例年3月はJR各社のダイヤ改正が行われる時期で、乗客の利便性を考慮して新路線・新駅の開業、列車の新設・増発などが行われる。一方で、老朽化や乗客の減少による列車、路線の廃止もこのタイミングが多い。そして廃止が公表されると、鉄道ファンを中心に多くの乗客が詰めかけるシーンがみられ、ラストランに予約が殺到したトワイライトエキスプレスやブルートレイン(寝台列車)は記憶に新しい。
今回の改正をみると、列車の廃止に大きなものはないが、路線では「三江線(さんこうせん)」(広島県三次(みよし)~島根県江津(ごうつ)間:営業キロ108.1km)が3月末をもって廃止される。ローカル線の廃止はこれまでからも進められてきたが、営業キロが100kmを超えるとなると「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」(旧JR池北(ちほく)線)が平成18年4月に廃止されて以来のことである。
1日の平均乗客数を示す「輸送密度」をみると、JR西日本管内では東海道線の大阪~神戸間が約39万人(2016年)でトップ。途中で乗り換える列車を含めて1日3往復運行される三江線の三次~江津間の輸送密度は83人である。1987年のピーク時には458人だったが次第に減少、豪雨被害のあった2013年は僅か44人に留まった。数字をみると廃止は無理もないことかもしれない。ところが、廃止が発表された昨年9月以降は例に漏れず乗客が増えた。11月には1列車に200人ほどが乗車した日もあって、車両を増設したもののあまりの混雑に遅延も発生。「乗客が減少して廃止を余儀なくされた路線に多くの人が押し寄せる」という何とも皮肉な結果となった。
鉄道ファンの私も、ローカル線に乗ることが多い。友人は「おまえが乗ると、その列車や路線が廃止されるから乗らないで欲しい」と冗談めかして話すが、それは、近い将来に廃止されると先読みして公表される前に乗るから。ただ、三江線は残念ながら乗車する機会がないまま終わってしまいそうだ。
三江線の地元では廃止で脚光を浴びたことを追い風に変えて今後の観光振興につなげようと躍起になっているという。何もなかった(何もないと思っていた)地域で新たな観光資源が見つかり、それを活用できることは有意義なこと。鉄道跡地を活用したサイクリングロードやトロッコ列車の運行、トンネルを活用した酒の開発などが検討されている。廃止が過疎化の進行を助長しないことを願いつつ、今後の成り行きに注目していきたい。