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■人口性比が全国並みの水準から大幅に低下
人口性比(女性100につき男性:以下「性比」)は、女性人口に対する男性人口の比に100を掛けて表示できる。全国の性比は1960年以降大きな変化はないが、地域別では大きな変化が見られる。
1960年と2015年の性比を比較すると、東京都は106.6→97.3へ大きく低下。関西では滋賀県が唯一91.8→97.3と5.5ポイント上昇したが、その他の府県は軒並み低下。奈良県も96.0(関西3位)→89.4(同5位)へ低下。低下幅の大きい上位3地域の(1)北海道、(2)東京都、(3)大阪府は、性比が1960年時点で100.0を上回っていたが、(4)長崎県と(5)奈良県は全国並みの水準から大幅に低下した。
奈良県の性比は全国37位であるが、下位は和歌山県を除き、東北・九州等の地方の県が並ぶ。
■生産年齢人口性比は、奈良県が関西で最下位46道府県の性比を横軸、1人当たり県民所得を縦軸としてその分布をみると、やはり男性が少ない地域ほど概ね所得も少ない。男女の賃金格差は年々縮小傾向にあるといわれるが、奈良県のように男性が少ない地域は不利である。
厚生労働省「2016年賃金構造基本統計調査の概況」によると、賃金は男性335.2千円、女性244.6千円。男女間賃金格差(男性=100)は過去最小の73.0となっている〔参考:1997年は63.1〕。
生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の性比は、全国101.3や滋賀県102.5は100.0を上回り男性がやや多いが、奈良県は92.5で関西最下位〔同人口は滋賀県より男性51千万人、女性10千人少ない〕。仮に奈良県の同性比が兵庫県95.6並みに改善すると、男性就業者は約8千人の増加が見込まれる。あくまでも仮定の話であり、その実現は相当困難だ。
年齢階級別性比をみると、奈良県は10~14歳では関西で最も高いが、若年男性の県外流出が他府県よりも多く、20歳~59歳の性比は全国や関西の他府県と比較して大幅に低い。
奈良県の性比が低下・低迷する原因を解明し、若年男性の人口流出を食い止めることは、奈良県の大きな課題と言える。 (島田清彦)