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雑誌『日経トレンディ』が毎年選定する「ヒット予測100」の2022年版が昨年11月に発表され、賞味期限の短い生鮮商品を取り扱わず冷凍食品をメインに販売する「冷凍食品専門スーパー」が第2位に入った。また2022年1月19日付の流通専門紙『日経MJ』によると、スーパーのバイヤーを対象に主要食品の2022年の展望を聞いたところ、最も期待が大きかったのは「冷凍食品」だった。
コロナ禍におけるテレワークやリモート授業の普及などの影響で、家族が自宅で過ごす時間が増えていわゆる「巣ごもり需要」が発生し、レンジで温めれば簡単に食べられる冷凍食品のニーズが高まっている。数字で見ても、2020年の冷凍食品国内生産額は家庭用が3749億円で過去最高を記録し、業務用の3279億円を初めて上回った。
前述の日経トレンディの記事で紹介された「みんなの業務用スーパー リンクス」は、2021年5月から福島県内で4店舗を展開する冷凍食品専門スーパーで、1300種類以上もの冷凍食品を取り扱う。一般的なスーパーが鮮度を競う「生鮮三品」(青果、精肉、鮮魚)もこの店では全てが冷凍加工して提供され、調理済み加工食品やスイーツなども豊富にラインナップされる。
同じ記事で紹介された冷凍食品専門店「TŌMIN FROZEN(トーミン・フローズン)」(神奈川県横浜市)の強みは、運営会社である凍結機メーカーの㈱テクニカンが開発した「凍眠(とうみん)」技術だ。マイナス30度の液体エタノールで対象物を一気に凍結させることで、味や食感の低下につながる解凍時のドリップが出にくく、肉や魚はもちろんのこと握り寿司や日本酒「獺祭」など、冷凍がこれまで難しかった食品も販売。有名店の料理を冷凍した商品も人気だという。
ドラッグストア大手のツルハドラッグがこのテクニカンの凍眠技術に注目し、2021年12月に札幌市内のツルハドラッグ2店舗の店内に「トーミン・フローズン」のコーナーを設けた。
また、関東を中心に日本全国や海外のベーカリー約50店から集めた500種類以上のパンを全て冷凍で販売している「時をとめるベーカリー」(神奈川県横浜市)も、この技術を活用している。
このように、スーパーだけでなくドラッグストアやコンビニ、その他の小売店においても冷凍食品の取扱いが拡大している。消費者側が賞味期限の長さや手軽さを重宝して利用している冷凍食品は、製造・販売側から見ても「食品の廃棄ロスが減り在庫管理も容易」「製造現場の長時間労働の改善につながる」などの利点があることも大きい。
コロナ禍に突入して2年が過ぎ、巣ごもり生活は完全に我々の日常に定着した。どのように自宅での生活を充実させるかという観点もふまえ、冷凍食品を取り巻くビジネスは今後も重みを増していくだろう。こうした冷凍技術の進展や冷凍食品レパートリーの拡大を受け、奈良県内においても様々な小売店の店舗づくりに大きな影響が及ぶとみられ、小売業界の今後の動きを注視したい。