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■日本は貿易を主として食べている国?
財務省が発表した2012年分の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6兆9,273億円の赤字で、過去最大だった。赤字幅は、第2次オイルショック後の1980年(2兆6,128億円の赤字)を大幅に上回り、32年ぶりに更新した。年間の貿易赤字は2011年(2兆5,647億円の赤字)に続き2年連続となった。
この貿易収支赤字の報道の際、「"貿易立国"日本は過去のものか?」等の表現が多く見られた。義務教育でも「日本は加工貿易で成り立つ国」と教わった人は多いだろう。しかし本当に日本は貿易を主として食べている国なのだろうか。
■日本の輸出依存度は163か国中151位
世界銀行によると、名目国内総生産(GDP)に占める輸出額の割合である「輸出依存度」の2011年の値は、日本は15.1%で163か国中151位と非常に低い(図表参照)。1961年から時系列で見ても日本の輸出依存度は10~15%程度にとどまっている。すなわち、日本の経済成長に占める輸出の役割はそこまで大きいわけではなかったということがいえる。
日本よりも輸出依存度が低い主要先進国は14.0%の米国(155位)だけである。その他の先進国では、ドイツが50.2%、イギリスが32.5%、カナダが30.4%など、いずれも日本を大きく上回る。
以上のことから、個人消費が大きい内需型国家である米国や日本の貿易依存度の低さは、国際的に見るとむしろ例外的であることがわかる。
■イメージのずれはどこからくるのか
自動車や電機など世界を席巻した一部の製造業大企業や日米貿易摩擦などの記憶が、日本の輸出依存度が高いというイメージとして定着したのではないかと思われる。実際の数値データで見る限り、日本は、国際比較で見ると輸出依存度がかなり低い国家だというのが実情である。
■今後も低い輸出依存度のままでいるのは困難か?
日本が長年低い輸出依存度でやってこられたのは、全ての産業分野を一定レベルで国内に抱え込み、産業間のつながりが緊密な経済・産業構造であったという点が大きい。だが、国際的な産業構造の変化や進展するグローバル化の中、国内だけで取引を完結し利益を生み出すのは徐々に困難になっていくだろう。
日本と同様の高度な工業国であるドイツでは、中小企業も積極的に輸出に取り組み確固たる国際競争力を築いている。日本にもニッチ分野で突出した技術や品質を持つ中小企業は数多く存在する。そうした企業が輸出等の海外展開で存在感を示すことが今後ますます必要となろう。(吉村謙一)