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■税制改正による設備投資策の拡充
バブル崩壊以降、「失われた20年」という言葉に象徴されるように、我が国は長期不況とデフレーションに陥った。平成24年後半から始まったアベノミクスの影響で幾分持ち直してきたが、設備投資の伸びは、先行き不透明感もあることから、慎重な見方もある。
しかし今年度は、設備投資が増加する年になりそうな気配がある。なぜなら、平成26年度の税制改正は、老朽化した生産設備を、生産性が向上する設備へ入れ替えることを促進し、企業の産業競争力を回復させ、我が国の景気回復を力強いものとすることを目的として行われたからである。
特に「民間投資活性化のための税制措置」が改正の目玉となっており、アベノミクスの後押しがあるのはもちろんだが、平成26年度税制改正には、大幅な設備投資拡充策が設けられている。
■税制改正の3つの特徴まず特徴の一つ目は、即時(100%)償却の新設である。これまでの特別償却は一部を除き、30%が主流だったが、今回の改正により生産性向上設備に該当する固定資産には、即時償却が可能となった。
二つ目は、10%の税額控除の導入である。即時償却の場合、事業の用に供した事業年度で全部を償却できるが、通常の減価償却であっても、最終的にはほぼ全額の償却が可能である。償却期間を無視すれば、償却できる金額自体は変わらない。
一方、税額控除を選択すれば、通常の減価償却を実施し、さらに税額控除を受けることができる。中小企業が通常受けられる税額控除は、これまで最大で7%であったが、今回の改正により10%の税額控除が新たに導入された。
三つ目は、税額控除が適用できる対象企業が拡大したことである。中小企業が最も利用する設備投資税制として、中小企業投資促進税制があるが、昨年までは、7%の税額控除を受けられる企業は、資本金は30百万円以下の企業に限られていた。しかし税制改正による中小企業投資促進税制の拡充により、資本金30百万円以下の企業については10%の税額控除、資本金30百万円超1億円以下の企業についても7%の税額控除が受けられるようになった。
■中小企業投資活性化策の効果的な活用
今回の税制改正により、定められたルールの中で、税金の支払を合法的にコントロールすることも企業のマネジメント対策の一つである。減価償却を活用し、キャッシュフロー(以下「CF」)を潤沢にすることもできる。さらに生産性向上設備等に該当する償却資産であれば、新設された即時償却を活用し、単年度で多額のCFを生みだすこともできる。また法人税額の20%を上限として、法人税額から控除できる税額控除も活用できるので、設備投資をする際の選択肢が増えた。
ただし、即時償却を選択すると、初年度の減価償却費が大きくなりCFは潤沢になるものの、次年度以降、減価償却費が発生しないため、利益が大きくなり、税金の支払が多額になるケースも考えられる。
新たな設備投資を実施することも一案だが、長期的に安定した利益が見込めないのであれば、税制改正のメリットだけを追求せず、慎重に事業計画を立てることが望まれる。また特別償却と税額控除は、重複適用できず、どちらかの選択適用となるので、投資計画をよく検討し、税制改正による中小企業投資活性化策を効果的に活用したい。(橋本公秀)