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アジア諸国の経済発展と訪日外客数の増加(2018年9月)
主任研究員 前田 徹
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インバウドの好調を背景に、関西でも宿泊施設の建設・開業が相次いでおり、大阪では客室数が数百室規模のホテルの建設が進む。ホテルの供給過剰を懸念する声もあるが、訪日外客数は今後も増加し続けるだろう。

■訪日外客数は過去10年で3.4倍に

2017年の訪日外客数は2,869万人と10年前(2007年、834万人)の3.4倍に増え、特に2013年以降の5年間でアジア諸国を中心に顕著に伸びている。官民による訪日外国人旅行の促進(観光ビザの緩和、各国への観光プロモーション、LCC路線の拡大等)や、ネットの普及により日本の魅力がSNS等を通じて拡散されるようになったことが大きな要因とみられるが、アジア諸国の経済発展が着実に進んでいることも背景にあると考える。

■訪日外客数は人口の0.3~1.4%程度の国も

表でアジア諸国・地域の2017年の訪日外客数を2007年時点と比較(下表の④)すると、ベトナム(9.7倍)、中国(7.8倍)をはじめ、東南アジア諸国を中心に4~6倍の伸びとなっているが、2016年推計人口に対する訪日外客数の割合(⑤)は、1人あたり国内総生産(⑫)が1万ドルに満たない国では0.3~1.4%程度となっている。

一方、各国の2016年の外国旅行者数を2007年時点と比較(⑧)すると、中国(2.9倍)、インド(2.1倍)をはじめ、データのある国すべてで1.6倍以上に増加しており、各国の1人あたり国内総生産の伸び(⑬)と同程度の伸びを示している。

■まだ低い外国旅行先としての日本の選考度

外国旅行者数全体に占める訪日外客数の割合(⑩、⑪)は、タイ(4.0%→14.4%)、中国(2.3%→6.3%)、インドネシア(1.2%→4.3%)など、1人あたり国内総生産(⑫)が相対的に低い国を中心に、外国旅行先としての日本の選考度が3倍前後に高まっているが、シェアは1割にも満たない国が多い。

こうしたことから、ⅰ)近年、訪日外客数は急増しているが、発展途上にある東南アジア諸国での人口に占める割合は依然低く、1人あたり国内総生産の上昇につれて外国旅行者数全体が徐々に増加している段階にあること、ⅱ)各国の外国旅行先としての日本の選考度は高まっているが、未だその上昇余地は大きいことがわかる。新興国では尚も高い経済成長率を維持しており、賃金水準の上昇に伴い中間所得層の厚みが増している。短期的な増勢の変動はあるとしても、訪日外客数の増加基調は今後も続くと考える。


図