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中小企業における財務への意識と経営貢献について(2021年8月)
事務局次長 上席研究員 刀祢 善光
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■自社で計算している財務指標

(株)東京商工リサーチが中小企業庁の委託を受けて実施した「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」の調査分析の結果が「2021年版 中小企業白書」で紹介されている。それによると、自社の財務指標で計算している割合が高かった指標は、「①売上高経常利益率※1」が第1位で79.0%、第2位が「②損益分岐点比率※2」77.2%、第3位が「③自己資本比率※3」73.3%であった。第4位以下はグラフ1の通りであるが、第3位と第4位との差が10ポイント程度開いており、3大指標ともいうべきランクとなっている。

図

※1 経常利益÷売上高(企業の収益力を示す代表的指標)

※2 損益分岐点売上高÷売上高、売上高減少の時の耐性を示す指標

※3 純資産÷総資産(企業の安全性を示す代表的指標)

■財務指標毎の数値の差

この3大指標毎に計算している企業とそうでない企業の水準を比較したのが次のグラフ2である。

①売上高経常利益率は0.6㌽、②損益分岐点比率は2.0㌽、③自己資本比率は0%未満(債務超過)と0%以上20%未満の合計で9.8㌽(=11.8%+22.4%-5.6%-18.8%)の差がある。それぞれの指標で、計算している企業の方が計算していない企業よりも良い数値となっていることが分かる。

図

■統計結果についての実感

筆者は本統計で定義される小規模企業を中心に日常的に支援活動を行っているが、財務指標を参考に経営を行う企業の割合は肌感覚としてもう少し低いのではないかと感じる。アンケートに回答した約6千社は比較的内部管理に長けた企業であるのかもしれない。

■財務分析の有用性

第1位の売上高経常利益率は約8割が活用しているとの回答であるが、逆に第1位の指標でも2割が活用していないことになり、それ以下の指標はもっと活用割合は低くなる。本統計で財務指標を知り活用する効用が明らかにされたことから、改めて財務指標を活用し経営に生かす取り組みの重要性を認識することができた。中小企業支援に携わる者として、財務の力を生かすことが有用であることを広め経営向上に貢献をしていきたい。