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統計調査の意義・必要性を理解し、積極的に回答を(2015年12月)
事務局長・主席研究員 島田 清彦
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9月中旬から10月上旬にかけて行われた国勢調査の現状や課題などについて考察する。


■全数調査と標本調査

統計調査は、本来、調査対象の母集団(調査や観察の対象とする集団全体)すべてに対して行われる「全数調査」(悉皆(しっかい)調査、センサス)が理想であるが、膨大な費用や手間がかかるため、大半の統計調査は「標本調査」(サンプル調査)として実施されている。

後者は対象の一部を調査して全体を推定するため、前者に比べて費用や手間を省けるが、標本誤差が生じる。偏りが生じないように標本を選ぶために、国勢調査のような全数調査が不可欠となる。


■国勢調査の調査票の未回収は、意外と多い

国勢調査は全数調査の代表的な存在であるが、総務省統計局「2010年国勢調査の実施状況」で一般世帯における調査票の未回収世帯の割合をみると、全国で8.8%(約11世帯に1世帯)が未回収となっている。都道府県別では、東京都20.1%が最も高く、高知県、福岡県、大阪府、愛知県の4府県も10%を超えている。奈良県は3.1%と低いが、和歌山県は更に優秀で1.1%と全国で最も低い。

未回収世帯については、近隣への聞き取り調査により氏名・人数等のみ補足されている。

なお、国の重要な統計調査(基幹統計調査)については、正確な統計の作成に向けて統計法において、調査票に記入して提出する義務(報告義務)が調査対象者に課せられ、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりした場合の罰則(50万円以下の罰金)も規定されている。

■オンライン調査の実施と今後の課題

2015年調査は、9月10~20日に紙の調査票による調査に先行してオンライン調査が実施された。総務省統計局の調べによると、期間中のインターネット回答数は19,175,769件で、2010年調査の世帯数を基に試算すると、同回答率は36.9%となる。このうち、スマートフォンからの回答割合は12.8%で、インターネットで回答した世帯の3世帯に1世帯はスマートフォンからの回答であった。

都道府県別のインターネット回答率をみると、滋賀県48.4%が最も高く、次いで富山県45.7%、岐阜県45.4%、愛知県45.1%、奈良県45.0%(5位:うちスマホ13.9%)など、17県で4割を超えた。 一方、最下位は沖縄県22.7%。残念ながら未回収世帯割合が全国1位の東京都は26.0%(45位)と結果が芳しくなく〔46位:高知県25.1%〕、未回収世帯割合の大幅な改善も期待できそうにない。

基幹統計調査の精度向上を図るには、回答方法の利便性を高めるだけでなく、基幹統計調査の重要性や意義を強く訴求していく必要がある。

未回収世帯から罰金が徴収されるような時代が来るとは思わないが、国民が自ら報告義務を果たしていくことが望ましい。但し、統計調査の精度が高まっても、有効な政策決定がなされるとは限らないが。(島田清彦)

図1