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行動心理学における3つの効果 (2017年1月)
主席研究員 丸尾 尚史
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■人間が持つ異なった2つの欲求

人間には「多くの人が持っているから、使っているから欲しい」という欲求と「人があまり持っていないから、使っていないから欲しい」という異なった2つの欲求が存在する。例えば、前者の欲求は、「多くの人が手にすることによって安心感が強まる商品」に多く、衣料品を中心とした「低価格のファストファッションブランド」が一例。後者は、「希少性が高く他の人が持っていないことによって優越感が強くなる商品」の場合で、革製品などの「高級ブランド品」がこれに該当する。

2つの欲求の強弱は、当人の性格や欲求の対象となる物により異なるといわれている。

■3つの効果

行動そのものを研究することによって人間の行動の法則を導き出し、ひいてはそこから心理を理解する学問を「行動心理学」といい、行動心理学の効果として「スノッブ効果」「バンドワゴン効果」「ヴェブレン効果」がある。

「スノッブ効果」は、「入手が困難な商品・サービスほど需要が増加し、多くの人が所持し始めると興味が薄れ、需要が減少する」という現象。「3日間だけの限定販売」「〇〇個限り、無くなり次第終了」などの売り方がこれを利用したものである。反対に、「バンドワゴン効果」は、「ある商品・サービスの消費が増え、多くの人が所持するほど需要が増加する」という現象のことで、「当店の人気№1商品」「ロングセラー商品」などがある。人が並んでいる店と全く人がいない店があれば、混み具合の程度にもよるだろうが、行列のできている方の店に自分も並んでしまう現象も「バンドワゴン効果」といえるだろう。また、「ヴェブレン効果」は、「宝石や毛皮等、商品の価格が高く、それを手に入れること自体に特別な消費意識・欲求が生まれる」という現象のことである。


■各種効果を組み合わせる

「スノッブ効果」と「バンドワゴン効果」は一見相反するように思われるが、両効果を組み合わせて、良い結果を導くこともできる。例えば、「多くの人にご好評いただいたこの商品、残り10点になりました」とか「申し込みが殺到し生産を中止していましたが、再開ができ、僅かですが商品が揃いました」といった文言は店頭やテレビショッピング等でよく目にする。さらに該当する商品の高級性が強ければ、「ヴェブレン効果」も加わる。


■まとめ

こういった行動心理学における効果は商品等の販売促進に効力を発揮するが、これを悪用して、「今だけ」と言いながら実際には何回も販売することや、「人気品につき在庫些少」と言いながら在庫は潤沢にあるケースも見受けられる。過去には、「閉店セール」を謳いながらいつまでも閉店しなかった小売店があったことも記憶に新しい。また、いわゆる「サクラ」を使い作為的に行列を作ることもできるだろう。しかし、顧客を欺いて商品・サービスを提供するこれらの行為は言語道断だ。

最も重要なことは何か。消費者がこれらの効果に惑わされず、「自分にとって今必要なものなのか」「無駄なものではないのか」を冷静に判断すること、そして不必要ならば「ノー」と言う賢明な判断力を身に付けることではないだろうか。(丸尾尚史)