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■日本のジェンダー・ギャップと女性管理職割合
令和4年7月、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が発表した各国におけるジェンダー・ギャップ指数によると、2022年の日本の総合スコアは0.650、順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)で、前回と比較するとスコア、順位ともにほぼ横ばいであった。日本は「政治」は146か国中139位(同156か国中147位)、「経済」は146か国中121位(同156か国中117位)と順位が低く、「政治」では全ての項目が、「経済」では「管理的職業従事者の男女比」に課題が残る。4つの分野のスコアは図1のとおり。
次に、全国の企業における女性管理職の割合をみていく。令和4年7月に厚生労働省より公表された「令和3年度雇用均等基本調査」によると、係長相当職以上の女性管理職を有する企業の割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は 12.1% (令和2年度 13.1%)、課長相当職ありの企業は 20.1%(同 20.8%)、係長相当職ありの企業は 21.0% (同 22.6%)であった。管理職に占める女性の割合は、部長相当職では 7.8%(令和2年度 8.4%)、課長相当職では 10.7% (同 10.8%)、係長相当職では 18.8%(同 18.7%)となっており、未だ女性の管理職登用は進んでいない状況が窺える。
■女性管理職比率を上げるために
企業が自社の女性管理職の比率を上げる様々な施策をしているにも関わらず成果が現れない要因として問題視されるのが「女性自身の管理職登用意欲の無さ」である。女性は実績・実力があっても自信がもてずに自分を過小評価する「インポスター症候群」の傾向があると言われている。
女性が管理職への自信を持てない理由の一つとして、管理職になるための教育や業務の経験が全般的に少ないことが挙げられる。女性に対して期待されるスキルが管理職候補としてのキャリアを念頭に置いたものではなく、「現場の戦力であること」にとどまっていたり、上司(会社)が「女性は管理職になるのは大変だろう」と先入観や思い込みを持っていると、管理職登用につながるような業務に割り当てられることが少なくなる。女性の経験不足を解消するには、部下への期待やスキルアップの機会の男女格差を是正することが重要といえる。
また、女性の持つ不安を払拭し、管理職への挑戦意欲を喚起するには、登用時に上司からポジティブな働きかけをすることも有効だ。例えば、管理職になるメリットに加えて、管理職候補となった理由や十分な経験・実績があることを丁寧に説明すると、女性の背中を押すことになるだろう。さらに、登用後も上司が密にコミュニケーションを取り、状況に応じたアドバイスをすることで安心感が増すと思われる。単に女性管理職の頭数を増やすことだけにとらわれず、女性社員がどのような想いを抱えているのか、先入観や思い込みを持たずに意見を聞くことが大切ではないだろうか。