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■不条理な内部留保課税を実施しようとした狙い
昨年「企業が溜め込み過ぎる内部留保を課税する」とある政党が公約に掲げたことに対し、産業界から大反発を受けたことは記憶に新しい。さらにメディアによる解説も内部留保の意味をはき違えているのではと誤解されるような記事が多かった。
内部留保とは、貸借対照表にある純資産の部の利益剰余金のことで中小企業の場合、原則、過去の当期純利益の累積となる。
当期純利益には、既に法人税が課せられており、当期純利益が蓄積された内部留保にもう一度課税するのは不条理であるというのが反発の理由であった。
一方、積み上がっている内部留保を課税しようとした狙いは、賃金アップや生産性を高めるための設備投資を促進し、経済を活性化させようという思惑があったのであろう。
■あまり認知されていない現状の税制優遇措置
設備投資を実施した中小企業に対する税制優遇措置は、図表に示すように数種類あり、例えば地方税では、新たに取得した機械装置等(ソフトウェア除く)に対する固定資産税が3年間半額、かつ新たに取得した機械装置等に対する国税(法人税)の即時償却あるいは税額控除10%を選択できる「経営力向上計画」を始め、同様に30%特別償却または税額控除7%が選択できる「商業・サービス業活性化税制」や「中小企業投資促進税制」等の制度がある。
また政府は成長戦略を検討する「未来投資会議」(議長 安倍首相)において、設備投資を行った中小企業に対する固定資産税の更なる優遇措置拡充も検討している。
しかし現在ある税制優遇措置は、あまり利用されていない、あるいは認知されていないケースが多いのではないだろうか。
政府は、設備投資を実施した中小企業が手厚い税制優遇措置を活用できることを周知させる対策も必要であろう。