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奈良県から県外へ消費が「流出」?実態は「流入」!(2013年8月)
主席研究員 島田 清彦
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■奈良県から県外へ消費が「流出」?

総務省統計局「全国消費実態調査」(2009年)によると、1世帯当たり(2人以上の世帯)の消費支出額は奈良県が327,550円で全国3位〔1位:富山県、2位:神奈川県、全国平均300,936円〕。「他の市町村(県外)」での購入割合は、全国平均が8.3%、奈良県はその約2倍の15.9%(全国1位)で、以下、埼玉県13.4%、神奈川県13.0%、茨城県及び滋賀県11.2%など、大都市近隣の県が概ね高い。

このような統計データを基に、マスコミの報道や行政関係の文書などで、奈良県から県外へ消費が「流出」という表現を見かけることがあるが、この表現は適切なのだろうか?

流出の一般的な意味は、「流れて外へ出ること」「内部にあるものが外部に出て行ってしまうこと」だ。「消費流出」というと、元々、奈良県内で消費されていたものが県外で消費されるようになり(県外へ流出し)、そのために県内での消費額が減少したと誤解を招きかねない。


■奈良県民による県外消費は異常に多いのか?

奈良県の県外就業率は28.4%と全国1位だが、県外で働いている人が帰宅時や休日に県外で買物するために、県外消費の割合が全国1位と高いのか?

ある程度の相関関係はありそうだが、それだけではないようだ。滋賀県の県外就業率は10.8%と低いが、県外消費は11.2%と高い。商業施設等が突出して多い東京都(県外就業率7.4%)や、小売市場規模が奈良県の7.6倍ある大阪府(同5.4%)、京都府(同11.6%)でさえも、県外消費の割合が各々10.0%、8.1%、10.8%と意外と高いのが実態。

この事実を踏まえると奈良県の県外就業者による県外消費はそれ程多いとは言えない。奈良県に限らず大都市近隣では、県外での消費は日常的な行為なのだろう。実際、当研究所のネット調査で県民の約6割が「大阪や京都へ出かける場合でも、県外へ行くという意識はない」と回答。彼らは日常の生活圏の中で行動しているだけだ。


図2

■県外から消費が「流入」し、県内消費は増加!

2007年の奈良県小売業の状況を見ると、人口1千人(05年国勢調査)当たりの売場面積は全国で40位だが、可住地面積(全国シェア0.7%、最下位)1km2当たり売場面積は9位、同販売額は11位、売場面積3.3m2当たり販売額は15位と上位にある。また、1982年と比べると奈良県の売場面積は2.0倍(近畿1.6倍)、販売額は1.8倍(同1.4倍)と近畿を上回る大幅な伸びを示している。

更に、近畿の販売額の全国シェア〔1972年:18.0%→2007年:16.1%〕が低下する中、奈良県の近畿内シェアは3.3%→5.8%へ増加。このように県外で行われていた消費は、県内へのシフトがある程度進んでおり、消費は流出ではなく、奈良県に流入していることがわかる。 (島田清彦)