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時には視点を変える「複眼的思考」を(2011年12月)
主席研究員 島田 清彦
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■奈良県での工場立地は活発であった?

図1を見ながら「平成17年以降の5年間で奈良県内での工場立地件数は105件である」という説明を聞いた場合、大抵の人は同16年以前と比べて奈良県の全国シェアが増えており、県内での工場立地が大変活発であったと思うだろう。

一方、図2で工場の敷地面積の推移をみると、やや違った傾向を示している。過去5年間の奈良県の全国シェアは、立地件数は平均1.4%(21年単独は2.4%)とやや高いが、敷地面積は同0.6%(同0.8%)と伸び悩んでいる。

奈良県では小規模な工場立地が増えて件数の全国シェアは高くなっているが、敷地面積(ある意味での生産規模)については、奈良県の経済規模(名目県内総生産)の全国シェアが0.7%であることを踏まえると、平成16年以前の水準が低すぎただけであり、近年は「可もなく不可もなく」本来あるべき水準であるとも言える。


■意外と多い「工場立地の県外流出」(図3、4)

直近5年間の奈良県内での工場の立地件数は105件(うち本社が県外は39件)だが、本社が奈良県で県外に立地は13件であった。同様に工場立地敷地面積を見ると、奈良県内は622千㎡(うち本社が県外は276千㎡)だが、本社が奈良県で県外に立地は275千㎡であった。

この5年間で県外からの工場立地敷地面積は増加したが、同期間に県内からの流出分を補ったに過ぎないという面も否定できない。このように時には視点を変えてモノゴトを捉えると、違った姿が見えてくることがある。(島田清彦)


*なお、本統計からは、工場の稼働率や付加価値額、工場の廃止・縮小等が不明の為、工業統計調査との併用も重要である。

*資料:「工場立地動向調査」(経済産業省)
図1
図2
図3
図4