情報誌『日経トレンディ』が選定する毎年恒例の「ヒット予測ランキング」の2019年版が昨年11月に発表され、第1位は「デカトロン&ワークマンプラス」だった。デカトロン(フランス)は年間売上1兆円以上の世界最大級のスポーツ用品メーカーで、ワークマンプラスは作業服専門店国内トップシェアであるワークマンのカジュアル向け新業態。どちらも「低価格&高機能」ウェアが売りで、このジャンルの市場はこれまで未開拓の「4,000億円の潜在市場」(ワークマン調べ)とも言われている。
ワークマンは主力顧客である建設技能労働者が団塊世代の引退等で減少傾向であるため、従来の個人のプロ顧客向けから一般客向けに対象を拡大すべく、2016年よりアウトドアウェア、スポーツウェア、レインスーツの3分野の自社ブランド製品を全国800以上の店舗で販売。10万着単位で大量生産するため「同性能でスポーツブランドの1/3、アウトドアブランドの1/2の低価格」(同社説明資料による)を実現したというお得感から、口コミやSNSの拡散等で一般客に人気が急上昇中で売上も右肩上がりだ。
私も正月休みに初めてワークマンの店舗を訪れてみたが、鳶職など職人仕様の作業着が並ぶ一角にデザイン性豊かで鮮やかなウェアが並び、確かに競合のアウトドアブランドやファストファッションブランドと比べても価格競争力が高い商品が多いと感じた。
デカトロンは2019年春に本格的な日本第1号店を「阪急西宮ガーデンズ」(兵庫県)にオープンする。それを迎え撃つワークマンが昨年12月に発表したニュースリリース資料が面白い。
『(デカトロンの国内初出店に先立つ3月に)ららぽーと甲子園にワークマンプラスを出店し、同日に路面の大阪水無瀬店をワークマンプラスに改装してデカトロン社を迎え撃ちます。両SC店の距離はわずか3kmですが、先手必勝で大規模な販促を行います。2店舗だけではデカトロンの大型店にかなわないので、関西地区のワークマン120店舗でアウトドア売場を強化して包囲網を作ります。1対120の数の優位で「西宮戦争」を制するつもりです。』
まるでプロレスの煽り文句のような刺激的な言葉が並ぶ、企業の公式リリース資料としては極めて異例なものだが、あえて話題を作ってメディアの注目を集め、同時に自社のスタッフたちを奮起させる経営陣の思惑があるようにも感じる。
より良い商品をリーズナブルに入手できるようになるこんな「戦争」ならば我々消費者としてもありがたい。今年以降この戦争がどのように展開するか、両者の商品をじっくり吟味しながら戦況の推移を見守りたいと思う。