| 県内地元産業の現況 | |
近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売 状況」によると12月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比2.7%減少(近畿合計:1.3%減)と前年を下回った。
商品別内訳をみると、飲食料品は前年と比較して1.4%減少(同0.2%減)、衣料品が17.0%減少(同7.7%減)、身の回り品が10.6%減少(同5.1%減)。
2025年は訪日外国人が過去最高の4千万人を超え、大阪など都市部の百貨店では販売額が好調だった。しかし、2026年は訪日客の消費傾向の変化により、昨年末から都市部の百貨店でも売り上げが減少している。
12月、1月の県内百貨店・スーパーにおける状況は、長引く物価高の影響で消費者の節約志向が続く厳しい状況となっている。
ただ、この年末年始は、多くの来店客で賑わう店舗も見られた。特に食料品は、カニやイクラなどの高級食材の販売が増え、普段は節約しながらも家族の帰省のタイミングなどには高価格帯であってもお金を使うなど、節約と贅沢のメリハリをつける消費者が増えている。ある店舗では「消費者の節約志向は強いものの、長引く物価高に慣れてきた印象がある。節約疲れがあるようだ」と話す。
衣料品は、例年に比べて比較的暖かい日が多かったことから、冬物衣料品の売上げが伸びなかった。特に最近はオフィスカジュアルや身だしなみの基準を緩和する企業も増え、ビジネススーツやネクタイなどの関連商品の販売が減少している。 昨年に引き続き、人件費など費用の高騰による経費削減に取り組む店舗が増加している。「折込チラシは経費がかかるため、今後はSNSやアプリ会員の募集を強化することで集客数をあげていきたい」との声や「積極的にセルフレジを導入することで人手不足を解消し、デジタル化を進めていきたい」と話す店舗もある。
観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、県内宿泊施設における秋季(2025年9~11月)の稼働率は各月で前年を上回り、宿泊者数も3か月合計が前年比で増加した。また、奈良県観光局が直近公表した「宿泊統計調査」(2025年7月~9月期)では、奈良市内、明日香・橿原など多くの観光地で宿泊者数が前年比増加する一方、吉野山や十津川といった山間地・中山間地では前年比減少した。大阪・関西万博(以下、万博)の会場から近いエリアでは周遊観光に伴う宿泊者数増加が一部に見られたが、その他のエリアでは万博に宿泊需要が奪われるマイナスの影響が出たとの声がある。
冬季については、日本人は年末年始の日並びが良かったことから好調に推移したが、お水取りまでの期間の予約は一部施設を除き厳しい状況となっている。外国人は、台湾有事を巡る国会答弁を受けた中国政府の日本への渡航自粛要請の影響で中国からの旅行者は減少しているが、県内の宿泊者の国籍は近年多様化しており、深刻な影響を被っている施設は少ないようだ。
県内では本年も新たなラグジュアリーホテルの開業が予定されるなど、富裕層向けの施設は充実してきた。これらの施設は開業後総じて好調で、老舗ホテルにおいても大規模改装を実施するなど攻めの経営で将来の成長につなげる施設が見られる。一方で、足もとの持ち直し局面においても戦略的な設備投資を行う余力はまだなく、設備全般の老朽化により、新たに開業したホテルとの競合において苦戦を強いられている施設もある。
3月にはNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の舞台の一つとなる大和郡山市に大河ドラマ館がオープンする。宿泊施設からは3月の予約が例年に比べて好調との声もあり、早くも放映の効果が出てきているようだ。また、「飛鳥・藤原の宮都」の世界遺産登録への期待も大きく、県全域での観光の盛り上がりが期待できる1年になりそうだ。
国土交通省「住宅着工統計」によると、2025年7~12月期の木造住宅の新設着工戸数は住宅販売価格の高止まり等により前年同期比3.8%減少している。加えて人件費や物流費等の増加など、住宅関連産業にとって厳しい環境が続いている。
農林水産省「木材流通統計調査」によると、2026年1月の全国の国産材素材(丸太)の価格は、昨年1月と比べると、スギは変わらず、ヒノキは2.8%低下となった。木材製品価格は、スギが1.7%上昇、ヒノキも0.3%上昇となった。(※)
一方、県内原木市場における2025年7~12月期の取扱高(金額ベース)は、スギが前年同期比11.1%増、ヒノキが同9.9%減、原木合計では同1.0%減となっている。
専門家からは、「ヒノキは一昨年の特別市開催による取扱高増加要因が無くなって減少したものの、総じて原木需要は底堅い。以前は高級建築材を始め、ラミナ(集成材)用やベニヤ(合板)用の良質材しか売れず、パルプ(紙等)用の中質材やバイオ(発電)用の低質材は伐っても採算が取れなかったが、近年は材の使い分けが進み、あらゆる材質で伐採・搬出が成立するようになり、結果として原木量の取扱高が徐々に増加しているのではないか」という意見が聞かれた。
(※)「木材流通統計調査」2025年調査から、調査対象となる地域や工場等の見直しが行われた結果、2024年以前の統計数値と連続性に欠けるため、今回は昨年1月との単月で比較。
経済産業省「生産動態統計」によると、2025年10月~12月の靴下(パンスト除く)生産数量は9,182千点と前年同期比14.9%減少し、パンスト生産数量も7,876千点と同24.7%減少した。
靴下(パンストを除く)については、食料品などと比べて生活必需性が相対的に低いため、物価上昇に伴う節約志向の影響を受けやすく、需要は弱含みで推移している。その結果、生産数は減少傾向にある。加えて、県内の中規模事業者が2025年7月に事業を停止し、その後自己破産したことも、生産減少の一因となっている。
パンストについても、OEM生産を手掛けていた県外中規模事業者が2023年および2024年に相次いで倒産したほか、県外大手メーカーにおいても物流拠点の統合や生産子会社の操業停止、海外生産への移行など国内生産の合理化が進められている。その結果、OEM生産は価格競争力の高い海外製品へのシフトが一段と進み、生産数は大幅な減少が続いている。
現状、従来型のOEM生産に依存してきた事業者の収益環境は厳しさを増しており、倒産件数も増加傾向にある。また、倒産事業者が抱えていた案件は採算性の低いものが多く、その多くが大量生産に適した海外事業者へ移管されている。今後も付加価値の低いOEM生産を主力とする事業者を取り巻く事業環境は、厳しい状況が続く見通し。
プラスチック製品製造業は、自動車や電子部品、医療機器向けなどの高付加価値製品を扱う企業や取引先からのニーズが高い短納期・大ロット生産に対応可能な設備等を有する企業の受注は堅調に推移する一方、一般消費者向けのプラスチック容器や日用品雑貨など汎用性の高い製品を扱う企業は、消費者の節約志向や代替素材の普及、安価な海外製品との競合激化等で受注は伸び悩んでおり、企業間での業績格差の拡大が進んでいる。
原材料であるナフサの価格は落ち着いていたが、海外市場で需要が旺盛なことや円安の進行で足元の価格は上昇基調にある。賃上げに伴う人件費の上昇や光熱費、物流費などコスト全般の高止まりが続く中、価格転嫁交渉を進めることや機能性の充実、デザイン性の向上などにより付加価値の高い製品への転換による収益の拡大が課題となっている。
循環型経済(サーキュラーエコノミー)の普及を目指し、2026年4月に「改正資源有効利用促進法」が施行され、容器包装や自動車、家電製造事業者等に対し、再生資源の利用に関する計画の策定や定期的な報告の提出が義務付けられることになる。環境保全と経済成長との両立を図る循環型社会の実現に向けて、企業には廃棄物の適正処理や製品の回収・リサイクルなど環境への配慮がより一層求められる。
厚生労働省「薬事工業生産動態統計」によると、2025年6月~2025年11月累計の医薬品の生産金額の全国総計は前年同期比▲0.5%(うち受託+3.2%)、奈良県は+12.4%(うち受託▲2.4%)であった。
全国的には、生産は横ばいで推移するなか、受託は好調を維持している。
県内企業の動向については、季節性感染症の流行が例年より早まったこともあり、風邪薬や解熱剤などを中心に一般用医薬品の販売が好調である。なお、春にかけては花粉症関連商品の販売増加が見込まれる。
原材料価格の上昇は継続しているものの、上昇スピードは緩やかになりつつある。また、原材料価格上昇に伴う商品への価格転嫁は徐々に進んでおり、売上増加に寄与している。業界全体で人手不足感が強く、給与水準の引き上げや人材育成への取り組みなど、人材確保への対応を強化していくとの声も聞かれた。中小受託取引適正化法の施行により、今後は労務費等の上昇を踏まえた価格転嫁への取り組みが必要不可欠になるだろう。収益強化に向け自社ブランドの構築やプロモーション、オリジナル商品の開発に力を入れるなど、受託製造にとどまらず、差別化を図る動きもある。
ジェネリック医薬品は、依然として供給停止や限定出荷状態の品目が多く、先発医薬品へ回帰する動きも見られ、医療費の増加に繋がっている。ジェネリック医薬品大手各社は安定供給体制の構築に向けた取り組みを進めているが供給不足解消には時間がかかる見通し。医療費の増加やOTC類似薬の患者負担見直しなどを受け、今後更なるセルフメディケーションへの取り組みが強化されるとの話も聞かれた。
配置薬に関しては、原材料価格の高騰による販売価格の上昇や製造廃止が続き、売上は低迷している。人手不足や高齢化、後継者不足により廃業を余儀なくされる事業者も見られる。
奈良運輸支局及び奈良県軽自動車協会によると、奈良県内の2025年の乗用車新車登録台数(普通+小型+軽)は前年比1,461台増(+3.8%)の39,657台となり2年ぶりに増加した。
新車市場の動向は、2024年は業界内で発生した認証不正問題に伴う国内生産停止の影響で低調に推移したが、2025年はその反動増もあり持ち直しがみられた。トランプ関税の影響は国内販売に及ばず、物価上昇率も鈍化し始めていることから、消費者マインドは徐々に改善すると見込まれ、需要は今後も底堅く推移する見通しである。
中古車市場の動向は、コロナ禍収束後の在庫数が比較的安定し、販売数も概ね横ばいで推移している。一部新車で長納期化が解消されていないため、短納期を求める実需は堅調で、今後も安定した需要が期待できる。
EV車については、2026年1月以降に新車の新規登録を受ける車両に対して、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金が見直され、普通車の補助上限額は拡充されたが、補助金を加味しても価格は依然高く、普通車クラスのEV普及は厳しい状況。
国内ディーラーは、長期的な人口減少という構造的課題を除けば足元で大きく悪化する要因はなく、堅調な推移が見込まれる。一方、環境性能割が廃止されるスケジュールの前後で販売がぶれる可能性はあり、一定の先行き不透明さは残る状況。
道路貨物運送業は、物価高による個人消費の停滞により荷動きが鈍くなる中、下請先の中小事業者などで運賃値上げ交渉の進捗が芳しくないようだ。2025年11月からガソリン・軽油に対する補助金が段階的に引き上げられ、燃料価格は前年比で低下しているが、人件費や車両整備費の増加、さらにはコロナ禍で積み増した借入金の返済もあり中小企業者の資金繰りは厳しく、県内でも企業倒産が発生している。全国の大・中堅企業においては、2024年から実施された時間外労働規制の強化により、既存の体制で長距離輸送を行うことが困難となっている。これらの企業においては、その解決策として広域連携を模索する動きがあり、県外事業者が県内の中小事業者買収に向けた動きを活発化させているとの声がある。
道路旅客運送業は、大阪・関西万博の開催期間は県内居住者の会場への輸送や観光客の利用が好調に推移した。閉幕後は万博に携わったドライバーを空港リムジンバスの運行に配置換えするなど、インバウンドを含む観光客の移動手段の充実に取り組んでいる。乗合バス事業は観光客の利用が足もと好調であるが、住民の足としての利用は減少が続いており、特定のエリアで運賃無料DAYを設けるなど乗車機会を作ることでバスに親しんでもらうための地道な取り組みを行っている。
タクシーは、期間を通じて万博開催に伴う利用者の増加が顕著には見られなかったが、県内において昼の時間帯の利用者が冬季に入って好調との声がある。万博ついでではなく、奈良県をゆっくり観光する中でタクシー利用の増加につながっている可能性もあるようだ。燃料であるLPガスの価格は昨年より低下しており、経営面では比較的安定した状況となっている。新規採用も改善しているが、高齢ドライバーの退職が多い状況は当面続く見通しで、人員を確保し機会損失をいかに少なくするかが業界の課題となっている。









