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職場にあふれる「アンコンシャス・バイアス」に意識を向ける(2021年5月)
課長 主任研究員 八木 陽子
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■「アンコンシャス・バイアス」とは

「アンコンシャス・バイアス」という言葉をご存じでしょうか。「アンコンシャス(unconscious)=無意識」と「バイアス(bias)=偏見」の二つの単語から構成されるとおり、アンコンシャス・バイアスとは「無意識の偏見」や「根拠のない思い込み」を意味します。2013年、大手IT企業のGoogle社が多様性を尊重する上で組織にネガティブな影響を与える偏見を排除する取り組みとして、「アンコンシャス・バイアス」と名付けた社員教育活動を始めたことで有名になった言葉です。

アンコンシャス・バイアスは誰もが持っているもので、多くは過去の経験や周囲の意見、日々接する情報などから本人の自覚なしに形成されています。「出身地で、お酒が強いかどうか想像することがある」「『親が単身赴任中です』と聞くと、父親が単身赴任中だと思う」など思い当たることはありませんか。日常のいたるところにあるアンコンシャス・バイアスは、職場にもあふれているといわれています。例えば、「小さな子供がいる女性社員は、宿泊を伴う出張はできない」「育児休暇や時短勤務を選択する男性社員は、昇格に興味がない」「経験の浅い社員にはいいアイデアは出せない」などが挙げられます。

■アンコンシャス・バイアスへの気付きと対処

アンコンシャス・バイアスは「無意識」であるがゆえに、気付くのはなかなか困難です。しかし、自分の心の奥底にあるバイアスを認識することが、アンコンシャス・バイアスを乗り越える第一歩です。そこで、様々なアンコンシャス・バイアスの中から、職場の人間関係や仕事に影響する代表的な項目を紹介します(表1)。

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アンコンシャス・バイアスは、人間関係を悪化させたり、チームワークを阻害したり、場合によっては組織内の意思決定に影響を及ぼし、人や組織の成長機会を奪う可能性もあります。そのため、組織内でいかに無意識の偏見や思い込みが作用しているかに気付き、意識して対処していくことが必要です。

Google社では、アンコンシャス・バイアスを排除するために以下の4つの手法が採られており、全社的に教育活動を行っています。

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現在、多くの企業で職場における多様性の受け入れを推進しています。組織の多様化と聞けば、女性や外国人を増やせばいいのかと捉えられがちですが、重要なのはむしろあらゆる思い込みをなくすことかもしれません。無意識の偏見をなくせば、組織のパフォーマンスも上がるのではないでしょうか。