一般財団法人 南都経済研究所地域経済に確かな情報を提供します
文字サイズ

地方移住の促進には具体的な対象セグメントの設定を (2014年12月)
副主任研究員 吉村 謙一
PDF版はこちらからご覧いただけます。

■都市居住者の4割が地方移住に興味あり

わが国の人口減少や東京一極集中が問題となる中、地方の人口維持のため都会から地方への移住を促せないかが最近よく議論にのぼるが、内閣府が2014年10月に公表した「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」に、地方移住に関しての興味深い調査結果が掲載されている。

調査対象のうち約4分の1(478人)が「都市」「どちらかといえば都市」に居住していると回答したが、それら都市居住者に「地方に移住してもよいと思うか」とたずねた結果が図表1である。

全体では39.7%(「思う」21.3%+「どちらかといえば思う」18.4%)が移住してもよいと回答し、とくに男性では46.7%と半数近くが移住に肯定的だったが、女性で肯定的な人は33.0%にとどまった。年齢別に見ると若年層ほど肯定的で、年齢層が上がるほど否定的な回答が増えた。これは、女性や高年齢層の人ほど、人間関係や地域との密着性等のしがらみが多く、気軽に移住に踏み切ることが困難になるためだと思われる。

また、図表1で移住してもよいと回答した190人に「どのような条件があれば地方に移住してもよいと思うか」とたずねた結果が図表2である。

「教育、医療・福祉などの利便性」「居住用の家屋・土地の安価さ」「買い物、文化イベント、趣味の場などの充実」といった項目が上位に並んでいるが、いずれも女性の回答割合が男性を上回っていることが目を引く。


■具体的な対象セグメントの設定が重要

以上のことから、地方への移住者を呼び込もうとする場合、(1)高齢者よりも若年層にアプローチする、(2)条件面でのこだわりが強い女性の不安を解消する施策に注力する、といった対策を取ると費用対効果が大きいということが推察される。

地方移住を効果的に促進するためには、「居住地の子育て環境を重視する若い母親」などの具体的な対象セグメントをいくつか設定し、切り口を重視して、限られたリソースを重点投入する施策の検討が必要であろう。   (吉村謙一)

図1

図1