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我々は旅行をする際に、旅行会社が企画する旅行(「募集型企画旅行」、「受注型企画旅行」)を利用することがあるが、旅行ツアーの参加中に身体に傷害を被った場合や身の回り品に損害を被った場合には、一定の条件のもとで「特別補償」が受けられる。このことは観光庁の標準旅行業約款に謳(うた)われているのだが、あまり知られていない。
募集型企画旅行とは、旅行の目的地および日程、宿泊や交通、観光などのサービス内容、料金をあらかじめ設定し参加者を募る旅行のこと。一般的にパッケージツアーまたはパック旅行といわれる。受注型企画旅行とは、旅行者からの依頼に基づき、旅行会社が、旅行の目的地や日程、運送や宿泊サービスなどの内容および旅行代金の計画を作成、提案し、実施する旅行のこと。会社の慰安旅行などがこれに当たる。両者とも旅行会社が自ら企画し販売する商品であることから、主催する旅行会社は、特別補償の責任を負う。なお、航空券やホテルの手配のみの「手配旅行」は対象外である。
特別補償とは、募集型企画旅行・受注型企画旅行を実施する旅行会社の責任の有無を問わず、企画旅行参加中に、「急激かつ偶然な外来の事故」で、旅行者の生命、身体に傷害を被った場合、または「偶然な事故」で見の回り品に損害を被った場合に、あらかじめ定める額の補償金および見舞金を支払うこと。生命もしくは身体に被った被害の見舞金等のほか現金やクレジットカード等を除く携帯品に被った被害も対象となる。
特別補償の対象となるのは、当該企画旅行日程に定める最初の運送・宿泊機関等のサービスの提供を受けることを「開始した時」から最後の運送・宿泊機関等のサービスの提供を受けることを「完了した時」までである。「開始した時」(または「完了した時」)とは以下①又は②のいずれかの時をいう。①添乗員、旅行会社の使用人又は代理人が受付を行う場合は、その受付完了時(同人が解散を告げる場合は、その告げた時)、②受付が行われない場合は、最初(または最後)の運送・宿泊機関によって以下の表のように異なる。
したがって、当日、旅行の受付を済ませた後は特別補償の対象となるが、解散後は対象とならない。無人駅から鉄道に乗車の場合、駅に入場後も乗車前は対象外であるから注意が必要である。
なお、旅行者等の故意、自殺行為、犯罪行為は対象とならず、国内旅行では地震、噴火又は津波の場合も補償金等は支払われない。また、ツアー参加中に設定された自由行動時は、例えば山岳登はんやハングライダー搭乗といったような危険行為等は除かれるといった一定の制限条件はあるものの、それに該当しない場合は対象となる。
ケガや破損等により特別補償を受ける事があってはならないが、楽しい旅行のための「万が一のお守り」的存在としてはありがたい制度であり、ツアー参加時には旅行会社の約款に一度目を通しておきたい。