丸尾 尚史
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環境汚染や資源の浪費、動植物への影響など、数知れず深刻な影響をもたらす「ゴミ問題」。ゴミを削減するためには、「リデュース」、「リユース」、「リサイクル」の3Rを意識することが重要である。そこで、ゴミの削減策のひとつである「雑がみ」のリサイクルに注目する。
一般的に家庭から排出されるカン・ペットボトルや新聞・雑誌・ダンボール等に関してはリサイクルの意識が強く、すでに多くの家庭で実践されている。しかし、「雑がみ」は、ダンボールや書籍、菓子箱などの原料としてリサイクルできるにもかかわらず、多くは燃やせるゴミとして捨てられているのが現状だ。例えば、奈良市のホームページによると、奈良市民の家庭から出された燃やせるゴミのうちの約13%は、リサイクル可能な紙類であるにもかかわらず焼却処分されているという。リサイクル率をみると、2022年度の奈良県は15.7%で全国平均の19.6%、中央値の16.9%よりも低く、都道府県順位は34位と低位である。2013年度以降の動きでは、やや上昇または横ばい基調で推移し、総じて全国平均を下回っている。このことから、奈良県においては、リサイクルをさらに進めて排出量を削減できる余地があると考える。
行政の取り組みとして、奈良市では可能な限り地域の集団資源回収やドライブスルー型の古紙回収所への排出を進めている。さらに、2024年4月には「雑がみ保管袋」を全戸配布するとともに公民館など市内32か所に回収ボックスを設置するなど、環境の整備に取り組んでおり、県内の他市町村でも同様の取り組みを行っているところが多い。ただ、ショッピーングセンター等に回収ボックスが設置されているカンやペットボトルなどに比べ、「雑がみ」を回収する場所はまだまだ限られている。
回収を進めるには、自家用車を使わずに公共交通機関や徒歩で、そして何時でも簡単に排出できるようなインフラの整備が望まれるところであるが、いずれにせよ、「雑がみ」のリサイクルという個人の小さな活動でも、その積み重ねが資源の有効活用と環境保護に大きく寄与すると思われ、率先して実行していきたい。