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■公正な採用選考の基本
厚生労働省によると、「公正な採用選考」を行う基本は、「応募者に広く門戸を開くこと」と「本人のもつ適性・能力に基づいた採用基準とすること」にあるとしています。
「公正な採用選考」を行うには、「応募者が、求人職種の職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうか」という基準で行います。例えば、本籍地や家族の職業など「本人に責任のない事項」や、宗教や支持政党などの「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」は、本人の適性・能力や職務を遂行できるかどうかには関係のないことであり、これらを採用基準にしないことが必要です。採用基準としないつもりであっても、応募用紙に記載させたり、面接時に尋ねれば応募者は選考の基準であると解釈してしまう可能性があります。
■不適切な採用選考の実態
ハローワークが実施した「応募者から把握した就職差別につながるおそれがある事象」に関する調査結果(令和3年度)によると、「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、「家族に関すること」の質問が40.5%と最も多く、次いで「思想」の質問が12.4%、「住宅状況」が11.1%、「本籍・出生地」が8.5%となっています(図表1)。
面接という緊張した雰囲気を少しでも和らげたいという面接官の思いからこのような質問をしてしまうケースが多いようですが、仕事の遂行力に無関係な質問は、採用基準において偏見や差別につながるリスクがありますので注意してください。
以下は、厚生労働省が公表している「就職差別につながるおそれがある14事項」です。(a)や(b)の事項をエントリーシート・応募用紙に記載させる、面接時に尋ねる、作文を課すなどによって把握することや、(c)を実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
採用は、企業発展のために重要な業務の一つです。しかし、採用担当者や面接官の知識不足、想像力の欠如等により、悪意はなくても応募者の人権を侵害しトラブルに発展したり、SNS上で炎上するケースがあります。問題が発生すると、企業イメージや信頼が低下するなど多くのリスクがありますので、トラブルを未然に防ぐよう配慮なさってください。