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変動費は売上高に比例するとは限らない(2019年8月)
主席研究員 橋本 公秀
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■会計上の費用は大きな括りで2種類

会計や決算書の読み方等の書物を調べていると会社の費用には、売上高の増減に関わりなく固定的に発生する固定費と、売上高の増減に比例する変動費があると書いてある。説明のとおり「変動費は売上高に比例する…」とあまり深く考えずに記憶する人もいるかもしれないが、本当に変動費は売上高に比例するのだろうか。

■利益は会計本の理屈通りに算出できない

ある会社(小売業)が、競合他社の営業攻勢を受け売上高が下がったケースが【図表1~2】である。

経営者は、売上減少を最小限に抑え、赤字に転落するのを防ぐため、単価を下げてでも取引を維持しようと考えた。さらに人件費を含む固定費の削減にも取組むことにした。そして販売単価(2,000円→1,800円【図表3】)を10%下げ、受注量(販売個数)を維持できれば、変動費率(このケースは75%)は変わらないとみて、固定費削減効果と相まって当期の営業利益は黒字に転換すると目論んだ。

経営者の計画では【図表3】のとおり営業利益が10万円の黒字に回復するはずであった。ところが当期の決算結果は【図表4】のとおり黒字にはならず110万円の赤字となった。


図

■粗利を重視する経営を心掛ける

経営者が判断を誤ったのは、単純に変動費が売上高に比例すると考えたことが原因である。

変動費は単純に売上高に比例するのではなく受注量に比例する。固定費は人件費削減等で自社の判断で減らすことが可能であるが、変動費の仕入単価はこちらの都合で簡単に下げられない。変動費が売上高に比例するという大きな括りで判断したため、粗利が計算上はじき出され、当初から赤字になる計画だということに気がつかなかったのである。

利益を増やすには、売上を伸ばすのが一番だと判断してしまうと陥りやすいケースである。

売上だけにポイントを置くのではなく粗利に視点をおく経営を心掛けていれば、変動費が単純に売上高に比例するのではないことに気づいたであろう。特に売上高が減少傾向時には注意が必要である。