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総合的、俯瞰的に眺めた日本経済の実情(2021年1月)
事務局長代理 上席研究員 中原 嘉寛
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総合的、俯瞰的に日本経済を眺めてみる。

国内総生産(GDP)は、需要面から見て民間最終消費支出と民間住宅、投資(民間企業設備と民間在庫変動の合計額)、政府支出(政府最終消費支出と公的固定資本形成の合計額)、純輸出(輸出と輸入の差額)の合計額である。

令和元年度の国内総生産の実績は、実質額で552.9兆円であった。国内総生産を金額面からではなく、各需要項目の対前年度比の増加率について、直近5年間の平均値を算定しその特徴を検討した(表)。

以下、主な3点が明らかになる。

①政府支出の構成要素である政府最終消費支出1.3%、公的固定資本形成0.4%と、政府部門の増加率が比較的高いこと。

②民間最終消費支出が0.1%と非常に低いこと。

③民間企業設備が1.5%と比較的高いこと。

(なお、輸出は2.1%と最も高いが、海外の需要動向に左右されるため、着目しない。)

まず、①は、以下の状況にもかかわらず、政府支出の削減が進んでいないことを示している。

令和元年度実績の歳入額のうち公債金は36兆円で、歳入総額109兆円に占める公債依存度は33.5%であった。また、税収等と基礎的財政収支対象経費との比較では14兆円の赤字で、その赤字額が税収等に占める割合は19.7%となっており、税収等に比して歳出過大の状態にある。

②は消費低迷の結果であるが、当所が2020年10月に実施した「2020年暮らし向きアンケート調査」の「今後1年間の消費予想」に興味深い結果が見られる(「ナント経済月報」2020年12月号掲載)。

今後1年間の消費支出予想で増加割合から減少割合を差し引いたDIは、△40.8と大幅なマイナス回答であった。コロナウイルス感染症の影響もあると思われるが、その最も多い理由が「年金や介護費用などの老後生活の不安」であった。このことから、消費拡大に向けては個々人の老後資金必要額の把握が重要な鍵であり、必要額を把握できないことが老後の不安をあおり、結果、消費に対して必要以上に慎重にならざるを得なくなっているのではないかと考える。

③は、2009年度以降、開業率が廃業率を上回っていることも関係していると思われ、2018年度(直近のデータ)は開業率4.4%・廃業率3.5%と、0.9ポイント上回っていた。

特に、②の消費については、個々人にとっての合理的な行動が経済全体で好ましくない結果につながる「合成の誤謬(ごびゅう)」に当てはまり、その解決策は老後資金必要額の把握にあるのではないかと考える。

図