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■「心理的安全性」とは
皆さんの職場では、率直に意見を言ったり、質問したりすることができるでしょうか。「ここ、おかしくないですか?」「この部分がわからないので、教えてもらえませんか?」等の一言が仕事の成果を左右するくらい重要だといわれています。組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態のことを「心理的安全性」と呼びます。組織行動学を研究するハーバード大学のエドモンドソン教授が1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しました。
大手IT企業のGoogle社が2012年から約4年の歳月をかけ、より生産性の高い働き方をしているのはどのようなチームなのか調査・分析した結果、チームの効果に重要なのはチームメンバーの構成(誰がチームのメンバーか)よりも「チームがどのように協力しているか」であり、「生産性が高いチームは心理的安全性が高く、他のメンバーが発案したアイデアを上手に使い、離職率が低く、収益性が高い」と発表したことで世間に広く知れ渡った概念でもあります。
■心理的安全性を損なう4つの不安と特徴行動
上司の指示がよく理解できなかったにも関わらず、質問しづらくてやるべき事が曖昧なまま見当違いな方向で進めてしまい、後で怒られたことや、何となく違和感があったけれど、ベテランの先輩に遠慮して言い出せず、後にトラブルになりかけたことはないでしょうか。状況や立場によっては、質問することや率直に意見を言うことが難しいこともあります。職場にはメンバー同士が健全に意見を交わし、生産的なよい仕事をすることを阻害してしまう「対人関係のリスク」が生じやすいと言われています。対人関係のリスクとは、チームの成果や貢献のために行動したとしても、思わしくない結果になるという不安を感じている(結果、行動しない)状況のことです。エドモンドソン教授は「心理的安全性を損なう要因と特徴行動」について4つの不安を唱えました(表1)。
■日本版「チームの心理的安全性」の4つの因子
心理的安全性が高い職場というのは、アットホームな職場のことでも、コンフォートゾーンから抜け出せない「ヌルい」職場のことでもありません。「日本の組織では、①話しやすさ(何を言っても大丈夫)、②助け合い(困った時はお互い様)、③挑戦(とりあえずやってみよう)、④新奇歓迎(異能、どんと来い)の4つの因子があるとき心理的安全性が感じられる」と株式会社ZENTech取締役の石井遼介氏は自身の著書「心理的安全性のつくりかた」で紹介しています。
新年度から約1ヶ月が経ち、五月病が心配される季節になりました。今一度、ご自身の職場の心理的安全性に目を向けてみてはいかがでしょうか。