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■大手志向が強まる大学生の就職戦線
景気回復に伴う求人増で、大学生の就職戦線は売り手市場が鮮明になっている。今春の大学生の就職内定率は、97.6%(厚生労働省公表)で、1997年3月卒の調査開始以来、過去最高を更新した。また日本経済の先行き不安を抱く学生の安定志向に拍車がかかり、大手志向が強まっている。さらに2030年には今より800万ほどの就業者数の減少が見込まれており、大手各社の採用意欲はますます高まっている。
実際、中小企業の経営者からは、「求人票を出しても応募が無い」「自社HPに募集サイトを作ったが、全く反応が無い」「採用イベントに参加したが、ほとんど求職者と面談できなった」という声をよく聞く。少子化が進む現在、もはや中小企業は大学生の新卒採用を諦めざるを得ないのだろうか。
■学生が就職活動時に考えること
2018年卒マイナビ大学生就職意識調査(図表 )によるアンケート結果からも大手企業志向が強い(52.8%、「絶対に大手企業がよい」+「自分のやりたい仕事ができるなら大手企業がよい」)ことがわかる。少子化が進む中、この傾向は今後も続くであろう。
しかし中堅・中小企業志向(「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」+「中堅・中小企業がよい」)も43.2%あり、決して低い数字ではなく、学生は大手企業志向だけとは限らない。
■中小企業の新卒採用活動は営業活動
それでは中小企業はどのような形で新卒の採用活動に取組めばよいのだろうか。
中小企業が戦略的に新卒採用活動をするには、
面接に来てくれる学生の中から選ぶという従来の採用活動から、「採用活動は営業活動だ」と180度方針転換する気概で取組む必要がある。そして学生を選ぶのではなく、学生から選ばれる会社になるべきである。そのために、給与、福利厚生、年間休日などの項目が他社より優れていれば優位に立てることは言うまでもない。
しかし、多くの中小企業はこの項目が優れているとは言いがたいのが現実である。それならば、学生に対し自社の魅力を余すことなく伝えることが絶対条件となる。そして採用活動は重要な経営戦略であると認識し、数合わせの採用ではなく、競争力を高め経営ビジョンを実現するために人材が必要であるということを社員全員に徹底したい。
少子高齢化や人口減少、求人倍率の高騰など中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しているが、積極的な採用活動により優秀な学生に対し自社の情報を発信することができれば、規模が小さな会社でも優秀な学生を採用することは可能である。