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■奈良県の教育水準は?
奈良県は大学進学率が高く、有名国立大学への合格者も多数輩出し、教育水準が高い県であるというのが一般的な人々の認識ではないだろうか。
実際、2016年3月の高卒者の大学・短期大学等進学率は、奈良県が58.9%で全国7位。また、総務省統計局「家計調査報告」(2人以上の世帯のうち勤労者世帯)により用途分類別1世帯当たり2017年平均1か月間の「教育(*)」支出をみると、奈良市は34,330円、47都道府県庁所在市中で全国3位〔1位:さいたま市、2位:東京都区部〕。消費支出全体に占める「教育」の割合は、奈良市が10.8%で同1位であり、教育熱心であることがうかがえる。
*授業料等、教科書・学習参考教材、補習教育
民間団体の調査によると、高校3年生の生徒数に対する京大合格者数(現役・浪人)は奈良県が全国最多、東大合格者数は東京都に次ぎ奈良県が2番目に多い。ただ、これは一部の私立高校が県全体の数値を引き上げている要因が大きく、某私立高校では県外から通学している生徒が約6割を占めており、奈良県民によるものとは言い難い。
■奈良県公立高校3年生の英語力は全国平均以下
次の調査結果からは異なる実態が垣間見える。2018年4月、文部科学省が全国の公立中高生徒の英語力を調べた2017年度「英語教育実施状況調査」を公表。「実用英語技能検定(英検)3級以上」相当(*)の英語力を有すると思われる中学3年生の割合は奈良県が40.4%(全国27位)と、全国平均40.7%と同水準であるが、「英検準2級以上」相当の英語力を有すると思われる高校3年生は、全国平均の39.3%に対して、奈良県は33.2%で同43位、関西で最下位となっている。
今回の調査結果では福井県の強さが目立っている。福井県の英検3級相当以上の中学3年生は62.8%、英検準2級相当以上の高校3年生は52.4%と、いずれも全国で最も高い。同県と比較すると、奈良県は中高とも約20ポイント下回っている。
*英検以外の民間試験受験者や、教員が基準を満たしていると判断した生徒も含む。
次に英語担当教員の英語力をみると、英検準1級相当の資格を有する教員の割合は、奈良県は高校が53.8%(同41位)と全国平均65.4%を約12ポイント下回る。一方、福井県は英語担当教員の英語力も中高ともに全国1位で、英検準1級相当の資格を有する英語担当教員は高校で91.3%と際立って高い。
奈良県の全日制高校の3年生は約12千人で、その7割を占める公立高校生の英語力が低いと判明した。前述のような一部の数値に惑わされることなく、奈良県の英語力が下位に甘んじている現状を直視し、先進県の事例に学びながら官民協力して奈良県の英語力の向上に取り組んでいく必要があると考える。