清原 香織
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■ メンタルヘルスケア
職場におけるメンタルヘルスケアは、働く全ての人がストレスなく健康でいきいき働けるように支援することやその仕組みを作り、実践することをいいます。従業員のメンタルヘルス不調はモチベーションを低下させ、生産性を下げてしまうため企業の業績に悪影響を与える恐れや、優秀な人材の流出に繋がる可能性もありますので、メンタルヘルスケアは企業にとって重要な対策のひとつです。人は自身の負担となるような出来事や要求等が起こった時にストレスを感じ、そのストレス状態が軽減されずにいると精神症状や身体症状、行動症状といったストレス反応が起こります。メンタルヘルス不調の要因の多くはストレス過多が継続した結果です。日々の生活の中で不眠や睡眠不足が続けばストレスを感じやすくなり、メンタルヘルス不調のリスクも高まりますので、ストレス予防の観点から良い睡眠をとるポイントを「量」「リズム」「質」に分けてご紹介します。
■ 良い睡眠のポイント「量」
充分な睡眠時間をとることを意識することが大切です。多忙な日々の中で理想の睡眠時間を確保するのは難しいですが、睡眠を6時間以上取ることで、日中の眠気や疲労感が改善し、ストレスを感じにくくなるだけでなく、体調も崩しにくくなりますので、6時間以上を目安にし、繁忙期など睡眠時間を確保することが難しい時は、週の中日や週末だけでも6時間以上の睡眠時間を確保し、睡眠不足を蓄積させないことが大切です。加えて、昼休みに10分程度の仮眠を取ることも効果的ですが、30分を超える仮眠は頭がボーっとすることや、体のだるさにつながることもあるため注意が必要です。
■ 良い睡眠のポイント「リズム」
睡眠は体内時計にコントロールされており、体内時計の時間がずれることで不眠や眠気が起こる状態を「社会的時差ボケ」といいます。社会的時差ボケを防ぐためには生活リズムを整えることが大切です。体内時計は光と食事という外部要因によって整ったり、ずれたりします。朝の光と食事は体内時計を整え、夜遅い時間の光と食事は体内時計をずらします。夕食が遅くなる時は、遅い時間にまとめて食べず、おにぎりやパンなどの炭水化物を早めの時間に食べ、帰宅後はたんぱく質や野菜を中心に食べるように夕食を工夫することで体内時計がずれにくくなります。
■ 良い睡眠のポイント「質」
生活習慣を整えることで、眠りの質が向上します。特に適度な運動は、深い眠りに繋がるため、20〜30分のウォーキングを週に2〜3回行うだけでも効果があります。夕方以降のカフェイン摂取は寝つきを悪くします。また、寝酒は寝つきを良くしてくれますが、眠りが浅く早く目が覚めるため適量にし、休肝日を作ることも必要です。スマートフォンやパソコンのディスプレイから発光されるブルーライトは寝つきを悪くし、寝室が明るいと眠りの質も悪くなるため、部屋の明るさは3ルクス以下(月明かり程度)がおすすめです。
心と身体の健康は相関関係にあり、心を元気に保つには身体が元気であることが大切です。忙しい中でも、良い睡眠を心がけ「心の健康」を守ることがストレスの軽減になり、日々の良い仕事に繋がります。会社にとっても従業員が健康であることは、生産性向上に寄与しますので、早帰り日の設定や休憩時間の確保など、健康経営の第一歩となる取り組みを行ってみてはいかがでしょう。
参考資料:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「心の耳」(厚生労働省)