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■出荷額からみる奈良県の製造業
プロ野球選手がホームランを40本打てば、その年のホームラン王に近づき、高く評価される。しかし、安打40本なら首位打者どころかベンチ入りすら危うい。同じ40本でも、ホームランなら高い評価なのに、安打では低い評価となる。標本が変われば評価も変わってしまうからだ。
これは何もプロ野球の成績だけの話ではない、経済社会も同じである。経済産業省の工業統計調査「我が国の工業」によると、製造品出荷額等(以下、出荷額)からみて全国1位となる奈良県の主な品目(平成20年、全事業所)は、下表で網掛けしている通り、その他の光電変換素子、ソックス、ちゅう房機器の部分品・取付具・附属品、タイツ、はし(木・竹製)など計18品目ある。
各々の出荷額(平成20年、従業員4人以上の事業所)をみると、同じ全国1位の品目でも生産規模が違うため、最も金額が多い「その他の光電変換素子」3,747億円45百万円と最も少ない「プラスチック製スリッパ」2億6百万円では約3,745億円(1,819 倍)もの差がある。
■全国シェアをみると、他にも健闘している品目が多数存在
さらに、全国1位の品目の全国シェアをみると、最も高い「その他の光電変換素子」67.0%と最も低い「はし(木・竹製)」6.5%では60.5ポイントの差が生じている。
次に、下表より、出荷額からみた全国シェアが高い奈良県の製造業(品目別)をみると、「その他の光電変換素子」が最も高く、「織物製成人女子・少女服(賃加工)」、「合成繊維糸・その他の糸染整理 賃加工)」が続く。出荷額は全国1位である「銘板、銘木、床柱」は31位、「はし(木・竹製)」は42位に留まり、製造業全体のボリューム面からみても県内産業への寄与度はそれ程高くない。
全国1位の出荷額を誇っても、生産規模そのものが縮小し、業界全体が非常に厳しい状況に置かれている品目がある一方、全国1位の出荷額ではないが、全国シェアは高い品目が奈良県にもある。
物を比較する場合、順位を見るのも大切だが、全体の規模がどれくらいあるのか、全体の中でどれくらいのシェアを占めているのか、どういう位置付けにあるのかを見極めることも重要である。(岡本 忠)
(注1) | 網掛けは「出荷額からみた全国1位の品目」(経済産業省の工業統計調査「我が国の工業」平成20年、全事業所)。 上表の数値は、公表されている「従業者4人以上の事業所」数値を利用しているため、「全事業所」数値とは異なる。 |
(注2) | 上記以外の「出荷額からみた全国1位の品目」は、平ゴムベルト、デジタル式複写機、フルカラー複写機、その他のゴムベルト、金銭登録機(レジスタ)、卓上用ガラス器具、太陽電池モジュール、電気炉、その他の暖房・調理装置部分品。 |
資料:経済産業省「工業統計調査」 |