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「ポイント還元」と「現金値引き」のどちらを選ぶ? (2018年5月)
主席研究員 丸尾 尚史
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家電量販店やネット通販等で実施されているポイント還元(商品を購入すると、次回以降に使用できるポイントを付与する)は、現金値引きと比べて得なのか。現金値引きよりポイント還元が高率の場合を例に検証しよう(計算の都合上消費税は考慮していない)。

■複数回購入する場合

「ポイント還元20%、現金値引き15%」という条件下で毎回1万円の商品を購入する場合、表のように8回目までの現金支出合計は値引きの方が少ないが、9回目に逆転する。(獲得したポイントは可能な限り次回購入に使用するものとする。)ただし、差が同じ5%であっても「還元率30%、値引き率25%」や「還元率10%、値引き率5%」の損得は一様でない。

図

また、初回のみ10万円、2回目以降1万円とした場合には3回目がターニングポイントとなる。

図

■AB二つの商品を同時に購入する場合

先にAを現金で購入し、Bは獲得したポイントを全額使用の上、残りを現金で支払う場合、図のように2つの商品の値段の違いによって結果が異なる。

図

■双方の差は表面上と実質で異なる

「還元率20%と値引き率15%」の場合、表面上の差は5%だが、実質は1.7%(16.7%-15%)と縮まる(ポイント還元の割引率:20%/(100%+20%)≒16.7%)。また、「15%と5%」では4.09%となるが、「30%と25%」ではマイナス1.93%と差が逆転するため、現金値引きが得になる。

■想定されるポイント還元のリスク等(該当しない場合もある)

  • 高い確率で購入後にポイントが残るが、(1)ポイントの消化のための無駄な購入やそれに伴う新たな現金出費の発生、(2)購入希望商品が他店より高くても購入せざるを得ない、(3)転居・転勤等に伴う使用不可、といったことが懸念される。
  • 上記(1)と関連するが、例えば、「使用は100ポイント単位」といったポイント使用の制約がある。
  • ポイント還元が翌日以降になることがあり、複数同時購入時に使用できない。
  • 表面上の差と実質の差は異なる。 
  • その他、ポイントカードの紛失や期限切れによる失効、店舗の閉鎖や経営破綻による使用不能等。

■結論

どちらが得かは、ポイント還元率および現金値引き率の大小や双方の差の大きさによるほか、金額の大小、購入のタイミングや回数といったような購入パターンにも依り、一概にいえない。結論は、ポイント還元に存在するリスクを考慮した上での個別の対応が必要だということ。ただし、表面上の率が同じならば明らかに現金値引きが有利である。