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■公的年金制度の仕組み
公的年金制度は、いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者等の年金給付に充てる「世代と世代の支え合い」という考え方(賦課方式)を基本とした財政方式で運営されている。
具体的には、自営業者など国民年金のみに加入している人(第一号被保険者)は、毎月定額の保険料を自分で納め、会社員や公務員で厚生年金や共済年金に加入している人(第二号被保険者)は、毎月定率の保険料を会社と折半で負担し、保険料は毎月の給料から天引きされる。専業主婦など扶養されている人(第三号被保険者)は、厚生年金制度などで保険料を負担しているため、個人としては保険料を負担する必要はない。老後にはすべての人が老齢基礎年金を、厚生年金などに加入していた人は、それに加えて老齢厚生年金などを受けることができる。
■保険としての機能を有する公的年金
公的年金制度は、寿命の不確実性のリスクや生涯を通じた所得喪失(障害年金、遺族年金)への対応といった保険としての機能も有している。
しかしながら、年金は保険であることがあまり知られておらず、あたかも金融商品であるかのように論じられるケースが多い。給付と負担の倍率のみに着目し、これが何倍だから払い損だとか、払った以上にもらえるとか、私的な扶養と公的な扶養の代替性や生涯を通じた保障の価値という年金制度の本質を考慮しない情報引用が散見される。そのため平成26年財政検証結果レポート(厚生労働省)では、単純に保険料累計額の現在価値と年金給付の現在価値の比較により公的年金制度を評価すべきではないと指摘している。それでも給付と負担の関係を考慮する一つの材料として世代ごとの保険料累計額の現在価値と年金給付の現在価値の比較をあえて機械的に計算を行い、結果について示したものが「図表:世代ごとの給付と負担の関係について」である。この図の厚生年金のケースでは、2015年に40歳の者が払った保険料の2.4倍、30歳でも2.3倍の金額が支給されることを示している。年金財政が悪化していると言われるなか、なぜこんなに支給されるのかというと、国民年金は財源の半分が税金でまかなわれ、厚生年金は保険料の半分を会社が負担しているからである。ともに個人が払う保険料は半分であるため、その数倍の金額がもらえることになる。
■人生100年時代を乗り切るために
「年金が2~3倍もらえるというのはまやかしだ」という意見もある。その理由は「会社が保険料を払わなければその分を給与で払うはずだ。だから会社負担分も自分が払った保険料とみるべきで、そう考えると倍率は大幅に下がる」という見解である。確かに間違いではないと思うが、会社が保険料を払わない場合、その分を給与として全額払うであろうか。基本的には自分が支払った保険料に対し、何倍もらえるかと考えるのが順当であると思う。
図表の年金給付額は、世代ごとの受給者が60歳時点から平均余命まで生きた場合の額であり、もし平均余命より長生きした場合、長生き保険としてのメリットを多く受けることになる。人生100年時代を考えれば、給付額が減少する可能性はあるものの長生き保険でもある公的年金は大事に活用したい。