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勤務間インターバル制度の導入について (2018年10月)
主任研究員 中井 正人
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平成30年6月に働き方改革関連法案が成立しましたが、様々な施策の中でも過重労働の防止や長時間労働の抑制に有効と考えられる勤務間インターバル制度に関心が高まっています。

■勤務間インターバル制度と現状について

勤務間インターバル制度とは勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し健康保持や過重労働の防止を図るものです。

ホワイトカラー労働者(*)について、平成28年社会生活基本調査より、勤務間インターバルの状況をみると「14時間以上15時間未満」の人が最も多く、次いで「15時間以上16時間未満」、「13時間以上14時間未満」の順で、勤務間インターバルが「13時間以上16時間未満」の人が57.7%となっています。一方、短時間の勤務間インターバルもみられ、「11時間未満」の人は10.4%となっています(図表1)。

(*)ホワイトカラー労働者とは、職業大分類が「管理的職業従事者」「専門的・技術的職業従事者」「事務従事者」及び「販売従事者」の者をいう。

図

(図表1)ホワイトカラー労働者の勤務間インターバルの分布(出所:総務省 平成28年社会生活基本調査)

海外に目をむけると、EUでは労働時間指令により労働者の健康と安全確保の観点から24時間につき最低連続11時間の休息時間(勤務と勤務の間隔)を付与することが義務付けられています。

我が国で、臨時的な特別事情がある場合の長時間労働の上限である月80時間の残業時間を1営業日あたりで考えると、およそ4時間の残業となります。仮に9時から18時までの8時間勤務(休憩時間1時間)の人が4時間の残業をした場合22時まで勤務することとなり、勤務間インターバルは翌朝9時までの11時間となることから、「11時間」は確保すべき勤務間インターバルの最低ラインと考えられます。

■課題

体調面では勤務間インターバル制度は有効な手段だといえます。しかし課題もあります。

①勤務管理システムの変更や新規導入②労務管理担当部署や従業員への研修③取引先の業務時間を考慮しなければならない営業職などではシフトの組み替え等が必要となってきます。特に少人数の職場では導入が難しいと思われます。

そこで政府は、労務管理担当者や労働者に対する研修や労務管理用機器、ソフトウエアの導入等に助成金を出すことで促進を図っています。

■まとめ

先述のとおり平成28年社会生活基本調査によれば、「11時間未満」の短時間インターバルの割合はまだ10.4%あります。

勤務間インターバル制度の導入は、代替要員の育成や人材管理、職場環境の整備等ハードルは高いといえます。しかし労働力不足の中、有能な人材を確保するには労働環境の整備は不可欠であり、勤務間インターバル制度が浸透し、長時間労働の是正が進むことが望まれます。