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■日本の地熱資源量は世界3位
日本での再生可能エネルギーというと、太陽光発電や風力発電をイメージしやすいが、太陽光パネルの設置可能面積には限りがあるし、風力発電に適した1年中強い風が吹く地域も数が少ない。
しかし、再生可能エネルギー分野で世界でも有数の自然資源が日本にあるのをご存知だろうか?
それは「地熱エネルギー※(以下、地熱)」。火山の多い日本では、地下深部にマグマが存在し、膨大なエネルギーが眠っている。日本の地熱資源量(2,347万Kw)は、アメリカ(3,000万Kw)、インドネシア(2,779万Kw)に次ぐ世界3位とトップクラスにある。また地熱発電は、燃料の枯渇、高騰などの心配がほとんどなく、太陽光や風力といった他の再生可能エネルギーと異なり、気象条件や季節を問わず安定した発電量が得られる。
※地熱エネルギーとは、地球の内部で生成され、蓄積されてきた熱エネルギーのことで、地表近くでは、火山活動や温泉などで地下から放出されている。
■地球環境に優しい地熱発電
地熱発電は、地中深くまで井戸を掘削し、噴き上がる蒸気や熱でタービンを回転させて発電する方法である。
近年、地球温暖化等の環境問題がクローズアップされているが、地熱発電は、図表のとおり温室効果ガスのCO2の排出量は石炭火力、石油火力、LNG火力発電はもちろん、太陽光や風力などの自然エネルギーに比べても少ない。
地熱発電は、地球に優しいクリーンエネルギーとしてもその重要性が再認識されているが、日本における地熱による発電容量は、2010年段階でおよそ53万Kw、他の発電を含めた総発電容量のわずか0.2%にすぎない。
地熱発電が盛んな地域でも11万Kwで、最近建設されているのは2万~3万Kw程度が主流である。しかし、このような小さな発電所であっても、1年中昼夜を通して同じ出力で発電し続けられることから、ベースロード(一定の電力を安定的に供給すること)の資源として活用されている。また、地熱発電は、5万Kw程度で、約20万人の人口の都市電力をまかなえることから、純国産のローカルエネルギーとしても十分高い価値がある。
それにもかかわらず、なぜ、地熱発電の開発が進まないのか?
普及が進まない理由の一つに、建設コストとともに発電所の候補地の多くが、国立公園や国定公園に指定されているため、建設規制などのハードルが高いことがある。またもう一つの理由は、温泉地からの反対である。これは、地熱発電の新設により、温泉の枯渇、湯量の低下、温泉の温度低下などの反発が根強かったことがあげられる。しかし、東日本大震災とそれに伴う福島第1原子力発電所事故により、再生可能エネルギーとしての地熱発電の開発が見直され、政府は建設規制の緩和や、発電所設置の際の環境アセスメントの短縮も検討し始めている。
「脱原発」や「卒原発」と言う前に、CO2排出量が少なく地球環境に与えるダメージが非常に低い地熱の積極的な活用について、もっと声を大にして言うべきではないだろうか。 (橋本公秀)