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不確実性の高い未来を知り、備えるための「スキャニング法」(2020年10月)
係長 副主任研究員 太田 宜志
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■不確実性の高い未来を予測するために

国際秩序の変化に伴う世界の多極化、人工知能(AI)やバイオテクノロジー等の革新的技術の登場、それを受けた人々の価値観の多様化、さらに新型コロナウイルス感染症の発生等を受け、企業を取り巻く環境は変化が加速している。こうした情勢下において、未来を現在の延長上に捉えるだけでは十分でなく、非連続な変化の兆しに目を向けることが、不確実性の増す未来への備えとなる。

文部科学省「令和2年版科学技術白書」は、第1章を「科学技術による未来予測の取組」として、未来予測を巡る取組の変遷やその手法、国内外の官民による未来予測の取組事例に割いている。ここでは、同白書に挙げられている未来予測手法の中から、変化の兆候をいち早く捉えることができ、未来に備えるうえで有用な「スキャニング法」を紹介する。

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■スキャニング法の具体的な取組方法

スキャニング法とは、1960年代にスタンフォード・リサーチ・インスティテュートが開発した、未来予測手法の一つである。その後様々な実務家により改良が加えられ、近年では企業におけるイノベーション探究手法の一つとして用いられることも多い。具体的な取組方法としては、以下のようなプロセスが考えられる。

新聞や雑誌、論文等の様々なニュースソースから、現在まだ主流化してはいないが、未来に大きな変化をもたらす可能性のある出来事をピックアップする。
ピックアップした記事を要約し、わかりやすいタイトルをつける。これをスキャニングマテリアルと呼ぶ。
スキャニングマテリアルを一定数(目的に応じ100前後)用意し、それらを眺め、組み合わせながら、チームでの対話を通じて今後起こり得る未来の兆しを文章化する。
未来の兆しが社会にもたらす変化の可能性に対して、自社としての対処方法を検討する。

なお、発想の多様性を確保するために、チームメンバーには年齢や性別などの属性に偏りがないことが望ましい。経営陣だけでなく若手の従業員や、時には顧客や地域住民などのステークホルダーを加えることで、視野が広がり、予測もつかなかった未来の兆しに触れる可能性が高まる。

スキャニング法は、企業における長期的な経営ビジョンを立てる際にも役立つ。その際、各専門機関から公表される定量的情報の分析や、それを踏まえたシナリオ法、またゴールからの逆算で考えるビジョニング法を組み合わせることで、より実効性の高いものとすることができよう。