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職場のコミュニケーションを円滑にする伝え方~アイ(I)メッセージの活用~
主任研究員 清原 香織

■ 自分の意見を上手く伝える方法

「物も言いようで角が立つ」ということわざがあります。「伝え方によっては相手の感情を傷つける事もある」という意味ですが、傷つくのは相手だけとは限りません。物の言い方ひとつで自分の立場が危うくなるケースもあります。特に職場では言い方ひとつでハラスメント行為とみなされる恐れもあるため、発言には注意が必要です。とはいえ、ビジネスシーンでは指導や指摘・要望などを相手に伝える事は必要不可欠ですので、今回は相手に悪い印象を与えないように自分の意見を伝えることができる方法のひとつとして アイ(I)メッセージを紹介します。

■ アイ(I)メッセージとユー(You)メッセージ

アイメッセージとはアメリカの臨床心理学者トーマス・ゴードン博士が1962年に親を対象にした教育プログラム「Parent Effectiveness Training」の中で提唱したコミュニケーション手法で、文字通り『I=私』を主語にして相手に自分の想いを伝える方法です。自分の感情を相手に伝え、それに応じた判断は相手に委ねる事が特徴で、相手を尊重するアサーティブコミュニケーションの一種として紹介されている手法です。アイメッセージに対してユーメッセージは、『You=あなた』を主語にして相手に自分の感情や想いを伝える方法で、具体的には以下の表のとおりです。

図

このように、同じ内容の事柄であっても相手への伝わり方は大きく変わります。ユーメッセージでは相手に対して命令する印象や相手を非難したり攻撃したりするニュアンスが強くなります。つい感情的になってユーメッセージを使ってしまうと、伝え方によっては相手に悪い印象を与えたり、人間関係の悪化に繋がることもあります。特に職場では失敗やミスに対して指摘する時や相手に改善してほしいことを伝える時など、言い方に悩む場面が多くあるでしょう。その際にアイメッセージを使えば、自分の気持ちや考えを相手に伝えることを優先するため柔らかい表現になり、相手への指摘や責める印象になりやすい話であっても、非難したり押し付けたりせず、相手を尊重したコミュニケーションが可能です。

但し、アイメッセージにはデメリットもあります。アイメッセージは指示・命令を伝える際には、遠回しな表現になるため内容が的確に伝わらない恐れがあります。大事な依頼や業務上の指示など「明確にこれをしてほしい」という場面ではユーメッセージの方が適していることもあります。状況やシーンに合わせて使い分けが大切になりますので、それぞれの特徴を理解しアイメッセージでうまく伝わらない場合はユーメッセージで伝えるなど、段階的に伝え方を変えてみるのもコミュニケーションをとるうえで有効ではないでしょうか。

またアイメッセージを使うことにより、人間関係を良好に保ちながら自分の意見を相手に伝えやすくなるだけでなく、それを聞いている周囲の人にも「柔らかい言い方ができる人」「自己主張する際も相手を尊重できる人」など好印象を与えますので、職場内のコミュニケーションを円滑にするために アイメッセージを活用してみてはいかがでしょう。