで、上位5か国のうち4か国を北欧諸国が占め、日本は51位にとどまる。人口減少への取組みが、日本の幸福度の上昇につながることを期待したい。 (島田清彦)