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新型コロナ感染症(以下、「コロナ禍」)が一段落し観光地へ人が戻り始めた。そこで、当研究所が毎年10月に実施している「暮らし向き調査」(※)を基に、コロナ禍の拡大前後における奈良県民の国内旅行のニーズに焦点を当て考察した。
(※)暮らし向き調査…奈良県内の南都銀行営業店31か店の来店客に対し、店頭でアンケート調査を実施・回収。
■コロナ禍の拡大前後で変わらず人気
図表1は、コロナ禍後の2023年とコロナ禍前の2019年に行った調査結果から「前年と比べた暮らし向き」の状況別に、「今後1年間に購入・支出を予定している品目」の上位10項目(合計)の回答割合を見たものである。これによると、2023年の「国内旅行」は、暮らし向きの状況に関わらずトップで、「変わらない」と「良くなった」では、2位以下の項目と20ポイント前後の開きがある。また、こういった傾向は2019年も概ね同じである。
今後1年間の購入・支出の“予定”であることから「希望的な要素」も含まれるが、「国内旅行」のニーズはコロナ禍前後で変わることなく高い。一方で、車や家電等の耐久消費財に関しては各家庭に一通り揃っていて、買い替えの時期や故障などを除けば、国内旅行に比べ購入のニーズが低いものと思われる。
■コロナ禍拡大前の水準まであと少し
「今後1年間に購入・支出予定の品目」(合計)のうち「海外旅行」と「国内旅行」の2017年から2023年までの動きをみると、ともにコロナ禍が拡大した2020年を境に低下しているが、「国内旅行」の落ち込みは比較的軽微で、2021年以降はコロナ禍前の数値に戻っている。一方で「海外旅行」は、2020年に低下した後の回復は弱く、2023年段階ではコロナ禍前の水準に届いていない(図表2)。
このように、「国内旅行」は回復したように見えるが、実はそうとも言い切れない。Go Toトラベルキャンペーンや全国旅行支援などの施策が「国内旅行」にプラスの影響をもたらしていることに加え、「海外旅行」を自重している層や、為替などのタイミングを計っている層など、海外旅行志向者の一定数が「国内旅行」にシフトしている可能性を否定できないからだ。
■まとめ
アンケート調査による限り、奈良県民の国内旅行ニーズは、暮らし向きの状況に大きく影響されることなく、またコロナ禍の前後で大きく変わることもなく高い状態を維持している。こういった旺盛なニーズを受けて更なる増加が期待できることから、行政等の支援策や「海外旅行」からのシフトなど、特殊事情を除いた“真の回復”が到来する日は近いと言えるだろう。